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200年に一人の天才ボクサーが語る村田諒太の今後

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
村田諒太は次に何を見せるか?(写真:アフロスポーツ)

「具志堅用高を超える天才」「200年に一人の逸材」と謳われた、元日本ウエルター&同ジュニアウエルター級王者の亀田昭雄。現役続行を表明した村田諒太について、亀田の思いを語ってもらった。

エンダム戦は、村田諒太にとっては、可哀想すぎる判定でした。どう見ても村田の圧勝です。村田は終始自分のペースで試合を進めていましたし、自分のボクシングを貫きました。4ラウンドにはダウンを奪って、その後も適確にパンチをヒットしていました。

ボクシングの世界ではチャンピオンと挑戦者がいて、引き分けでもチャンピオンの防衛になります。今回は決定戦だったけれど、村田の方が下位ランカーだった。そういう意味では、村田はもっと修羅のように倒しに行けばよかったのかもしれません。

とは言え、村田は深追いしないながらも、終始試合をコントロールしていた訳だから、ゲームプラン通りに展開でき、してやったりという気持ちがあったでしょう。本来なら、倒さなくても勝っていた試合です。帝拳のコーナーも、勝利を確信していたが故に、無理はさせなかったんじゃないでしょうか。

ミドル級という重いクラスでは、一発のパンチが命取りになります。交通事故のようにアッサリ試合をひっくり返されたりするのが重量級なのです。だからセコンドも「KOしに行け!」とは言えなかったんでしょう。

どちらが強いか、どちらがボクサーとして優秀かを問う場合、間違いなく村田でした。村田は勝負には勝っていましたよ。ジャッジが間違っています。ただ人間だから、間違ったり、私情が絡んだり、色々影響しますよね。プロもアマも、採点表に私情が反映されることってあります。僕もアマチュア時代にそんな経験があります。

村田が復帰すると聞いて、良かったなと僕は思っています。このまま終わったら、村田も悔しいでしょう。負けたら辞めようと思っていたかもしれないけれど、終われないでしょう。こんな終わり方じゃ一生、モヤモヤしたものを引き摺りますよ。

村田の敗戦から1か月、僕なりに時間を掛けて敗因を検証しました。確かに世界的に見ると珍しい判定じゃないですね。村田はあくまでも、HOMEの戦いをした。村田は「勝てる」という前提でリングに上がった。最初は手を出さずにゆっくり相手を見た。終盤も手数が減った。

敵地に乗り込んだ場合、あのスタイルでは勝てないです。エンダム戦の村田は、敢えて言うなら<慢心>があったと言えるでしょう。戦い方は修正が必要ですね。

敵地なら、どうしたって初回から倒しに行くスタイルが求められます。僕がシンシナティーでアーロン・プライアーに挑んだ時もそうです。マニー・パッキャオが世界的スターになったのは、試合開始から終了まで常にKOを狙っているからですよ。あのスタイルにファンは熱狂するんです。倒す姿勢がほしいですね。

村田は日本開催に拘らず、敵地で世界タイトルに挑戦してもいい。AWAYなら、どうしたって手を出さざるを得ないでしょうし、村田の潜在能力を考えれば、充分通じます。バンバン手を出して、リズムに乗った時の村田はいいですよ。個人的にはゴロフキンとだっていい勝負をすると見ます。

頑張ってほしいですね。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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