部数動向は軟調…女性向けコミック誌の部数動向をさぐる
・女性向けコミック誌の印刷証明付き部数のトップは「BE・LOVE」。直近の2017年10~12月期では8.9万部。「プチコミック」「Kiss」が続く。
・前四半期比では女性向けコミック誌においてはプラス誌は皆無。5%を超える下げ幅を示したのは5誌。
・前年同期比では女性向けコミック誌のうち1誌を除いてすべてマイナス。残り1誌はプラスマイナスゼロ。5%を超えた下げ幅は9誌、10%超は6誌。
トップはBE・LOVE
日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀無くされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向け雑誌ばかりで無く、少女・女性向けのにも及んでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。大よそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。電子版は含まれない)から、実情をさぐる。
まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2017年第4四半期(10~12月)のもの。
トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けている。
プラスは皆無…四半期変移から見た直近動向
次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
「ARIA」「Cookie」両誌は1割を超える下げ幅。「ARIA」は直近部数が8467部と1万部を切る実情のため、多少の部数増減で大きな振れ幅が生じることによる結果だが、「Cookie」は3万6000部。
踊り場を経ながらゆるやかな下落傾向の中にあったものの、今期では大きな下落。起死回生策が求められる状況ではある。
マイナス2.9%に留まった「フラワーズ」だが、2四半期前にスタートした人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」の特需が、今期で完全に消え去った形となった。
「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での底上げ(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は平常運転に戻した結果。今春には新しいシリーズがスタートするとの告知もされており、予定通りならば今後再び特需による盛り上がりが期待できよう。改めて「ポーの一族」のけん引力の大きさを知ることができる動向には違いない。
季節変動を考慮しなくて済む前年同月比では
続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
「フラワーズ」は「ポーの一族 春の夢」特需発生前の部数に戻った状態で、プラスマイナスゼロ。それ以外はすべてマイナスで、1割以上の下げ幅を示したのは6誌に及ぶ。
「ARIA」はかつて「進撃の巨人」特需で大きく部数を底上げしたが、間もなく失速。その後は下落基調を示している。部数は記録の限りではこれまでの最小値だった1万2000部すら下回る値にまで落ち、さらに下落を続けており、今四半期ではついに4ケタ台に突入。危機感を覚える。
再び大金星をつかみ、グラフに巨人のごとき動きを示してほしいものだが。
1年ほど前には複数の雑誌で見られた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。すでに第二期の実放送も始まっており、それに向けた企画記事なども見受けられる。部数の点でも盛り上がりを見せてもよいはずなのだが。
「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族 春の夢」が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、創生が欠かせまい。
他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減退している可能性は否定できない。
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