セクハラ被害を告発する「#metoo」ノルウェーでも広まる 「悪いのは女性ではない」
29日、ノルウェー首都オスロにある国会前広場で「#metoo」キャンペーンのデモが開催された。
「#私も」というハッシュタグで、SNSでセクハラ被害や性被害を告発する動きはノルウェーでも広がっている。
筆者のノルウェー人の女性の友人たちも、特にFacebookで告白をしており、最近は連日「#metoo」関連の投稿を目にするようになった。詳しいことは書かずに、ただ「#metoo」とだけ投稿する人もいる。
国会前での集会には約20人の女性が自分たちの被害を告白。Facebookのイベントページでは1300人以上が参加に興味があるようだったが、現場に現れたのは200~300人ほどだった。
国会前でのデモはこれまで何度も取材しているが、話題の大きさの割には今回は足を運んだ人は少なめだ。性暴力を非難する過去のデモでは、これ以上の人が集まっていた。日曜日の夕方で寒かったせいだろうか。SNSならではの議論になっているのかもしれない。
ノルウェー国営放送局NRKはデモを生中継し、大手新聞社やテレビ局も報道に駆け付けた。
「女性はそれくらいは我慢しなよ」という雰囲気はもう終わりにしよう。こういうことが起きていることは、みんな知っていた。「面倒だから、黙っていて」という空気。次の世代が同じことを経験しないように、こんなことはもうやめよう。
女性らは壇上で声をあげた。
今回の集会では、セクハラや性犯罪がどれだけ大きな社会問題かを認識するために開催された。
「若い人たちは、何がレイプか分かっていない。だから私たちは声に出す必要がある。#metooキャンペーンは、自分たちの体験を話しやすくしてくれた」。#metooは、SNSで育った世代だからこそできる、新しい「解放されたカルチャー」だと、スピーチをする女性たちは話した。
「女は大げさだという空気はもうたくさん。自分を責めるのはもうたくさん。私に触らないで、と私は叫び続ける」と話したのはコメディアンのソフィエ・フロイソーさん。
「ひとりじゃないのだと実感できれば、私たちは強くなれる。問題解決のために、政治家は対策をするべきだ」と性被害にあった人々を支える団体の広報ティーナ・スコートネスさんは声をあげる。
大きな拍手と応援の声を受けていたのは、声を震わせながら自身の体験を話したトゥルーデ・スメッストゥーエンさん。小学生の時に校内で警備員に何度もレイプされた。当時は相談しても学長などに信じてもらえなかったことがトラウマになったと語る。
ノルウェー映画監督団体のリーダーであるマリアンネ・クレーヴェンさんは、映画・テレビ業界ではこの問題は根深いと話す。
「フリーランサーや個人事業主ばかりで、夜間勤務が多く、他者との競争を迫られるこの業界では、特殊な人脈づくりをしなければいけない。力関係が顕著になるこの業界では、これからの若い人の被害を防ぐためにも、男女の労働賃金を平等にし、女性の割合をもっと増やすべき。文化大臣は行動すべきだ」と訴えた。
女性団体のパウリーネ・ヨステーンさんは、「これは、いつでも、どこでも、誰にでも起きること」だと話す。
ほかにも、「性被害は女性のせいではない。社会問題だとみんなで認識する必要がある。悪いのは女性ではない」、「どう対応するべきか、学校の教材に記されるべきだ」などの声が壇上に立った女性たちからは聞かれた。
左派政党の青年部や、来年の予算案で補助金をカットされそうな女性支援団体は、ノルウェー政府や首相を批判。一方、首相が所属する保守党からは青年部の副リーダーも出席し、#metooキャンペーンを支持する声をあげた。
Photo&Text: Asaki Abumi