【京都市右京区】京都で初公開&82年ぶりの公開など!橋本関雪の特別な展覧会が始まる
橋本関雪生誕140周年!3館共同開催による特別な展覧会が始まる
本日、2023年4月19日より、下記3館にて共同開催展覧会『橋本関雪生誕140周年 KANSETSU -入神の技・非凡の画-』が始まります。
- 白沙村荘 橋本関雪記念館(東山会場)
- 福田美術館(嵐山会場)
- 嵯峨嵐山文華館(嵐山会場)
日本画の巨匠・橋本関雪(1883-1945)は大正〜昭和期に京都画壇で活躍した画家です。
生誕140周年を記念した、京都で初の大規模回顧展となる今回、
- 白沙村荘 橋本関雪記念館では計43点
- 福田美術館では計64点
- 嵯峨嵐山文華館では計43点
と、3館を通して合計150点が展示されます。
内覧会(嵐山会場)にて一足先に鑑賞させていただいたので、そのハイライトをお届けします。
独自の文雅で壮大な芸術世界を完成させた橋本関雪
関雪は儒者の父の薫陶を受けて小さい頃から漢籍詩文を学んでいたため、中国の古典への深い理解と愛着を持っていました。
加えて、数十回にわたり中国やヨーロッパを旅し、その経験も自らの力に変えてきたため、他の多くの画家のように1つのジャンルには留まらず、歴史画から新南画、動物画まで、様々な作品を残しています。
実際、展示作品を鑑賞すると、例えば「女性」に注目しただけでも、和美人あり、中国美人あり、はたまた西洋画の裸婦像を彷彿とさせるような女性像ありと、あらゆる美人画を残していて驚かされました。
福田美術館
渡月橋から川沿いを歩いて約2分のところにある福田美術館では計64点が展示されますが、そのうち20点が初公開作品となります。
ギャラリーは3室ありますが、ここでは特に注目の作品をご紹介します。
京都で初公開&大変珍しい作品
まずは、優美に装いながらも、短剣を握りしめた「香妃戎装」。
戦争中に開催された特別文展に出品され、その後、関雪自ら衆議院に寄贈し、今も議長室に掛けられている作品です。
つまり、普段は私たち一般人が観ることはできない大変珍しい作品、なおかつ京都で初公開となります。
開館記念展以来の公開
「後醍醐帝」は、今まさに御所を脱出する後醍醐天皇を描いた、緊張感あふれるワンシーンです。
いななく声が聞こえてきそうな右隻の白い馬の「動」と、周囲を警戒するお供を携えつつ、石段をまさにそっと降りる瞬間の左隻の白い市女笠をかぶった後醍醐天皇の「静」の対比から、都落ちの瞬間の緊迫感が伝わってきます。
82年ぶりの公開
82年ぶりに公開された「俊翼」は、戦時を意識した作品です。
荒波におののかず翼を広げて飛翔する鷹を、海上を飛行する戦闘機に見立てています。
「猿の画家」との異名も
第14回帝展にて「玄猿」という作品を発表したのをきっかけに名声が高まり、「猿の画家」という異名をとるほど、制作依頼が相次いだ関雪。
しかし、この時期は奥さんが急死するという不幸もあり、どこか悲しみをたたえたような表情の猿や動物画が残されています。
当時は斬新な構図だった
屏風絵は右から左に物語が流れるのが普通なのに、「猟」は逆方向に画面展開しており、当時、斬新な構図として高く評価されました。
朱と群青のコントラストが美しい
老父に代わって男装して戦いに赴いた少女。上衣の鮮やかな群青と、兜の朱の房が目を引きます。
まだ戦地から帰る途中のため、右隻の男性は木蘭が女性だとはまだ知らない場面。木蘭は中国的なのに、背景は写実的に描かれています。
嵯峨嵐山文華館
続いて、福田美術館から歩いて約3分ほどの嵯峨嵐山文華館へ。
ギャラリーは1階と2階にあり、2階は120畳の大広間となっています。そして、日本の美術品は、本来、畳に座って観るものであることから、あえて作品の位置が低い展示ケースが採用されています。
依頼主への嫌味を漢詩に込めた
人気画家2人に依頼しているだけでなく、金箔などをたくさん使い、透かし彫りの金具飾りも使われているこの作品。
金に物を言わせて訪問者を驚かせたい依頼主の下心を見透かしていた関雪は、依頼主を快く思っていなかった模様。
どうせ依頼主には漢詩が分からないだろうと見越して、関雪が担当した漢詩部分に「この依頼主は何の教養もない」という嫌味を隠して納品したそう。
嵐山の夏の風物詩
嵐山の夏の風物詩といえば鵜飼。
鵜の背後には篝火が燃えたぎっており、金泥で描かれた華やかな篝火からはパチパチと爆ぜる音が聞こえてきそうです。
また、その火の光が鵜の羽にも映し出されている様子が、同じく金泥で描かれています。
漢詩への深い理解を持つ関雪ならでは
六曲一双の華やかな金屏風。
金屏風は高価なだけでなく技術的にも描くのが難しいですが、技術も自負も持ち合わせていた関雪は金屏風も多数手がけており、この作品では左隻に漢詩まで流麗に書ききっています。
漢詩を理解できる者の訪れを待っている
右隻に書かれた漢詩は、北宋の詩人・魏野が詠んだ「書友人屋壁」の一部で、その内容が描かれています。
魏野が友人に対して詠んだもので、「あなたがお金や地位や名誉に執着しないこと。ただただ静かに暮らしていること。あなたのそんな文人的な精神を深く理解しているのは私だけ」という主旨だそう。
そして関雪が画に漢詩を書いた理由は「漢詩の全文を知った上で、この作品を観て欲しい」というメッセージとのこと。
古典の豊かな教養を背景として描き出された関雪の作品の数々。漢詩の知識がなければパッと理解することは難しいですが、今回の展覧会ではこうした背景や工夫に重点を置いて解説されているので、関雪の芸術を深く味わいやすくなっています。
『橋本関雪生誕140周年 KANSETSU -入神の技・非凡の画-』
会期:2023年4月19日〜7月3日
東山会場(白沙村荘 橋本関雪記念館)
10:00〜17:00(休館日5月31日)
1,500円
嵐山会場(福田美術館、嵯峨嵐山文華館)
10:00〜17:00(休館日5月30日)
福田美術館 1,500円
嵯峨嵐山文華館 1,000円
二館共通券 2,300円
※東山会場、嵐山会場それぞれの半券提示で団体料金に割引