ジャパンライフの意匠登録が意味するもの
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「ジャパンライフ、元特許庁長官ら5人に計約1億4500万円の顧問料」というニュースがありました。
今春に特定商取引法違反容疑で警視庁などの捜索を受けた磁気治療器販売会社「ジャパンライフ」(破産手続き中)について、被害弁護団は18日、同社が元官僚ら5人に計約1億4511万円の顧問料を支払っていたと発表した。
5人は同社のパンフレットで氏名や肩書などが紹介されており、弁護団は「5人が広告塔となったことが被害拡大に拍車をかけた」として、顧問料を返還させるよう同社の破産管財人に求めている。
ということです。なお、受け取った顧問料という点では、元通産相秘書官や元朝日新聞政治部長の方がはるかに高いのに、なぜ、「元特許庁長官」だけが見出しに使われるのかちょっと理解に苦しみます。
また、テレビ東京の「元特許庁長官…なぜマルチ?」というニュースでは、
ジャパンライフが販売促進に使ったチラシです。特許庁のお墨付きを得たことをアピールする内容で、3枚並んでいる登録証は、ジャパンライフの磁気ネックレスなどについて特許庁が2006年に「意匠権」を認めた際のものです。当時、このデザインの「意匠権」を認めた特許庁長官は、この中嶋誠氏。ところが、こちらのチラシには驚いたことにその中嶋氏が2016年にジャパンライフの顧問に就任したと書かれています。
と報道されています。意匠登録と顧問就任とに何らかの関係があるかのようなニュアンスですが、そういうことはないと思います。もちろん、行政指導・処分を何度も受けている会社の顧問として就任することの道義的責任は問われるべきかと思いますが別論です。
今までになかったデザインであれば意匠登録は容易です(費用もせいぜい20万円くらいです)。日本では、年間およそ30,000件の意匠登録があり、ジャパンライフ社も今までに44件の意匠登録を行なっています。意匠登録証にはその時の特許庁長官の名前が入っていますがそれは何ら特別なことではありません。意匠登録を有利に行なってもらうために、特許庁長官に何らかの働きかけをするのはあまりにもハイリスク/ローリターンであり、やる意味がありません。
また、意匠登録は、そのデザインが今までにないものであることを証明しているだけであって、そのデザインや商品が素晴らしいものであることに「お墨付き」をあたえているわけではありません。ましてや権利者が真っ当なビジネスを行なっていることの証拠になるわけではありません。これは、特許も同様です。
意匠や特許の登録証で「お墨付き感」を出すマーケティング・テクニックがたまに見られますが、これは、単に立派な企業パンフレットや豪華な本社ビルと同じで、その会社のビジネスの正当性とは直接関係ありません。もちろん、意匠や特許をマーケティングに使う会社が全部怪しいというわけでもありません。パンフレットが立派な会社は全部怪しいということはないとの同じです。
ところで、ジャパンライフの件とは関係なしに、一般に特許についてたまに見られるケースですが、特許取得の事実がないのに「特許技術」、「世界特許取得」等、広告に書いてしまうと、特許虚偽表示として特許法198条違反で「3年以下の懲役又は300万円以下(法人の場合、1億円以下)の罰金」の刑事罰対象になってしまいます。