明日開幕!「JABA東京スポニチ大会」で強豪チームに挑む新生・アスミビルダーズ(旧 神戸ビルダーズ)
■日本新薬とのオープン戦
勝利への執念は見せた。3点を追う九回表、先頭から3連打で無死満塁の場面を作った。しかし後続が3者連続三振に倒れ、オープン戦初勝利にはあと一歩、及ばなかった。
3月2日、社会人・アスミビルダーズはオープン戦3試合目を日本新薬と戦い(わかさスタジアム京都)、4-1で敗れた。
創部4年目のチームだ。「神戸ビルダーズ」から今年は「アスミビルダーズ」に改名し、斉藤秀光監督(オリックス・ブルーウェーブ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルス、福岡ソフトバンクホークス、横浜ベイスターズで活躍)のもと、徐々に力をつけてきている。
斉藤監督は「ウチはまだまだ技術のあるチームじゃない」と言い、名だたる強豪チームがひしめく社会人野球の中で新参チームが勝ち抜くためには、「隙をなくさないといけない」と指導にあたっている。
この日の試合では、相手の倍にも上る12安打を放ちながらも1点しか挙げることができなかった。要所での「もう1本」が出ず、ホームが遠かった。
「そういったところが勝ちきれないチームの特徴でしょうね。状況判断なのかなと思う。最後(無死満塁)も2ストライク追い込まれてからボール球を振って三振したり、同じような空振りをしたりっていうところが、結果、12安打1点と6安打4点で負けるという形になった。でも、バッティング自体はよくなっている。状態は悪くない」。
試合後、斉藤監督はそう振り返った。
■3投手のリレー
先発の山田航大投手は2連続奪三振で立ち上がると、制球よく安定したピッチングで5回1失点とゲームを作った。「去年の夏くらいから安定し始めて、選手権(日本選手権近畿最終予選)のミキハウス戦でしっかり抑えた(5回無失点)。前回(オープン戦・日本製鉄広畑戦)の中継ぎではあまりよくなかったけど、今日はよかった」と、先発の一角として期待を懸ける。
六回は新人の太田潤投手が登板した。先頭打者のフライが強風に流され、不運にも内野手の間に落ちて安打が記録された。完全に打ち取っていただけに動揺したのか、そのあと死球を与えてからは制球が定まらなくなり、連続押し出しで2点を失った。オープン戦ということもあり、斉藤監督も途中で交代を告げずイニングを投げきらせた。
「まだ上体で投げている。先頭バッターが4番でね、打ち取ってる当たりを落とされて精神的にもきつかったかもね。順番的には昨日投げさせる予定だったけど、京都出身だから今日投げさせた」。
左の中継ぎとして、開花が楽しみな存在だ。
最後の2イニングスは室崎渉投手だ。1イニング目はクリーンアップを三者凡退に仕留めたが、またいだ次の回にいきなり被弾した。奪った6つのアウト、すべてがフライアウトなのが特徴的だ。
「全体的に球が高い。意図して高めに投げるのはいいけど、高めにいっちゃっている。去年から低めに投げることが課題。フライになるのは、球の回転がいいのでポーンと上がりやすいというのはある。でも、球に力も出てきたし、期待している。細かいコントロールのミスをなくしてほしい」。
室崎投手を先発3枚目にという構想もあるという。
■新人選手の見極め
一方、打線だ。オープン戦ということもあり、力を見極めるために新人選手を3人(捕手・田中健、一塁・神頭、中堅・河野)スタメンに並べた。代打で安打を放った藤原駿也選手も今年の入団だ。計6人の新人選手たちには「新しい風を入れてくれている」と頼もしく見ている。
中でもこの日、河野健太郎選手にオープン戦初ヒットが出たことに笑みをこぼす。第1打席、1死一塁から初球を引っ張った打球は、ライト前に弾んだ。
「引っ張ってほしいときにしっかり初球から振っていった。それでいい。これまで練習ではいいけどゲームになると考えたり縮こまったりしていた。同級生がみんな結果出していたから気持ちもわかるけど。ゲーム前に呼んで『まだ結果を出さなきゃいけないとか、そういうレベルじゃない。試合の打席の中で練習と同じように振れるかどうかしか見てないから』と言った」。
斉藤監督の言葉が響いたようだ。最終回でも、カウント1-2からセカンドへのボテボテの当たりにヘッドスライディングでマルチ打をもぎ取った。河野選手の中で何かが少し変わったのかもしれない。次戦につなげたい。
田中健太捕手も懸命にワンバウンドを止め、打っても3安打と健闘した。
「打つほうはできすぎ(笑)。肩もあるし、育てていきたい。リード面やワンバンを止めることや送球、そういったところをしっかりやっていって、その中でああやって打ってくれればなおいい」。
今後の成長を促していた。
今はこうして新戦力の力量を測っている段階だが、今後はレギュラー争いが熾烈になる。
「新人の活躍を見て、これまでのレギュラーも発奮して頑張ってやってくれるでしょう。そうすることでチーム力が上がっていく」。
チーム内競争こそが、レベルアップにつながっていくのだ。
「(6日からの)スポニチ大会でのスタメンが4月5月の都市対抗予選のスタメンになるかわからない。ガラッと変わっているかもしれない」。
いい意味で選手起用を迷わせてくれるくらいの、選手たちの強いアピールに期待している。
■ノーヒットで点を取る
4年目を迎えた指揮官はこう語る。
「ウチは技術的にもまだまだミスが起こりやすいチーム。ちょっとした綻びから大量失点することもある。やはり意識づけが大事。個々がちょっとずつカバーできるようにならないと。でも泥臭さのあるチームでもある。そうじゃないとなかなか勝負できないんで。クリーンヒットの連打だけで点を取れるようなチームではなく、送りバントやエンドランなどを絡めて点を取る。いかにノーヒットで点を取るかっていうのがウチのポイントでもあるので」。
練習時から説き、そういう意識を植えつけるようにしているという。たとえばエンドランにしても「ストライクが来るからサインを出している。カウントやタイミング、雰囲気で謀っている」と、選手自身にも状況判断能力を求める。
「お互いの意思相通ができていないと。僕がサインを出す前に『あぁ、あるな』と思ってできるようになってほしい」と、前もって準備し、サインの意図を読むことが重要だという。
■隙をなくす
また「野球はミスありきのスポーツ」と言いきる。
「打てないこともミスなので、7割は失敗するということ。なので失敗やエラーは気にしない。見逃し三振にしても、どうやったらしないようになるかというのを、チームで考えていこうという話はする。見逃し三振やエラーなんて、何百回、何千回としてきている、自分自身がね(笑)」。
終わったことを責めるのではなく、次にどうするか。失敗を少しでも潰していけるよう、前を向かせる。
「ただそれを個人個人じゃなく、チーム全体でやらないと。毎試合天候も違うし、球場が違うと人工芝もあれば天然芝もあるし土のグラウンドもある。マウンドの高さも違ったりする。本当にさまざま。そんな中、ちょっとした隙をなくさいないと、ウチのようなチームは勝てない。チーム全体で隙をなくして、ミスを減らしていく。強豪チームに勝とうと思ったら、全員がそういう意識でやらないと。もちろん、僕自身も隙がないようにする」。
隙をなくすことは、もっとも徹底していく。
■強豪チームに挑む
いよいよ明日、「第77回JABA東京スポニチ大会」が開幕する。アスミビルダーズはBブロックに属し、明日6日はトヨタ自動車(等々力球場)、7日はSUBARU(神宮球場)、8日は東京ガス(大田スタジアム)と相まみえる。
「関東で開催する大会に出るのが初めて。知ってもらうっていうことも一つだと思う。東京ガスさんとはJABA長野大会で対戦はあるけど、トヨタさんもSUBARUさんも初めて。ちょっと隙を作ってくれないかなぁ(笑)」。
斉藤監督自身も楽しみにしていることが伺える。
「なんとか隙を見つけて、そこにつけ込んでいきたいとは思っている。本戦常連のチームだから、当たって砕けろではないけど、しっかり準備をして立ち向かっていきたい。選手たちには試合を通していろんなことを肌で感じてもらいたい」。
選手にとっても大舞台で強豪チームと戦うことは刺激にもなるし、成長にもつながる。また、関東での知名度を上げることもできるだろう。
アスミビルダーズの奮闘を期待したい。