【JAZZ】見たことのない懐かしさを運ぶ個性派デュオ(ふたつゆ『カラーズ・オブ・モーメンツ』)
“うた”と“ピアノ”のデュオ・ユニット“ふたつゆ”のサード・アルバム。
バークリー音楽大学でスタートしたコラボレーションがもとになり、2011年にユニットを正式結成。
当初からの“季節とにほんごのうた”というコンセプションを踏襲したサウンドに磨きをかけて活動しているのが宮崎友紀子(ヴォーカル)と柳原由佳(ピアノ、アレンジメント)による“ふたつゆ”だ。
郷愁とノスタルジアを融合させたデュオの進化形
本作の白眉はなんといっても「たき火」である。
ごぞんじ、巽聖歌作詞、渡辺茂作曲の童謡だ。これを“ゆたつゆ”流にアレンジしているのだが、原曲のほのぼのとした冬の路地裏の風景が、ニューヨーク・ハーレムの雑然とした緊張感とないまぜになり、異次元の既視感を表出している。
“ふたつゆ”が具現しようとしている“にほんのうた”は、日本人が日本という環境のなかで生み出してきた言葉とメロディを、まったく逆のポジション、すなわち“裏”から再構築しようとしている気がする。
それだけの意欲と情熱が詰め込まれているから、懐かしく耳なじみのいい童謡なのに、心に引っかかって離れないのだ。
このアルバムに収録された“ふたつゆの童謡”を聴いた後では、季節に対する“色”の認識がガラリと変わってしまうだろう。いや、童謡というフォーマットに押し込めようとした古い日本人的な感覚を開放してくれるーーと言ったほうが正しいかもしれない。