なぜ月ぎめで新聞を取らないのか、その理由をさぐる(2023年度版)
新聞を購読するもっともメジャーな様式は世帯単位で月ごとに契約し、定期購読する「月ぎめ」によるもの。その月ぎめの購読者は減少中との話だが、なぜ人々は月ぎめで新聞を取らないのだろうか。実情を新聞通信調査会が2023年10月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の結果から確認する。
今調査によれば、月ぎめで新聞を取っている人は減少中。もっとも古い記録の2008年度時点では88.6%だったのが、直近年度の2023年度では58.1%にまで減少している。
そこで月ぎめで新聞を取っていない人に、なぜ新聞を月ぎめで取らないかに関して尋ねたところ、直近の2023年度では「テレビやインターネットなど他の情報(源)で十分」とする意見がもっとも多く、77.6%に達することとなった。
次いで多いのは「購読料が高い」で38.3%。単純に値段だけを見て高いと判断したのか、購読料と得られる情報などの便益を比較して高いとの結論に至ったのかは今件では分からない。
さらに「読む習慣が無い」「読む時間が無い」「処分が面倒」など、購読料がいくら下げられても月ぎめで新聞を取ることはないだろうとする層の回答が並ぶ。中でも「処分が面倒」は避けようのない頭の痛い話ではあるが、電子版ならばこの問題はクリアされるはずなのだが。
他方、新聞そのものの忌避傾向に関して、月ぎめで新聞を取らない人も図書館などで読むだろう、あるいは駅や売店などで買うのではとの指摘もあるが、それぞれの回答値は8.1%・4.2%。月ぎめの購読者以外にも新聞の閲読者はたくさんいるはず、との仮説を肯定するのは難しい。
もっとも、例えば「テレビやインターネットなど他の情報で十分」なので「購読料が高い」と判断する、「テレビやインターネットなど他の情報で十分」だから多忙な時間を割くほど「読む時間が無い」など、複数の項目が重なって月ぎめで新聞を取っていない可能性は多分にある。選択肢で連動性がある設問は、複数回答形式の結果でも、推測以上の精度を持つ実情を見い出すことは難しい。
回答項目のうち上位回答率を示したものについて、直近年度分に関して属性別で区分した結果が次のグラフ。
18~19歳は自分で新聞を買う機会があまり無く、世帯単位で定期購読している、あるいは保護者が持ち帰った新聞を読む機会が多いからか「購読料が高い」の回答値が低め。また、自分で処分することもあまりないため「処分が面倒」も低い。しかし30代以降は自分が世帯主になる場合も多々あることから、「購読料が高い」を理由に挙げる人が多くなる。
他方「読む習慣が無い」は18~19歳でもっとも高くなり、それ以降はおおよそ年齢とともに減少していくが、これが年齢階層別によるものか、それとも世代によるものか、現状だけでは確認ができないのは気になるところ。
現時点では月ぎめで新聞を取らない人のうち、「テレビやインターネットなど他の情報で十分」と考えている人が全属性で3/4強を占めている。20~60代に限れば8割を超えている。今後さらにインターネットを利用する人が増えるに連れて、テレビやインターネットの情報で十分だから、月ぎめで新聞を取らない人が増えていくのは容易に想像できる。
もっともインターネット経由の情報は多分に新聞社自身も配信している。内容的に「紙の上に刷られたもの」か「インターネット経由で伝えられているもの」かの違いのみとの考え方もある。是が非でも紙媒体としての新聞を月ぎめで取ってほしい、売り続けたいのなら話は別だが、情報そのものの対価を新聞社が求めたいのであれば、テレビやインターネット経由で「紙媒体としての新聞」ならぬ「新聞に掲載されている情報をインターネット経由で」売る施策、一番の具体例かつ現時点ですでに複数社が実施している有料の電子版の展開を、これまで以上に積極化する必要があるのかもしれない。
もちろんインターネットを用いて情報を取得する人たちは、無料で情報の提供を受けるスタイルに慣れている。月ぎめによる新聞の購読者以上に、情報に求める対価の物差しは厳しい。紙媒体の新聞と同じような路線、発想、方針、品質で同等の対価をインターネット経由の読者に求めていたのでは、多くの人が見向きもしない。
実際、多くの新聞社において、有料電子版の読者増加分では、紙媒体版の減少分を補えていない。より厳しい品質チェックと自らを律する心構え、さらには価値を見い出してもらえるような仕組み、工夫、そして何よりも努力が求められよう。
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※メディアに関する世論調査
直近分となる第16回は2023年7月21日から8月20日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は2871人。有効回答者の属性は男性1377人・女性1494人、18~19歳53人・20代225人・30代324人・40代454人・50代515人・60代506人・70代以上794人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。
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