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氷川きよしさん旧事務所のKiina商標登録出願の意見書が公開されています

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:商願2023-059092審査経過情報

氷川きよしさんの旧所属事務所である長良プロダクションが出願していた"Kiina"および"KIINA"の商標登録出願に対して特許庁から拒絶理由通知(一種の暫定的拒絶)が出ていた件についてちょっと前に記事を書きました。

その記事の公開時点では、この拒絶理由通知に対する意見書が旧事務所から4月24日に提出されていたのですが、その内容は(特許庁に有料の閲覧請求しても)見られない状態でした。しかし、今チェックしたところ、その意見書がウェブで閲覧可能になっていました。一般的な公開情報ですので、ここで全文引用します。

【意見の内容】
拒絶理由通知書の理由1に「出願人が独立阻止のために商標出願を行ったという記事が確認されることから、出願人には、不正の目的をもって本願商標の出願に至ったことが推認されます。」とありますが、出願の目的は、事務所及びタレントと無関係の第三者による権利取得を防ぐことであり、独立阻止や今後のタレント活動を妨害する意図は全くありません。
また、タレント本人とは今後の活動及び芸名使用について協議を開始することに合意しておりますが、まだ具体的な協議には入っておらず、結論に至るには今しばらく時間がかかると思われます。
従いまして、審査官殿におかれましては、今しばらく本願に対する処分をご猶予いただきますようお願い申し上げます。
なお、協議の進展や結果が判明しました節には、改めてその旨上申する所存です。

氷川きよしさん本人との協議の結果を待ってくれという形になっています(商標審査ではこれもある程度は許されます)。拒絶理由通知では理由1(公序良俗違反)および理由2(他人の著名な芸名)が指摘されていたのですが、そのうちの理由1にしか対応していません(弁理士の代理なしで対応するとどうしてもこうなってしまいがちです)。とは言え、理由2についても、結局、氷川きよしさん本人の了承があれば解消するので、結局、旧事務所と氷川さんの協議次第ということになります。特許庁も、そのあたりは大目に見て、理由1についても理由2についても協議の結果待ちにしてくれるのではないかと思います。具体的な協議状況に関する報道は芸能メディアにお任せしたいと思います。

ところで、実務的な話ですが、4月24日に提出されていた意見書の内容が、つい最近まで(有料の閲覧請求を出しても)見られない状態だった理由ですが、少なくとも(意見書の)方式審査が未完であったためであることはわかっています。この意見書は応答期限を過ぎている(3月1日に拒絶理由通知が出され40日以内の意見書提出が求められています)ので、その延長料金を支払わなかったことに対して補正指令手続が行われていた可能性があります(この点も弁理士が代理していれば事前に延長請求を出していたでしょう)。

また、特許庁への出願業務は普通はインターネット出願ソフトという専用アプリを使うのですが、本出願は代理人を通していないので、それを使わず紙で出している可能性が高いです。そうだとすると、特許庁が外注でスキャンし、OCR処理するために、ウェブ掲載までにさらに時間がかかります(また、追加費用も取られます)。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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