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20歳以下日本代表・中竹竜二ヘッドコーチ 打倒ウェールズ論を語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
中竹竜二ヘッドコーチ(写真右)と堀越康介キャプテン

20歳以下(U20)代表の世界最高峰大会であるU20チャンピオンシップ(6月2~20日/イタリア)に出場するU20日本代表のメンバーが23日、発表された。

3月のパシフィック・チャレンジ(フィジー)、5月のU20オセアニア選手権(オーストラリア)といったタフな遠征、度重なる短期合宿をおこなってきた候補選手のうち、堀越康介キャプテンら28人がリストアップされた。

本番では12チームが参戦。09年以来の出場となる日本は、予選プールAで欧州6強のイングランド、フランス、ウェールズとぶつかり、予選の順位によって4戦目以降のスケジュールが決まる。最下位のチームは来季、下部大会へ降格する。

この日、都内で会見した中竹竜二ヘッドコーチ(HC)は06年度から4季、早稲田大学監督を務め、現職は12年(下部のジュニアワールドラグビートロフィー=当時名称に挑戦)以来となる。

以下、中竹HCの会見要旨。

「(一切、資料などを読まず)ここが本当のU20の発表。これまでの方針とここからの抱負をお話しします。協会としては、今回(パシフィック・チャレンジのみの参加だった前年度よりも)1つ多く遠征をできて、コーチ側としては、誰が世界で戦えるかがわかった。当然、過酷なゲームをやってきたので、怪我人による入れ替わりもありましたが、現時点ではこれがベストメンバーだと思います。

キャプテン(フッカー堀越康介)を中心にフォワードは、セットプレーを含めて力をつけてきた。フォワードに関しては真っ向勝負でいきたい。これまでは身体の小ささからセットプレーで劣勢になり、いわゆる小さくて弱いラグビーをやらないといけなかったんですが、今年はこれまでの試合で相手を圧倒する場面もあった。特にオセアニアU20オーストラリア代表戦(5月5日/U20オセアニア選手権/●31-47)ではスクラムをターンオーバーしてのトライ、モールを押し込んでのトライもあった。これは次の大会でも1つの武器にしたい。今回のメンバーはそんなに身体は大きくないのですけど、低く堅実な考えたプレーができる。ただチームとしては、力業で行くわけではありません。カウンターアタックからの仕掛けを重視しています。フォワードのセットプレー、バックスリーを中心としたカウンターを武器に、本大会に臨みたいと思います。

すでに掲げていますが、目標は3戦目(6月10日)でU20ウェールズ代表を倒すこと。色んなところで無謀と言われますが、まずは信じることが大事。全員で信じてここまできました。そして強くなった。本大会に入ってもその夢をぶらさず、勝負したいなと思ってます。イングランド(2日)、フランス(6日)、ウェールズ。どこも北半球。いずれも(正規の)代表と同じように、力強いフォワードを活かして、キックでエリアをしっかり取ってくる。それに対し、先ほど言った強みを活かしたいと思います。

我々はそれほど拘束時間が長くなかったので、練習時間以外のオフザフィールドも大切にしてきた。(合宿先からは)掃除をきちんとして帰る、移動を速やかにおこなう、挨拶をちゃんとする…。そういうところもチームの力になると位置づけて、楽しみながらやってきました。やらされるのではなく、選手主導で。国内キャンプでは、堀越の提案もあり皆でボウリングに行った。コミュニケーションを取った方がいい選手同士でメンバー分けをしたり、全部、選手が企画しました。僕は色んなチームを見てきましたが、ミーティングで話す内容の質は、圧倒的に高い。ミーティングで整理した内容を試合で活かす場面も見てきて、可能性を感じます。あと、倍以上は、このチームは強くなる。楽しみにしています」

――(当方質問)2度の遠征でプレーしていない選手がいます。センタ-の矢富洋則選手(帝京大学2年)とウイング山田雄大(立教大学2年)。

「センターのところで怪我人が増えたのが、1つの理由であります。岡田(優輝/帝京大学2年)。去年のU20も経験した非常にいいセンターだったのですが(5月の大会で)、骨折をしてしまった。現地ではメンバーを補充せず、相手より少ないメンバーで戦いました。それは、いるメンバーにたくさん経験をさせたかったからです。ただ、そこで色々な選手を見直した上で、ユーティリティープレーヤーを…と思い、ウイングもできる矢富を入れました。山田はボールキャリアとしてもタックラーとしても非常にフィジカルが強くて、実はずっと(候補)リストには入っていました。ここまでは速さ、スキルのある人間を(メンバーに)選んできた。ただ、遠征を重ねるなかでタフな人間をもう1人、入れたいと思いました」

――「打倒ウェールズ」という目標を掲げた理由は。

「3年前、私がHCをしていた時にU20ウェールズ代表とやって大敗を喫し(2012年5月15日/ウェールズ/●7-119)、もっともイメージがつきやすかったのが理由です。その時、向こうのチームマネージャーやコーチから『お前たちはここからスタート』と言われました。『俺たちも去年、JWC(ジュニアワールドカップ/U20チャンピオンシップの前身)でU20ニュージーランド代表に90点差以上もつけられた(2011年6月14日/イタリア/●0―92)。国中で非難された。ただ、ここから切り替えた。今度はニュージーランドを倒す』と。そしてその年、本当にニュージーランドを倒したんです(2012年6月8日/南アフリカ/○9―6)。1年間で90点差をひっくり返したんです。我々が3年かけて強くなった恩返しの意味があります」

――(当方質問)ターゲットの相手をひとつに絞りましたが、他の2戦への動機づけはどう考えますか。

「相手がわかった時は、どれが最初の試合かまでは決まっていなかったんですよ。そのなかで、ターゲットを3つにするのは(焦点がぼやけるという意味から)おかしい、と。他の2つも同じくらい強い。ウェールズに勝つ準備をすれば、イングランドやフランスにも同じように戦えると思いました」

――(当方質問)結局、ターゲットのウェールズを前に、他の2つとぶつかります。それぞれのゲームの直前、どう選手を奮起させますか。

「ベストで行く、と。イングランドも倒しに行きます。先日、関東学院大学と練習試合をやったのですが、そこでも『イングランドに勝つにはどうするか』という話も交えました。すてに敵国、イングランドへの準備は始めています」

――遠征では白星なし。勝ちきるには。

「オーストラリア戦をはじめ、最後に逆転されたり突き放されたりしている試合が多い。ここは体力の問題でもありますし、きつくなった時にどれだけプレーの精度を上げられるかという課題も出てきています。トレーニングのプランニングという、コーチの責任。少し悩ましいのは、選手にはそれぞれの所属先があります。U20で追い込みすぎると、(所属チームでの活動と相まって)コンディションが厳しくなる。ここから整えて、後半に戦えるピーキングを考えたいと思います。また、先発とそれ以外のメンバーの力の差について。全員がライバルとして、同じポジションの人間が切磋琢磨する文化を作っています。選手も、認識しています。もうひとつ、失点の形(で最も多いもの)。攻めて、攻めて、ボールを取られて、カウンターされる…。はっきりと課題は見えています。そこの練習は、重点的にやっています」

――(当方質問)戦法の構築では、NTTコムのロブ・ペニーヘッドコーチからの協力を受けてきました。本番ではどう連携を取りますか。

「本来は一緒に行く予定だったんですけど、急遽、彼も所属チームが忙しくなったことで辞退されました。ただ、映像はどこでも観られる。それをチェックしてもらって、客観的なコメントをもらいます。すでにチームの共通ワードは共有していますので、いまから新しい指摘が出てくるということはありません(チーム方針に沿ったアドバイスをもらえる)。他には、フィジーで指導を受けた竹内克さん(ニュージーランド・ウェリントン州プレミアコーチ)にもコメントをもらう予定です。エディーさん(ジョーンズ日本代表HC)からも欲しいんですけどね…。僕の方針として、この世代には色々ないいコーチングを受けて欲しい。その意味では他のカテゴリーのコーチも呼んできました。彼らに特化したポジションを観てもらって、フィードバックをもらっています。ここで心配されることは、『色んな人が入るのはどうなのか』。ただ、関わっているコーチとは私もコンセンサスを取っています。ですから、こちらで目指していることとまったく違うことは言われません。また、手前味噌ですが、今回の選手は理解度が高い。色んな人が色んなことを言うなか、それらをポジティブに噛み砕いています。混乱もストレスもなく、色んなコーチングを受けています」

――相手チームの情報収集。

「ある程度は集めています。ただ、選手にはまだ、ウェールズをほんの少し観させた程度。これから戦略を練っていきます。イングランド…こだわりはブレイクダウン。気軽にぶつかると粉砕される。ウェールズは強化にお金をかけていて、ポテンシャルの高い選手が多い。足が滅茶苦茶速い、とか。フランスは相変わらず、わからない。上手い」

――(当方質問)若年層の強化は重要な責務。

「私自身が協会の人間(コーチングディレクター)ですが、ここまで協力いただいたのは初めて。世界と比べるとまだまだ足りませんが、これまでと比べたら、圧倒的にやりやすくなっています。遠征が増えた。遠征の翌週に国内キャンプを入れてもらっていて、(記憶を)繋ぎ止める時間を作れています」

――(当方質問)公式な場ですので、確認の意味も込めて伺います。帝京大学で活躍するウイング竹山晃暉選手の落選理由を。

「竹山君ですか。怪我も抱えていましたし、実力で外したということにしておきます」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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