アトピー性皮膚炎が女性の日常生活に及ぼす影響とは?
【女性のアトピー性皮膚炎が日常生活に与える影響】
アトピー性皮膚炎は、炎症性の皮膚疾患の中でも最も一般的なものの一つです。特に思春期以降は女性の罹患率が高くなり、成人女性の日常生活に大きな影響を与えています。
今回、フランスで行われた1,009人の成人女性を対象とした調査により、アトピー性皮膚炎が女性の生活のさまざまな側面に影響を及ぼしていることが明らかになりました。調査対象者の約半数が軽度、40%が中等度、10%が重度のアトピー性皮膚炎を有していました。
多くの女性が顔、首、手などの目に見える部位にアトピー性皮膚炎の症状を抱えており、一部の女性は胸部、性器周囲、臀部などのデリケートな部位にも症状があると報告しています。月経周期のある女性の場合、生理前や生理中に症状が悪化することが多いようです。
目に見える部位や性的に敏感な部位にアトピー性皮膚炎の症状がある場合、恋愛関係や性生活、仕事などに大きな影響を与える可能性が高いと考えられます。
アトピー性皮膚炎は単なる皮膚の問題ではなく、女性の社会生活や精神面にも大きく関わる疾患であると言えるでしょう。
【アトピー性皮膚炎と性の関わり】
調査では、アトピー性皮膚炎が性生活に影響を及ぼすことが明らかになりました。デリケートな部位に症状がある女性の23.1%が、アトピー性皮膚炎が性生活の障壁になっていると回答しています。
また、目に見える部位に症状がある女性の27.4%、デリケートな部位に症状がある女性の36.1%が、アトピー性皮膚炎の重症度が性生活に影響を与えていると報告しました。
パートナーとのコミュニケーションも重要な課題の一つです。アトピー性皮膚炎について悩む女性の65.6%がパートナーに自分の症状について話しているものの、13.4%はそれが喧嘩の種になると考えているようです。
皮膚は人間の体で最も目に見える器官であり、対人コミュニケーションにおいて重要な役割を果たします。アトピー性皮膚炎による皮膚の変化は、他者の態度や行動に影響を与える可能性があるのです。
【アトピー性皮膚炎と仕事の両立】
アトピー性皮膚炎は、女性の職業選択や仕事上の困難にも影響を及ぼします。調査対象者の11.4%が、アトピー性皮膚炎が職業選択に影響を与えたと回答しています。
目に見える部位に症状がある女性の24.2%が、仕事上の困難に直面したことがあると報告しました。一方、症状が目立たない部位だけの女性では12.6%にとどまっています。
また、目に見える部位に症状がある女性の34.2%が、アトピー性皮膚炎の治療のために仕事を休んだことがあると回答しています。症状が目立たない部位だけの女性では24.2%でした。
さらに、目に見える部位に症状がある女性の22.8%が、アトピー性皮膚炎が原因で病欠したことがあるのに対し、症状が目立たない部位だけの女性では11.6%にとどまっています。
以上の調査結果から、アトピー性皮膚炎が女性の日常生活に大きな影響を与えていることが分かります。特に、顔や首、手など目に見える部位に症状がある場合、恋愛関係や性生活、仕事などに深刻な影響を及ぼす可能性が高いと言えるでしょう。
医療従事者は、患者の症状だけでなく、生活への影響についても積極的に確認していく必要があります。また、患者自身も、パートナーや職場の理解を得ながら、アトピー性皮膚炎とうまく付き合っていくことが大切です。
皮膚は単なる体の表面ではなく、私たちの生活と密接に関わっています。アトピー性皮膚炎を抱える女性が、症状と向き合いながら充実した日常を送れるよう、社会全体で支援していくことが求められています。
参考文献:
Fougerousse, A. C., et al. (2024). Impact of Atopic Dermatitis on Adult Women's Lives: A Survey of 1,009 French Women. Acta Dermato-Venereologica, 104, adv10321. https://doi.org/10.2340/actadv.v104.10321