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鳥貴族対鳥二郎事件の顛末は何を生み出したか

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

以前にも書いた(過去記事1過去記事2)鳥貴族vs鳥二郎の裁判ですが、結局、条件は非公開のまま、和解となったようです(参照記事)。大阪地裁まで裁判資料を閲覧に行けば裁判の内容はある程度わかるかもしれませんが、和解条件については当事者以外はわからないでしょう。

おそらくは、鳥貴族が訴訟を取り下げる代わりに、鳥二郎側が混同を防ぐために何らかの対応を取るという形でまとまったのだと思います。鳥二郎は西日本にしか店がないので自分の目では確認できませんすが、どうやらロゴデザインはそのままに横文字に書き換えたようです(参照記事)。正直、そんなに変わったとは思えません。鳥貴族側が権利行使を断念したのに近い状態ではないかと思いますが、この事件の報道により鳥貴族と鳥二郎は全然別の店であるという認識が広まったので「元は取れた」のではないかとも思います。

トレードドレス(店の全体的な雰囲気等を保護する権利)が比較的しっかりと保護される米国であればまだしも(参考過去記事)、日本の現在の法律では商標として類似していないと、こういった便乗商法は防ぎにくいです。

そして、つい先日の16日に、鳥二郎の運営会社が運営するラーメンチェーン店「にく次郎」についても、全国チェーン店「丸源ラーメン」の運営会社が店舗の外観やメニューなどが自社のものと酷似しているとして、不正競争防止法に基づき営業停止や損害賠償2419万円の支払いなどを求め、東京地裁に提訴するというニュースがありました(参照記事)。

この件については既に仮処分が請求されており、その時に既に触れていますが、鳥貴族の件と同様に、権利侵害にならないぎりぎりの線を攻めている感があります。「丸源ラーメン」側としては、鳥貴族裁判を見て仮に勝てないとしても黙ってスルーするよりは得だと考えたのではないでしょうか。

基本的にこの問題は「線引き」の問題です。店の雰囲気を真似することがまったく許されないのであれば、たとえば、焼き鳥屋の店先に赤提灯を掲げるのは江戸時代に私の先祖が始めたので。赤提灯の使用には当店の許可が必要ですなんてことになったら大変です。もう少し現実的に言えば、焼き鳥屋の看板で鳥の文字を象形文字風にデザインすることを独占させろというのはちょっと無理筋です。しかし、世の中の多数派が常識的に「おかしい」と考えるレベルで紛らわしい状態が法律的に「違法」でないのはやはり問題なので、日本でもトレードドレス的な権利がもう少し保護されるようになった方がよいのではないかと思います。「にく次郎」裁判でも不正競争防止法の文脈でのトレードドレス保護がが議論されることを期待します。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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