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【自民党総裁選】地方党員票の45%を獲得した石破茂は“善戦”したのか

安積明子政治ジャーナリスト
総裁選で互いの健闘を称えあう2人(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

勝利した安倍首相サイドに危機感

 自民党総裁選は安倍晋三首相が329票の議員票、224票の党員算定票の計553票を獲得し、3選を果たした。議員票73票、党員算定票181票の石破茂元幹事長をダブルスコアで下し、現職ならではの強さを見せつけた。

 しかしながら「石破氏は善戦した」との声が強く、安倍首相の近辺では当惑、あるいは石破氏への警戒の声すら聞こえてくる。そのひとつが「せいぜい50票しか獲得しないだろう」と見られていた議員票だ。積み増し分の約20票は、安倍首相の批判票とも受け取られる。

 だが安倍首相サイドは「議員票の8割、地方票(党員算定票)の6割」を目途としていた。そういう意味では石破氏が73票の議員票(18%)を獲得しても不思議ではない。むしろ懸念するのは石破氏が全体の45%を獲得した党員算定票だろう。議員票の割合に比べてかなり水準を低くしたにもかかわらず、安倍首相は55%しか獲れず、目標に達しなかったからだ。

 さて石破氏が「地方に強い」と言われるのは、6年前の総裁選の第1回投票で165票の地方票を獲得し、安倍首相の87票の2倍近くという断トツの強さを見せつけたからだ。今回の総裁選でも石破氏はそれを十分に自覚し、地方を重点的にまわってきた。今年2月には地縁のない大阪で講演会を開いて1000人も動員。日本維新の会に近いために自民党大阪府連と距離があった安倍首相を焦らせた。

都道府県別の党員算定票の数を見てみると

 しかし大阪の党員算定票は安倍首相が1万1813票で石破氏は7620票。石破氏が党幹事長時代に県知事選を采配した滋賀県でも、安倍首相が4056票で石破氏が2991票という結果で、安倍首相が勝っている。

 また石破氏は総裁選で農政重視、ローカルからの改革を訴えたにもかかわらず、農村地域で票がさほど伸びていない。安倍政権が進めるTPPに反感が強い北海道や、2016年の参議院選で自民党が負けた青森、岩手、宮城、福島などでも、党員算定票は石破氏は安倍首相に及ばなかった。

 このように見ていくのなら、石破氏は全体として一定以上の党員算定票は確保したものの、主張する政策を十分に地方に浸透させることができなかったのではないか。確かに石破氏は総裁選で“善戦”した。しかしそれが将来の勝利に必ずしも繋がるとは限らない。

自民党本部が公表した総裁選に関する数字をながめると、石破氏に立ちはだかる壁はなお厚いと感じざるを得なかった。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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