シリア政府軍は白燐弾を使用せず、テルミット焼夷弾を使用
激化するシリアの内戦は戦闘を撮影した動画が次々と投稿されています。市街地への無差別な砲撃や爆撃、樽爆弾の投下、クラスター爆弾、航空機の撃墜される瞬間、戦車同士の至近距離からの砲撃戦、痛ましい遺体の映像…。そしてアサド政府軍の手によって焼夷兵器が市街地で使われている映像が確認されています。
当初この兵器は白燐弾かと疑う声がありましたが、残骸を回収して確認したところテルミット焼夷弾であることが分かっています。ロシア製クラスター型テルミット焼夷弾「RBK-250 ZAB-2.5」です。テルミット反応は非常に高温で、しかも反応に酸素を必要としないので水の中に沈めても燃え続けるため、消火が著しく困難です。「RBK-250 ZAB-2.5」はクラスター型で親爆弾の中に子爆弾が沢山詰まっており、それぞれの子爆弾はテルミットと爆薬が内蔵されています。燃焼を始めると一定時間後に爆発する仕様で、周囲に火焔を撒き散らします。攻撃用の焼夷兵器です。
- 2012年12月12日、シリアのダマスカス郊外県アクラバ
シリアでアサド政府軍が使用した「RBK-250 ZAB-2.5」クラスター焼夷弾は、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)で使用が制限されるものに該当する兵器です。子弾にテルミットと一緒に爆薬も内蔵されてるため、クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)にも触れるでしょう。シリアはどちらの条約にも参加していませんが、国際社会は市街地での攻撃型焼夷兵器の無差別な使用を強く非難しています。
※この記事はシリア軍は白燐弾を使用せず、テルミット焼夷弾を使用(2012年12月16日)を元に纏め直したものです。
※追記:アサド政府軍がテルミット焼夷弾を使用していた理由はおそらく深い意図は無く、爆弾が枯渇したので在庫が残っていたものを何でもいいから使用していたと推測できます。テルミット焼夷弾はシリア内戦で2012年~2013年の一時期に集中的に使用されましたが、2015年現在では殆ど確認されていません。テルミット焼夷弾の在庫は使い切り、補充も無いようで、現在は樽爆弾の使用が増えています。