インタビュー渡會将士①FoZZtone、brainchild's、ソロ――刺激が進化に繋がった20年
20周年を迎えて、新たな気持ちでさらに音楽を楽しむために
シンガー・ソングライター渡會将士がデビュー20周年を迎えた。2001年FoZZtoneを結成しボーカルとして2007年にメジャーデビュー。2015年活動休止後はソロ活動をスタートさせ、それと並行してTHE YELLOW MONKEYのギタリスト・菊地“EMMA”英昭のプロジェクトbrainchild’sのボーカルとしても活躍している。
2004年11月3日にインディーズ盤 1st Miniアルバム『boat4』をリリースして、本格的な音楽活動をスタートさせ20周年という、ひとつの節目を迎えた渡會は、また新たな気持ちでここから先を楽しもう、そして新しい姿をファンに見せたいと動き出した。
4月24日にリリースするニューシングル「写真はイメージです」は、そのスタートとなるメッセージソングだ。写真の過去的な一時性と人間の無常性を、“写真はイメージです”という日常に溢れる、でもよく考えると少しおかしな言葉を切り口に、シニカルな歌詞を紡ぎ、歌っている。渡會にインタビューし、これまでとこれから、そして「写真はイメージです」に込めた思いを聞かせてもらった。
「振り返ってみると、この10年くらいはとにかく音楽を楽しむということしか考えてなかったなって。もちろんバンド時代も楽しいことはあったけど、それ以上に苦しい、悔しい思いをたくさんしてきて、バンドからソロになって全てがリセットされているような気がしています」。
シンガー・ソングライターとして、バンドマンとして
バンド(FoZZtone)時代は、壮大なテーマを追求し歌ってきたが、ソロになってからは日常に根差した曲、日常の中の機微を捉え描いてきた。シンガー・ソングライターでありながらbrainchild’sではバンドの一員としてロックを楽しみ、自身のアルバムとライヴでは手練れのミュージシャンとバンドサウンドを楽しんでいる。マインドとしてはシンガー・ソングライターなのか、バンドマンなのか、どちらなのだろうか。
「ソロになって最初の頃はシンガー・ソングライターという意識が強かったです。とにかく全部のフレーズ、全部の音を自分で作り込んで、サポートメンバーにやってもらう、という感じでした。でも素晴らしいミュージシャンとの出会いがたくさんあって、自分のアイディアを超えてくるプレイヤーが現れて、今はありがたいことにそういう人たちと音楽を作ることができています。やっぱり一人で作り出したものって、すごく硬い結晶みたいな感じでそれはそれでとてもいいんですけど、色々な人から色々なものを吸収して、もっとふくよかな集合体みたいな感じで曲が仕上がっていくことが、やっぱり素敵だなって。brainchild’sに参加させてもらって感じたのは、メンバーの皆さんは“人間味”で音を鳴らしているところに大きな意味があって、そういうものがちゃんと作品の中に昇華されていると思います。それがやっぱりバンドの面白味だと思ったし、ここ数年は気がついたらバンドスタイルでのレコーディングになっている気がします」。
キャリアのスタートがバンドだっただけに、シンガー・ソングライターでありながらもやはり根っこのマインドはバンドマンであり、そのフロントマンだ。
「最後の境界線は責任の所在だと思います。バンドのときはみんなで肩寄せ合う、寄りかかり合う感じで、それがすごくいいけど、でも誰が何をしようが最後に責任取るのは俺という気持ちはずっとあって、それはある種シンガー・ソングライターとしての矜持というか。そういう向き合い方をしているとメンバーが自由に楽しんでくれて、いいアイディアもたくさん出てきて、結果的にいいものができあがる。メンバーは俺のことをバンドのフロントマンというよりは、シンガー・ソングライターとして立ててくれるシーンが多くて、上手に線を引いてくれている感じはします。今はもう不思議な共同体のようになっていて、それがすごく心地いいです」。
「歌の部分でも、曲を作ることも、やっぱりbrainchild’sというプロジェクトがかなり刺激になっている」
brainchild’sでは、菊地“EMMA”英昭というカリスマギタリストが中心にいる状況をどこか楽しんでいる節がある。そしてbrainchild’sでゴリゴリのロック、ソロではポップスと棲み分けをして、自分ができること、様々な音楽を楽しんでいる。
「brainchild’sでは、それまでとは違う感じの音楽をやってきて、最初はシャウトをしていれば大丈夫かなと思っていたら(笑)、EMMAさんのやりたいことが少しずつ変わってきて。でもEMMAさんの思いつきがbrainchild’sの根源になっているので、その根拠はEMMAさんの頭の中にしかなくて、毎回それを聞かせていただいて、歌詞を書いています。でもその作業って自分の作りたい曲だけを書いていたら、絶対にやらない作業なので、すごく勉強になっています。EMMAさんが書く曲は最初、自分の声のスイートスポットと違うところが採用されていて、どうしようかなって結構迷いました。その中でちょっとディストーションというか、歪ませてアタックをはっきりさせようとか、試行錯誤した部分もありました。以前よりも高い声が出るようになったのも、それが影響しているかもしれません。歌詞も違う人格で書かなければいけないところもあったり、こういうタイプの歌詞は実は得意だったんだという新たな発見があったり、歌の部分でも、曲を作ることも、やっぱりbrainchild’sというプロジェクトがかなり刺激になっています」。
元々ポップス志向だったが、FoZZtoneではロックが求められて、そういう曲を書いて歌い「ロックを覚えて」、ソロになって「ポップスに戻ろうって思っていたら」brainchild’sでまたロックに引き戻された。しかし色々な音楽を経て、ソングライティングの部分でも、歌のテクニック的な部分でも鍛えられ、それが刺激となってアーティストとしての進化に繋がった。
4月19日配信予定のインタビュー【後編】では、話題の新曲「写真はイメージです」についてタップリと語っていただいています。