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渡辺明新名人「自分には縁がないのかなと思ってた」名人戦七番勝負第6局終局後インタビュー

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

渡辺明新名人「(1日目は)ちょっと難しい展開にしてしまったんで、時間を使うことになってしまって。そういった意味でもあんまり成算はなかったです。互角で収まる順を目指してはいたんですけど。(65手目▲8八玉と)指し掛けのところはちょっとまずいように思ってました。(2日目、66手目△6三金から)封じ手後は手が広いんで、どの変化になるかはわかんないんですけど。ちょっと待たれてても、どう指していいかわかんなかったですけど。(反撃となる73手目▲5三歩は2分、続く▲7四歩は3分とわずかの消費で)攻められ方としては2通りぐらいだったんで、一応、攻められた時の対応は考えてはいたんですけど。(よくなったと思ったのは85手目)▲5二歩成と『と金』ができて・・・。まあなんか、見た目がちょっとよさそうかなっていう感じで思ってました。(終盤95手目▲6三角を指すのに39分考えたりしたのは)詰む、詰まないの変化が多いんで、そのへんをちょっと確認していたというか。(一局を振り返って)1日目がうまくバランスが取れてたので、それで2日目になってちょっと好転したかな、という感じですかね、はい」

豊島将之前名人「(1日目は早いペースで)王位戦で出た形だったので、少し考えてきてはいたんですけど。(指し掛けのあたりでは)難しいのでよくわからなかったですけど・・・。(封じ手のあと2日目は)▲5三歩といいタイミングで打たれてしまったので、ちょっとよくなかったのかもしれません。あのタイミングで▲5三歩打たれるのが、まあちょっと軽視していました。(そのあとは)7三の桂を取られる展開で我慢・・・まあそれもでもけっこうわるいとは思うんですけど、その方が粘れたのかもしれないです。(最後は難しい終盤戦だったと思うが)難しかったんですか? いや、ちょっとダメなのかなと思ってました。(中盤の誤算が痛かった?)そうですね、はい。あとまあなんか(84手目)△3一玉のときに▲5二歩成、成られて▲4一銀がきつかったんで。いやなんか最初は▲5二歩成じゃなくて▲2二歩とかっていう感じなのかなと思ってたんですけど。まあでも△3一玉寄って考えられているところで、歩成られたらきついなと思いました」

渡辺新名人「初めてのことも多かったですけど、まずまず指せたのかな、という感じですかね。(名人はちょっと他のタイトルとは違うという言い方もあるが、名人を名乗ることについては?)・・・。うーん。まあそうですね・・・。初挑戦だったこともあって、あんまり、今まで意識することはなかったので。ちょっと実感はないですけどね、はい。(一時は『名人になることをあきらめた』というようなことをインタビューで語ったこともあったが)まあそうですね、うーん。・・・。まあちょっと自分には縁がないのかなと思ってたんで。そういう意味でのやっぱりあんまり実感はないですね。(また三冠となったが今後は?)まあそうですね、えーと。・・・。タイトル戦はもう今年はないので。名人戦に入る前も(棋聖戦五番勝負で)タイトル戦が続いていたところもあるので。ちょっと休んで次に備えたいという感じですかね」

豊島前名人「(今期名人戦を振り返って)ちょっと冴えない内容の将棋が多かったというか。勝った局も決め損なったりしてることが多かったので。全体的にちょっと押されていたというか。(コロナ禍で対局ができない期間もあり、また開幕後は叡王戦と並行しての七番勝負だったが)準備できる時間が長かったので。調整とかは難しかったですけど、同じ条件で指してますし。準備した作戦とかはわりと上手くいったことが多かったような気がするんですけど。まあ、そのあとの実力的なところがちょっと足りなかったかなと思います。(対局不足が響いた?)最初はそういうことを心配はしてましたけど、まあでも結局たくさん対局するようになってからも、あんまり内容がよくなかったんで、まあ、あんまり関係なかったような気はします。(昨年の名人獲得からこの1年を振り返って)よい経験ができたと思うので、これから活かしていけたらとは思います。(今後は)叡王戦たたかってるところですけど、ちょっと次まで時間が空くので、疲れをとって、まあそれでどうなるか、やってみるしかないかな、という感じですかね。あとはまあ実力が足らない部分があるので、それは時間をかけてやっていけたらと思います。(渡辺挑戦者について感じたことは)考えてない手を指されることが多かったので、勉強になったというか」

渡辺新名人「(七番勝負を通じて手応え、充実感は?)まあそうですね・・・。手応えというかまあ・・・。まあなんかそうですね、きつい将棋が多かったな、っていうか。やっててきつい場面が多かったな、っていう。振り返るとそういうことはやっぱりありますね。早めに苦しくする将棋も多かったんで、なんかやっぱり2日間、けっこうきつい時間が長かった将棋もあったんで。うーん、なんかそうですね。いややっぱり大変だったっていうのが、いま振り返ると思うことですね、はい」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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