茂木先生、今の難関大入試は結構「AO」的ですがダメですか?
脳科学者の茂木健一郎さんが、
と投稿して、話題になっています。
茂木さんが言われるAO入試とは、中堅以下の私大がよくやっている、やる気重視という名目でのザル入試、ではありません。
入試・教育や就活関連はよくキーワードだけが先行して議論がすれ違うことがよくありますので、ここは丁寧に。
なるほど、AO入試と言っても、やる気重視という名目によるザル入試ではなく、難関大でよく実施している学力重視型のAO入試ですね。
既存の入試については、以下のように批判されています。
そして、茂木さんは既存の入試では推し量れない高校生として以下の例を出しています。
なるほど。
尖った人材をさらに伸ばすためには既存の入試ではダメで、学力重視型のAO入試に、ということでしょうか。
私はこの方向性は賛成です。
ただし、実現には、難関大・準難関大と中堅以下の私大でそれぞれハードルがあります。
まずは難関大・準難関大から。
茂木さんが想定されている尖った人材像ですが、かなりレベルが高いですね。
こうした高校生は全国にどれだけいるのか、というツッコミもあります。
さらに言えば、こうした高校生の大半は茂木さんが言うところの「基礎的な知見」、まあ基礎的な学力は兼ね備えているのではないでしょうか。
それから、難関大・準難関大では、既存の一般入試でも、
「深く、遠く、非典型的な知性、学力を測定するもの」
に変化しつつあります。
たとえば、以前の記事「東大生が語る東大入試戦略~Z会東大個別指導教室プレアデス・イベントルポ」
にも書きましたが、東大入試はその典型。
「以下のような有名な言葉がある。これについてどう考えるか、50~70語の英語で記せ。
ただし、下の文をそのままの形で用いてはならない
People only see what they are prepared to see.」
「これは英語ができるだけでは解けない問題です。ユリウス・カエサルが『人は自分の見たいものしか見ない』という言葉を残したことを知っている方は、きっとその言葉を知る過程で様々な教養を身につけようとしていたはずですし、カエサルの言葉を聞いたときに様々に思い、感じた部分もあるはずです。したがって、東大英語では、受験生の教養、思考力が問われているといえます。具体的には『教養(日本語で考える)』『日本語で簡潔に表現できる』『日本語の表現を英語に変える』、この3点ができないと解答できません」(Z会東大個別指導教室プレアデス教室長・寺西隆行さん)
東大だけでなく、早稲田大は国際教養学部の日本史の試験で一部、英文を資料として出題。
昨年2014年の中央教育審議会はセンター試験廃止・「大学入学希望者学力評価テスト」の複数回実施を答申しました。
これまでの「知識偏重型」から、思考力などを評価する「知識活用型」への移行を目指すのが目標とされています。
この答申は、東大・早稲田大のみならず、他大学にも大きく影響し、変化していくことでしょう。
私は今の東大入試などを見る限り、茂木さんが言われるところのAO入試に近い形態となっていると思います。
それとも、
「あなたは自分を利口と思いますか?」
「毛沢東は現代中国を誇りにすると思いますか?」
など、ケンブリッジ大・オックスフォード大に出題されるような高度な口頭試問を想定されているのでしょうか?
もし、こうした口頭試問を想定されているにしても、現状の東大入試を想定されているにしても、今度は高校以前の教育で問題が出てしまいます。
そのあたりと、中堅以下の私大での一般入試全廃・AO入試導入での問題点は次回に続く。