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今夜はサッカーファンを眠らせない?カップ戦ファイナルの3試合を展望する。

河治良幸スポーツジャーナリスト

イングランド、ドイツ、スペイン。日本時間の深夜に欧州主要リーグのカップ戦ファイナルの3試合が時間差で行われる。

これらの欧州主要リーグは最終節を終え王者も決まっており、その後に迎えるカップ戦のファイナルだけに現地での注目度も高まっている。

ドイツのポカール決勝では香川真司を擁するドルトムントが好調のヴォルフスブルクと対戦。日本でも人気のアーセナルがアストン・ビラに、リーグ王者でCL決勝をひかえるバルセロナはビルバオと伝統の一戦に2冠目をかける。それぞれの展望と勝負のポイントをまとめた。

※インタビュー形式の記事はこちら『日本代表について議論するページ』

■イングランド:FA杯 アーセナルvsアストンビィラ25:30~ FOXスポーツ(BS)

今季のプレミアリーグも3位に終わったアーセナルにとっては今季、唯一のタイトルになるのでモチベーションは高いだろう。一方のアストン・ビラは17位ギリギリで残留となったが、FAカップでは粘り強い守備からベルギー代表FWベンテケを中心に鋭い攻撃を見せるなど、一発の勝負強さを持っている。

もっともリーグ戦の直接対決はアーセナルが2連勝で、合計スコアは8−0。アーセナルはこの2試合に関してはボールを持ちながら、カウンターにも堅実に対応していた。

アストン・ビラはしっかり守ってカウンターに望みをかける展開になるが、単純なロングボールでは望みが薄い。DFのオコレとフラールを中心にアーセナルのパスから縦に仕掛けるプレーを食い止めながら、高い位置に何とかボールを運んで、CKや危険な位置からのFKでゴールを狙っていきたい。

■ドイツ:DFBポカール ドルトムント vs ヴォルフスブルク27:00〜 日テレ(地上波:関東地区)、日テレG+(CS)

CL決勝と同じベルリンのオリンピア・シュタディオンで行われるポカールの決勝。シーズンを通してのパフォーマンスから考えればヴォルフスブルク有利だが、ドルトムントも終盤に調子を上げており、リーグ最終戦は持ち前の”ゲーゲン・プレッシング”が見事にはまる形で難敵ブレーメンを退けた。

またドルトムントにはタイトルのかかったビッグゲームに慣れている強みもある。チームで最後の指揮になるクロップや引退するケールに有終の美を飾らせる意味でも団結力が高まっていそうだ。

一方のヴォルフスブルクは今年1月に亡くなったマランダの背番号を全員が付けてプレーする。攻守の切り替えが早く、縦のスピードを武器とする両者だけに、欧州レベルで見ても非常にインテンシティーの高い試合になりそうだ。

ドルトムントはトップ下の香川がシーズン終盤に限れば良い感覚でサッカーができており、当初から息が合っていたロイスに加え、ムヒタリャンやオーバメヤンとのコンビネーションからも決定機を作れる様になっている。

クロップ監督の辞任にともない、多くの選手がクラブを去る可能性が高まっているだけに、現在のメンバーによる、ボール奪取からの絵に描いた様な連動性の高い速攻も見納めとなりそうだ。

ヴォルフスブルクは攻撃ではドストが重要なターゲットマンだ。デ・ブライネなど2列目の活躍が目立つが、多くは1トップに張るドストの力強く柔軟なポストワークが彼らに前を向かせ、仕掛けを引き出している。ドルトムントの守備陣にとっては第一に封じるべきポイントだ。

守備は長身DFのクノッへが注目。高い対人能力と空陸両面の守備のセンスを誇り、23歳にして統率力も高い。ドルトムントとしてはオーバメヤンの機動力を活かしながら、香川がスペースを突くことで、クノッへの個の守備力をうまく出させない様にしたい。

インテンシティーの高い流れの中で、攻守の切り替わりから、どちらがより効果的に相手DFのスペースを突いていけるかが得点のポイントになる。

■スペイン:コパ・デル・レイ アスレティックビルバオ vs バルセロナ28:30〜 WOWOW(BS)

戦力的にもバルセロナが有利に見られるが、ビルバオの組織力は侮れない。レアル・マドリー×バルセロナのエル・クラシコに次ぐ伝統の一戦で、直接対決では常に好勝負になっている。

今季は結果的にバルセロナが2連勝しているが、タフな前半から効果的な先制点で流れが向いた部分もある。“格上”相手に失うものがないビルバオに対し、バルセロナにとってはCL決勝も控えているだけに、気持ちの持って行き方が難しい試合でもある。

バルセロナは当然メッシが注目であり、今季のビルバオ戦で3得点しているネイマールが大一番でスムーズにゴール前に絡んでいけるかも重要だが、勝負のキーマンはブスケッツだ。

ビルバオは中盤のプレッシャーがスペインではトップレベルに高いので、中盤の底でリズムを作りながら立て続けに縦パスを入れていくことが、“MSN”ことメッシ、スアレス、ネイマールのフィニッシュにつながってくる。

ビルバオはその中盤で攻守の要となるサン・ホセ、DFラインを押し上げながらビルドアップで大きな役割を担う21歳のラポルトの働きが重要になる。もちろん最後はチームの得点源であるアドゥリスが決めるかどうかで勝負が決まると言っても過言ではない。

■カップ戦ファイナルをいかに楽しむか?

ドルトムントとヴォルフスブルクは今季のパフォーマンスから見ればかなり拮抗した戦いが予想されるが、残る2つのカードは戦力差が割とはっきりしていることは確かだ。

しかし、何が起こるか分からないのがカップ戦の醍醐味であり、ファイナルまで登り着いた両者の対戦でもあるだけに、勝負は蓋を開けてみなければ分からない。

余談になるが、松本山雅の反町康治監督は海外サッカーを観るとき、戦力的には落ちると見られる側がビッグクラブに対していかに挑み、ジャイアントキリングを成し遂げられるかという視点で観ているそうだ。

まだ6月6日のCLファイナル(ユベントス×バルセロナ)を残すが、主要リーグの14−15シーズンの締めくくりとなる“3連戦”をしっかりと見届けたい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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