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注目! ドラフト/6 気になるあの選手 鈴木博志(ヤマハ)

楊順行スポーツライター
日本選手権でのヤマハは初戦、パナソニックと対戦する(11/6)(ペイレスイメージズ/アフロ)

 いやはや、びっくりした。なにしろ、目の覚めるようなスピードだ。

 2016年の都市対抗、JR九州戦。8回にリリーフで登板したヤマハの高卒2年目が、いきなり154キロを計時したのだ。思わず、スコアブックに"!"を記入した。誰だ? この右腕は。なるほど、鈴木博志か。「唐川(侑己・ロッテ)さんのように、ゆったりしたフォームで力強いボールを投げることにあこがれた」ため、フォームには力感がないが、当時自己最速の154キロはうなりが違った。鈴木はいう。

「意識しているのは、とにかく腕を強く振ること。社会人で体ができてきたので、力をロスなく伝えられるようになりました」

 小学生時代、地元・掛川で開かれた野球教室に参加していて、もともとヤマハとは縁があった。磐田東から社会人入りした15年は、右ヒジ疲労骨折の影響もあり、もっぱら体づくりの日々。下半身を徹底的に鍛え、栄養管理、サプリ摂取と合わせて体重は1年で10キロ、球速も11キロアップした。

 成長した2年目は、春先から登板機会を得た。都市対抗予選・本戦でも救援で登板し、日本選手権ではNTT西日本との2回戦に先発。6回途中を1失点に抑え、優勝に貢献している。加えてその試合では、走者と交錯した際に左足を骨折したまま投げ続けたというから驚きだ。

目標は社会人、いやいや、日本最速でしょう

 美甘将弘監督はシーズン前、「たとえばNTT西戦でも、2回で6四球。まだ、信頼しきれない」と辛口だったが、

「現役、コーチ、監督として見てきたなかで、ヤマハでは三本の指に入る素材。高校時代はケガが重なって脚光を浴びていませんが、当時からモノはよかったんです。備え持ったエンジンの大きさが違いますよね」

 と、そのスケールを認めている。その大器が衝撃を受けたのは、同学年の田嶋大樹(JR東日本)の投球だ。

「自分は雑用係だった(15年の)スポニチ大会で、新人ながらいきなり先発しましたし、去年のオープン戦で間近に見たストレートは質が違いました。まっすぐだとわかっていても、空振りが取れていた」

 だが、プロ解禁の同じ3年目。チームは都市対抗出場を逃したが、鈴木は新日鐵住金東海REXに補強され、ホンダ戦はリリーフで3回を無失点と、ベスト8進出に貢献。その試合では自己最速タイの155キロなど、150キロ台を連発し、しなやかな田嶋とは別の剛腕ぶりを見せつけたものだ。また日本選手権予選では、負けたら終わりの敗者復活トーナメントで永和商事ウイングを1安打完封。連覇のかかる本大会出場をグッとたぐり寄せた。

 先発してよし、抑えでもまたよし。優勝したBFAアジア選手権では、田嶋同様社会人日本代表として、侍ジャパンのユニフォームに袖を通している(ちなみに豊橋中央高の妹・友紀さんも、バレーボールで将来の日本代表候補)。その壮行試合、ブルペンでの投球が、高性能弾道測定器「トラックマン」によって最速157キロを計時。またトラックマンは直球の平均回転数2400と、ダルビッシュに近い数字をはじき出したという。そういえば春先には、

「今季は155キロとはいわず、158キロが目標。社会人最速を目ざします」

 と語っていたものだが、いやいや社会人ではない、プロ最速を目ざそうじゃないか。

すずき・ひろし/1997.3.22生まれ/静岡県出身/181cm95kg/投手/右投右打/磐田東高→ヤマハ

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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