クマムシを光速の30%まで加速!?NASAの計画がヤバイ
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「クマムシを光速の30%まで加速させる計画」というテーマで動画をお送りしていきます。
人類はこれまで、いくつもの宇宙船を打ち上げ、宇宙探査の可能性を探ってきました。
それでも、太陽圏を脱出した宇宙船は、数えるほどしかありません。
そんな中、NASAはスターライト計画というプロジェクトで、恒星間を亜光速で駆け抜ける宇宙旅行を実現させようとしています。
スターライト計画では、小型の宇宙船に生物を乗せようとしている点が、驚くべきポイントです。
どのようにして亜光速移動を実現するのか、宇宙船に乗り込むのはどのような生物かについて詳しく見ていきましょう。
●亜光速で駆け抜ける小型宇宙船
従来型の宇宙船の推進力は化学的推進力に頼っていました。
燃料を燃焼させて船体を加速させる方法では、太陽風が届く領域である太陽圏の外に至るまでに数十年、別の恒星系までは数万年以上かかってしまいます。
そこで、スターライト計画では、宇宙船に搭載した反射板(レーザーセイル)に強い光を地球から照射することで、推進力を得る方法を採用します。
光子の運動エネルギーを、そのまま宇宙船の運動エネルギーへと変換し、推進力を獲得するというメカニズムです。
地表のレーザーから放射された光子は、宇宙船に取り付けられたレーザーセイルに反射することで、宇宙船を実に光速の30%もの速さにまで加速させます。
ある地点に到達するまでの時間が1000分の1にまで短縮され、最も近い恒星系であれば20年程度と、生物を生きたまま別の恒星系に輸送することも可能になります。
●「クマムシ」が恒星間旅行の乗組員に
宇宙旅行の技術が発達すれば、いつか人も遠い星に旅行へ行ける日が来るかもしれません。
恒星間旅行の最初の乗組員に、最強生物として有名なクマムシが候補にあがっています。
過酷な船旅を乗り越えるためには、放射線や発射時の強烈な重力加速度などに、耐えなければなりません。
その点、クマムシは干ばつや絶対零度、高レベル放射線に耐えられることが分かっています。クマムシはこれまでに過酷な実験を乗り越えてきた実績があり、このプロジェクトの乗組員の候補として選出されました。
クマムシがこの実験に選ばれた理由は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、代謝率が低いことです。
代謝とは外から取り込んだ栄養を、エネルギーに変換することを指します。
宇宙空間に放り出されてしまうと、宇宙船は完全な密室になります。
そのため、出発した後は、エサの補給はできません。
つまり、クマムシのようになるべく少ないエサで長く生きられる生き物が望ましいのです。
2つ目は、クリプトビオシス状態に移れるかどうかです。
クリプトビオシス状態とは、代謝を止めることで生命としての活動を停止する状態のことです。
クリプトビオシス状態に移れる生物はクマムシのほか、「ワムシ」と「ネムリユスリカ」があげられます。
この状態に移る条件としては「乾燥」「氷点下」「浸透圧の変動」「酸素の不足」などがあり、どれも生きていくのに厳しい環境です。
このような極限環境が、クリプトビオシス状態のトリガーとなります。クリプトビオシス状態に移った生き物は、外部環境の変化に対して非常に強くなります。
宇宙空間において、生命体を輸送する理想的なモデルは、ミッション開始時にクリプトビオシス状態にし、目的地で元に戻すことです。
つまり、クマムシのように、クリプトビオシスの能力を備えた生物は、恒星間旅行にうってつけの生物と言えるでしょう。
3つ目は、高い放射線耐性です。
地球上では、地球の磁場が宇宙空間を飛び交う放射線(宇宙線)を跳ね返してくれるため、高い放射線耐性がなくても生きていけます。
しかし、宇宙旅行をする場合、磁場のシールドがなくなるため、放射線にさらされても生きていける強靭な生物でないと耐えられません。
ヒトの場合、高レベルの放射線にさらされることは、ガンや放射線病の原因になります。
このグラフは、どれくらいの放射線量に耐えられるかを生物ごとに比較しています。
この通り、クマムシは、バクテリアに次いで2番目に耐性が高いです。
棒グラフが黒で示された、クリプトビオシス機能を備えた生物の方が、放射線耐性が高いのも興味深いポイントと言えるでしょう。
これらの3つの点を考慮すると、クマムシは恒星間旅行に適した生物と言えます。
他の生物では「線虫」や「ワムシ」なども候補にあがっています。
●恒星間旅行は片道切符
この恒星間旅行は、悲しい結末を迎えます。
なぜなら、宇宙旅行に参加した生物は、2度と地球の地面を踏めないからです。
ミッションの目的は、宇宙空間における生物輸送の可能性や課題を探ることです。
そのため、宇宙船が地球に返ってくることは予定されていません。
この点においては、前方汚染の可能性があるとして、批判が生まれています。
前方汚染とは、地球上の生物を他の惑星に広げることで、地球以外の惑星の環境を汚してしまうことを指します。
しかし、前方汚染については心配する必要はないと、プロジェクトチームは考えています。
なぜなら、光速の30%もの速度で何らかの天体に衝突すれば、生物サンプルは生き延びるはずがないからです。
つまり、亜光速という速さが自爆装置としても機能しているのです。
これまで、さまざまな過酷な実験を乗り越えてきたクマムシであっても、亜光速で天体にぶつけられたらひと溜まりもありません。
とてもかわいそうではあるものの、このプロジェクトが成功すれば、宇宙探査の分野において新たな扉が拓けるでしょう。
もしそうなれば、星になったクマムシに感謝を捧げなくてはいけませんね。
また今回の関連で、クマムシを超低温環境で「量子もつれ」の状態にする実験が行われ、大きな話題を呼んでいます。
宇宙ヤバイchと同時に運営する「生物ヤバイch」に投稿した以下の動画で、詳細な解説動画をしているので、併せてご覧ください!