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オーストラリア冬季リーグ、シーズン終了。韓国のレジェンド・ク・デソン、最終シリーズで現役復帰

阿佐智ベースボールジャーナリスト
今シーズン、ABLの新球団、ジーロング・コリアの監督を務めたク・デソン

9回目のレギュラーシーズンを終えたオーストラリアンベースボールリーグ

 オーストラリアのウィンターリーグ、ABLは先週末をもってレギュラーシーズンの最終戦を終えた。9シーズン目を迎えた今シーズンは6球団から8球団へのエクスパンションを行い、それまでリーグ直轄だった各球団にオーナー企業をつけるなど、大きな改革に踏み切った。

球団数拡張と同時に、リーグのフォーマットにも手が加わった。各チームレギュラーシーズン40試合は変わらないが、東西2地区制を採用した。ABLでは経費節約のため、4連戦が基本なので、他地区のチームとは、ホームアンドアウェイではなく、ホームゲーム、ビジターゲームどちらか片方だけの対戦となった。

 先週末のシリーズで順位が決定。西地区は、元中日のディンゴことデーブ・ニルソンが監督を務めるブリスベン、元オリックスのマエストリのいるシドニー、DeNA勢の参加したキャンベラの順となり、ロッテ勢の参加した新球団・オークランドは最下位に終わった。

 東地区はパースが優勝、2位に西武勢の参加したメルボルンが続き、社会人野球HONDAが選手を留学させたアデレードが3位、同じく韓国人からなる新球団ジーロング・コリアが最下位に終わった。

韓国球界のレジェンド、現役復帰

ABL発足と同時にシドニーブルーソックス入りしたク・デソン
ABL発足と同時にシドニーブルーソックス入りしたク・デソン

 ところで、レギュラーシーズン最終シリーズでは、サプライズがあった。

 ジーロング・コリアの監督は、オリックスでもプレーしたク・デソン(具台晟)。韓国プロ野球在籍中にはシドニー五輪に出場、銅メダル獲得の立役者となり、その後、日本のプロ野球を経てメジャーの舞台にも立った韓国野球界のレジェンドだ。2006年に復帰した韓国プロ野球は2010年限りで引退したが、その直後にオーストラリアに移住、この年発足したABLのシドニーブルーソックスに入団している。ABLではその後5シーズンにわたってプレーを継続、2016年からはコーチを務めていたが、今シーズン、韓国人球団が発足するにあたって監督に就任した。

シドニー時代はボブルヘッド人形がファンに配布されるなど、チームの看板選手だった
シドニー時代はボブルヘッド人形がファンに配布されるなど、チームの看板選手だった

 選手集めに制限のある外国人球団とあって、成績は7勝33敗にという記録的な数字に終わったが、そういう中でも応援してくれたファンへの感謝の気持ちを込めてか、最終シリーズとなったブリスベン・バンディッツとのホームゲームの3戦目に彼は49歳にして4年ぶりのマウンドに登った。

 2対9と試合の趨勢はほとんどついた9回表から登板したク・デソンは不甲斐なかった投手陣に喝を入れるかのように、1イニングを四球ひとつ出しただけで無難に抑え、ひさかたぶりのピッチングを披露した。

 シーズンの短いウィンターリーグでは、第一線を退いた名選手がプレーすることは珍しくない。有名どころでは、往年の名投手、フェルナンド・バレンズエラ(元ドジャースなど)は36歳になった1997年のセントルイス・カージナルスでのシーズンを最後にアメリカ球界から姿を消すが、その後も、メキシカンパシフィックリーグのエルモシージョ・ナランヘロスに籍を置き、最終的には47歳で迎えた2007-08年シーズンにメヒカリ・アギラスの一員としてプロ最終マウンドに立った。

 ちなみにこの試合には、このABLのシーズン中に交通事故で大怪我をした元楽天のルーク・ファンミルがブリスベンのクローザーとして登板している。

今日からポストシーズン開始

 ABLのポストシーズンは、東西両地区の優勝チームと、各地区2位チーム、それに上記4チーム以外の最高勝率チームがワイルドカードとして出場する。

 まず、2位チームのうちの勝率の低い方と、ワイルドカードチームが、2位チームのホームで一発勝負のワイルドカードゲームを実施、その勝者とシーズン最高勝率チーム、そして残り2チームが3戦2勝制のプレーオフを勝率の高い方のチームのホームで行い、最終のチャンピオンシップに進む。

 チャンピオンシップも3戦制だが、第1戦の後は移動日なしで球場を変えて2,3戦目が行われる。どちらのホームで始めるかは、進出したチームのうち、レギュラーシーズンの勝率の高い方が任意に選ぶ。

 ワイルドカードは西地区3位のキャンベラが取り、今日メルボルンでワイルドカードゲームが行われる。

 ABLのポストシーズンゲームは全てネット中継される。

(写真は全て筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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