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北欧音楽の特徴?北欧音楽賞で目立つ女性の強さ、スウェーデンROBYNが優勝

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
厳しい冬の寒さによって生まれる「北欧の音」とは Photo: by:Larm

商業的な結果ではなく、実力とCDアルバムのクオリティだけを重視して、北欧5か国から最も優秀なアーティストに授与される「北欧音楽賞」(Hyundai Nordic Music Prize)。

この賞は2010年に設立され、ノルウェーの首都オスロで毎年開催される音楽の祭典「by:Larm」で発表される(ノルウェー語で「ビーラルム」は「街の騒音」を意味する)。

オスロ各地の会場で4日間開催される業界者向けのカンファレンスと一般向けの音楽祭 Photo: Asaki Abumi
オスロ各地の会場で4日間開催される業界者向けのカンファレンスと一般向けの音楽祭 Photo: Asaki Abumi

北欧音楽賞でノミネートされたのは、ノルウェー、アイスランド、フィンランド、スウェーデン、デンマークからの12組。

これまでの優勝者はJonsi、Goran Kafjes、First Aid Kit、The Knife、Mirel Wagner、Band of Gold、Jenny Hval、Susanne Sundfor。

各国からの審査員が数か月をかけて、昨年発表されたアルバムを平等に審査するのもので、開催地であるノルウェーにとって有利というわけではない。

優勝者だけではなく、ノミネートされる全員には高い実力が伴う。そのリストを見るだけで、最近の北欧音楽の傾向をみることができる。

女性の活躍が目立った北欧ベストアルバム

今年は12組中、男性は2組のみ。「女性ばかりだということに、後から気づいた」と審査チームは女性陣の活躍を褒めたたえた。

平等先進国として有名な北欧だが、音楽の世界では、アーティストだけではなく、レコード会社など業界全体で、まだまだ男性たちにとって有利だと批判され続けている。

今年の優勝者は、北欧を代表する有名なアーティスト、アルバム『Honey』をリリースしたスウェーデンのロビン(Robyn)となった。

北欧音楽が成長する理由

北欧音楽が育つ理由を、国際メディアからよく聞かれるというノルウェー人アーティストAne Brun(左) Photo: Asaki Abumi
北欧音楽が育つ理由を、国際メディアからよく聞かれるというノルウェー人アーティストAne Brun(左) Photo: Asaki Abumi

北欧各国に共通するであろう、独特な北欧音楽が育つ背景には何があるのだろう?

授賞会場では、ノルウェーのアーティストであるアーネ・ブルンがこう指摘する。

  1. 教育制度や金銭的な補助制度の充実が、「ほかと似たようなヒット曲」を作らなくてもいい余裕をうむ
  2. 寒くて長い冬という独特の気候によって、作品作りに集中しやすい環境
  3. 北欧らしい音楽、学校で聞いて育つフォークソング、デジタル時代にアクセスしやすい英語圏からの音楽。これらの異なる音楽のミックスを、子どもの頃から耳にして育つ環境

「寒すぎて、ほかにすることがないから集中しやすい」という点は、北欧がブラックメタルで有名な理由でもよく指摘されている。

別記事「怖い?今、ブラックメタルは本場ノルウェーでどうなっているのか 。世界中から押し寄せるブラックパッカー」

北欧の12組ノミネート一覧

「商業的な成績は評価に入れない」という基準のため、作品は必ずしもストリーミングで高い数字を記録しているとは限らない。ヒットチャートでは目立たないかもしれないが、個性的な「北欧らしい今の音」が揃う。

デンマーク

独特なエレクトロニックな音源を生み出すAstrid Sonneは特別賞を受賞 Photo: Asaki Abumi
独特なエレクトロニックな音源を生み出すAstrid Sonneは特別賞を受賞 Photo: Asaki Abumi
  • Astrid Sonne 『Human Lines』
  • Bisse 『Tanmaurk』
  • Soho Rezanejad『Six Archetypes』

フィンランド

  • Jori Hulkkonen 『Simple Music for Complicated People』
  • Karina 『Karina』

アイスランド

  • GDRN 『Hvad ef』
  • GYDA 『Evolution』

ノルウェー

オスロのライブ会場で歌を披露するリル・ハリマ Photo: Asaki Abumi
オスロのライブ会場で歌を披露するリル・ハリマ Photo: Asaki Abumi
  • Lil Halima 『love songs for bad lovers』
  • Marja Mortensson 『Mojhtestasse』

スウェーデン

  • Jenny Wilson 『EXORCISM』
  • Sarah Klang 『Love in the Milky Way』

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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