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豪腕・西山朋佳女流三冠、朝日杯一次予選1回戦で阿部光瑠七段に勝利! 棋士編入試験の受験資格獲得!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月4日。東京・将棋会館において第18回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦▲阿部光瑠七段(29歳)-△西山朋佳女流三冠(29歳)戦がおこなわれました。

 持ち時間は各40分で、使い切ると1手60秒未満。10時に始まった対局は11時35分に終局。結果は106手で西山女流三冠の勝ちとなりました。

 西山女流三冠は2回戦に進出。14時から佐々木大地七段と対戦します。

西山「やっぱり勝ち進めないと当たれないような先生方と当たれるのがひとつのモチベーションというか、楽しみになっているので。引き続き、自分らしい将棋でがんばっていきたいなと思います」

 西山女流三冠の一般公式戦における直近(2023年6月以降)の成績は13勝7敗(勝率0.650)となりました。「いいところどりで10勝以上、なおかつ6割5分以上」という条件を満たして、棋士編入試験の受験資格を得ました。

 受験資格獲得者はこれで史上7人目。女性としては福間(旧姓里見)香奈女流五冠に続き史上2人目となります。

西山女流三冠、実力発揮の勝利

 阿部七段と西山女流三冠は公式戦初手合となります。

西山「やっぱり中終盤に特に力を発揮される先生だという認識で」

 振り駒の結果、先手は阿部七段に。後手の西山女流三冠は6手目、三間飛車に振りました。対して阿部七段は6筋の歩を伸ばしていきます。

西山「▲6六歩突かれた以上、6五が争点になって戦いになるのかなと思っていて」

 阿部七段が歩を交換したあと、西山女流三冠がカウンターで動き、本格的な戦いが始まりました。

西山「自陣角(39手目▲7七角)で△4四角と合わせたあたりは、囲いはこちらの方が堅いんですけど。一瞬、飛車銀桂が少し凝り形というか。ちょっと重い形なので、手になっているか。どこかで▲4三歩と打たれるような手が筋なので。常に気にしながら指していました。▲6四歩打たれて(△6二金と)金を引く形で戦いになるというのはあまり、比較的自分の中でも珍しい展開かなと思っていたので。ちょっと形勢判断が正確なところができかねていたんですけれど。攻め合いの形にはなっているので。実戦的に、これなら振り飛車も戦えているかなという感触はありました」

 中盤では西山女流三冠がややペースを握ったかに見えました。

西山「(62手目)△6六歩と垂らした手があって。手拍子だったかもしれないんですけど。ちょっとそのあたり▲7八銀打をあまり考えてなかったので。ちょっとずつ形勢が難しくなっているかなと思っていました」

 70手目、西山女流三冠は飛車を逃げずに角を打ち込んで勝負に出ました。代わりに飛車を引いて、あとから角打ちをねらう順が優ったようです。阿部七段が差を詰めて、形勢は不明となりました。

 流れがあまりよくない中、西山女流三冠は崩れません。やがて西山女流三冠が再びリードを奪いました。

西山「最後(88手目)△5四馬と龍に当てたところで攻めがつながっているので。こちらも玉が一応安泰ではあるので。そのあたりでよくなっているかなと感じていました」

 106手目。西山女流三冠は桂取りに歩を打ちます。西山陣が金銀4枚の堅い美濃囲いが残る一方、阿部陣は受けなしの形。ここで阿部七段が投了して、西山女流三冠の勝ちとなりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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