夏祭りの夜、汽車の中で一晩過ごしませんか? という旅行商品
上野発の夜行列車おりた時から
青森駅は雪の中
北へ帰る人の群れは誰も無口で
海鳴りだけを聞いている
あの名曲「津軽海峡冬景色」の歌詞ですが、その青森県の津軽鉄道でこの夏、夜行列車がひと晩限りで復活します。
夜行列車というのは寝ている間に移動して朝になったら目的地へ到着しているという便利な列車で、昭和の時代にはたくさん走っていたものです。
寝台車だけでなく普通の座席車も使われていましたので、学生時代にお金を切り詰めるために夜行列車を乗り継いで旅行した思い出がある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回の企画はその普通車の直角の硬い座席に揺られて一晩過ごす懐かしい体験です。
以前にもご案内いたしましたが、津軽鉄道は地吹雪の中、ストーブ列車が走ることで世界的に有名になった鉄道ですが、そのストーブ列車は夏の間はお休みになりますので、ストーブ列車に使用している古い客車を利用して、昔ながらの夜行列車を走らせてみようという話になりました。
昭和の時代の長距離列車は、多くが機関車に引かれる客車列車でした。
今の電車のように編成全体に動力を持った車両を配置する方式ではなく、先頭の機関車だけが動力を持っていて、後ろの客車は動力を持たずにただ引っ張られるだけのスタイルの列車が客車列車です。機関車が加速減速するたびに後ろの客車にガクンガクンと振動が伝わってくる決して乗り心地が良い列車ではありませんでしたが、すでに機関車が引く客車列車は定期列車としてはJR線上にはありませんから、今となっては実に貴重な乗り心地を体験できるのが、この津軽鉄道の夜行列車になります。
まして、使用する客車は国鉄から払い下げられた昭和20年代製造で、かつて国鉄時代に上野発の夜行列車として使用されていた経歴を持つ車両です。その夜行列車の目的地だった本場の津軽での運行ですから、昭和の汽車旅を体験された年代の鉄道ファンの皆様方には懐かしく思い出される旅になるでしょうし、当時を知らない若い皆様方には新鮮な体験となることでしょう。
実はこの夜行列車の企画は筆者がいすみ鉄道社長時代に昭和の国鉄形ディーゼルカーを使用して何度も走らせた経験に基づき、津軽鉄道の澤田社長さんに提案させていただいたものなのです。
3月末にストーブ列車を取材しに訪ねた際に、夜行列車を走らせて一晩中列車の中で過ごす企画のお話をさせていただいた時、澤田社長さんと、
「面白いねえ、いつやろうか?」
「夏休みが良いですよ。」
「だったら、町が一番賑わう五所川原の立佞武多(たちねぷた)の時が良いね。」
という話になったもので、
地元五所川原市の立佞武多(8月4日~8日)に合わせて、初日の8月4日の運転になることが決まりました。
そして筆者のNPOでは旅行を募集することができませんので、旧知の日本旅行の友人を介して旅行商品に仕上げていただいたのがこの内容です。
青森県には津軽地方を中心に20か所以上の地域で「ねぶた」或いは「ねぷた」と呼ばれるお祭りがありますが、五所川原の立佞武多は地上20メートルにもなる縦型のねぷたとしてはおそらく日本一のものになります。そのお祭り初日の夜は五所川原市内だけではなくて、弘前など近隣地域を含めてホテルが既に満室の状況です。その中で、夜行列車を運転することの意義も大きいのではないでしょうか。
ということで、津軽鉄道を支援するこの夜行列車企画。
8月4日ひと晩限りの運転です。
希望者には先着順に当日の夜、立佞武多の引手も体験できる地域貢献型イベントとして、ぜひチェックしてください。
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こんな車内で一晩汽車に揺られて朝を迎えることの価値がご理解いただける皆様のご乗車をお待ちいたしております。
もちろん筆者もNPO法人「おいしいローカル線をつくる会」として当日お手伝いに伺う予定です。
※注
・本文中に使用した写真はすべて筆者の撮影です。
・筆者のNPOは津軽鉄道を支援するためにこの旅行を企画しました。活動経費等はすべてNPO持ちで運営いたします。この記事は津軽鉄道と沿線地域を盛り上げるための告知であり、収益を上げるための旅行商品の宣伝ではありません。
・NPOからは津軽鉄道支援の一環として夜汽車の雰囲気をさらに高めるために、この旧型客車内の天井灯の蛍光灯を白熱灯色に変更する資金を提供させていただく予定です。