なぜレアルは“補強”を考えないのか?カルバハルの負傷…アンチェロッティのプラン。
スカッドが充実していないわけではない。だが補強を考える必要があるかもしれない。
レアル・マドリーはリーガエスパニョーラ第9節ビジャレアル戦で、ダニ・カルバハルが負傷した。ひざの負傷で長期離脱が見込まれ、5ヶ月から8ヶ月、戦列から離れると見られている。
■エムバペの加入と前線の充実
まず、今季のここまでのマドリーを振り返る。マドリーは、今夏、キリアン・エムバペを獲得した。類稀な決定力を有するストライカーの加入で、純粋に考えれば、戦力は増強するはずだった。
だがエムバペを嵌めるのは簡単ではなかった。3トップの中央でのプレーを求められるようになったエムバペだが、本来、主戦場は左サイドだ。しかし、そこにはヴィニシウス・ジュニオールがいる。ヴィニシウス との連携を含め、エムバペの適応には時間が必要だった。
アンチェロッティ監督は、昨季、「エネルジーア」という言葉を頻繁に使っていた。『エネルギー』が不足しているのだと、アンチェロッティ監督はイタリア語訛りのスペイン語で主張していた。
今季のマドリーにおいて、アンチェロッティ監督は「コンプロミッソ」あるいは「インテンシダッド」という言葉をよく用いる。チームの約束事、またプレー強度が、足りない状態だと力説している。
それが不安定な戦いにつながっているのは確かだろう。リーガエスパニョーラでは、9試合を消化して、6勝3分け。アトレティコ・マドリーとのダービーマッチにおけるドローは仕方ないとしても、マジョルカ、ラス・パルマス相手に勝ち点を落としているのは、気になるところだ。またチャンピオンズリーグでは、グループステージ初戦でシュトゥットガルトに勝ったものの、第2節でリールに敗れている。
「無敗の試合が続くと、自分たちは負けないのだと勘違いしてしまう。時々、負けるのは悪くない。それは我々を現実に引き戻してくれる」と語っていたアンチェロッティ監督であるが、早急に解決策を見出さなければ、少しずつ勝ち点を落としてタイトルレースから脱落することになる。
■副キャプテンの負傷と冬の補強
そのような状況で、カルバハルが負傷した。ルカ・モドリッチに次いで、チームの副主将を務めるカンテラーノの離脱は、大きな痛手だ。
マドリーは、即座にカルバハルとの2026年夏までの契約延長を発表した。カルバハルに信頼を示した格好で、クラブの対応には頭が下がる思いだ。
一方、カルバハルの代役はルーカス・バスケスしかいない。マドリーとしては、補強の可能性を考慮しなければいけない。カステロ・ルケバ(ライプツィヒ)、ビトール・ルイス(パルメイラス)、トレント・アレクサンダー・アーノルド(リヴァプール)らの名前がメディアでは踊っている。
冬のマーケットは、一般的に、難しいと言われている。開幕前の夏と比べて、シーズン半ばに強豪チームから主力を引っ張ってくるのは至難の業であるからだ。
実際、マドリーが最後に冬の移籍市場で選手を獲得したのは2018−19シーズンだ。
マンチェスター・シティから、当時、19歳だったブラヒム・ディアスを移籍金1700万ユーロ(約29億円)で獲得。それとて、即戦力の補強ではなく、中長期スパンを見据えた選手獲得だった。
マルセロ、ゴンサロ・イグアイン、ディエゴ・ロペス、エマニュエル・アデバヨール、アントニオ・カッサーノ…。彼らはB・ディアスの獲得以前に、マドリーが冬の移籍市場で獲得選手たちだ。マルセロなどは、長く、マドリーの不動の左SBとして活躍した。成功例がないわけではない。しかし、やはり緊急事態での補強、という感は否めない。
「我々はルーカス・バスケスを信頼している。(夏の)移籍市場は閉まったばかりだ。そのことを自覚しなければいけない。我々に多くの選択肢がある訳じゃない」
これはアンチェロッティ監督の弁だ。
マドリーは昨季、ティボ・クルトワ、エデル・ミリトン、ダビド・アラバが負傷で長期離脱を強いられた。だが守備陣の補強を行わずにシーズンを戦い抜き、リーガとチャンピオンズリーグを制してドブレーテ(2冠)を達成した。
今季も同じようにーーと考えるのは、虫が良すぎるかもしれない。エムバペの加入で、前線には最高級の人材が揃っている。だが後ろに問題を抱えるという、非常事態がマドリーを襲っている。