YouTube、インスタグラム、そしてファン。50歳になった酒井法子の今
5月にYouTubeチャンネル「1億のスマイル」を立ち上げた歌手・女優の酒井法子さん(50)。8月27日から初の朗読劇「ラストダンスは私に」(9月2日まで、東京・ニッショーホール)に出演するなど新たなチャレンジを続けています。来年でデビュー35周年。SNSでのバッシングが社会問題になる中で「コメントが荒れない」理由。そして、今強く感じているファンへの思いとは。
YouTubeの意味
YouTubeに関してはどこまでも新しい挑戦をさせてもらっています。未体験空間に飛び込ませてもらったという感じです。
まず、展開がすごく早いなと感じています。動画自体のテンポも、更新のサイクルも。その中で見てくださっている方にいかに楽しんでもらうか。今の時代のテンポ感、スピード感の中でそれをお届けするのはすごく刺激的なことだなと。
そして、特に今は新型コロナ禍ですし、動画にメッセージを込めてやっているつもりなので、そこに賛同してくださる方がいらっしゃるのもありがたいですね。周りのパワーを感じながら、それが大きなうねりになっていく。そういう場でもあるんだなと強く認識しています。
あと、私も息子がいるんですけど、息子の友だちも私のチャンネルを楽しみにしてくれているみたいで(笑)。あの子たちはリアルな言葉を使いますからね。面白かったら面白い。そうでなかったらハッキリ言いますから。
その判断基準の中で楽しみに見てくれているのは純粋にうれしいですし、その世代にも刺さっているならば、やった意味もより一層あったのかなと思います。
ファンへの思い
この歳になると、できれば周年だとか、誕生日だとかはスルーしたい気持ちもあるんですけど(笑)、事実として来年で35周年なんですよね。
お父さん、お母さんの影響で私のことを好きになってくださった若い方がディナーショーに来てくださったりもしてますし、そういうことがあると、改めて35周年の意味を噛みしめたりもしています。
もちろんコロナ禍でもありますし、先のことを考えにくい時代でもあるんですけど、できれば皆さんの近くに行って歌いたい。待ってくださる方が各地にいるなら、そこに出向きたい。それが一番の願いですね。
それと、応援し続けてくださっている皆さんのありがたさを今また新たな形で知るというか、そういう部分もありまして。
今のご時世なのでインスタグラムもやってまして、日々自分が思ったことを日記のように綴っています。そうすると、ファンの方々が生の声としてたくさんコメントを残してくださいます。
文字を見ているだけでも「長く応援してくださっているんだなぁ」ということをつくづく感じますし、本当にこんな空間があるのかと思うくらい温かいコメントで埋め尽くされているんです。
もちろん、世の中の人みんなが私のことを好意的に見てくれているわけではないですし、いろいろな声があることも分かっています。ただ、私のSNSのコメント欄には攻撃性のある言葉が全く書き込まれないんです。
今は個の時代ですしスマートフォンがその人の嗜好をキャッチして好きなものだけを提示してくるから、興味がないものに関しては存在すら入ってこない。そういう要素も関係しているのかもしれません。
ただそれに加えて、ファンの方の力というか、ここまでやってきて今もなお応援してくださっている方々の応援は本当に強くて、近い。それを感じますし、もう、親戚というか、肉親の集まりみたいな感じになっているのかもしれないなと。
そこにアンチ的なコメントを書くのは、例えるなら、親戚が集まっているところにいきなりドアを開けて「あんたのところの法子さんのことなんだけど!」と言いに行く感じに近いのかなと(笑)。
私がアンチの人の立場でもそれをやるのは相当面倒くさいだろうなと思いますし、否定的な声がないことが良いというよりも、それだけ強く、温かい方々に応援してもらっているんだなということにありがたさを感じています。
無限の扉
気の早い話ですけど、35周年の次は40周年。そうやって年月を重ねていって、これから何ができてるんだろう、何をしていたいんだろう。そう考えた時に、やっぱり出てくるのは「歌っていたい」ということなんですよね。
今回、朗読劇という初めてのことにもチャレンジさせてもらいますし、そこでは越路吹雪さんの役をさせてもらいます。
歴史の1ページを作られた方が歌ってらっしゃった曲を歌わせてもらうことにもなりますし、そういった経験をしないと向き合えなかった日本語の美しさも感じています。ここでも、一つ一つ新たな刺激をいただいています。
できればですけど、歳を重ねても体も保っておきたいですしね(笑)。そう思って、7年前からパーソナルトレーニングも本格的に始めました。今は毎日何かしらトレーニングをしているという感じです。
トレーニングをしているといろいろなことも思うんです。不器用だし決して要領良くはできないかもしれないけど、それでも「もう無理…」と思ったところから「あと一回」やる。この気持ちがあれば、無限の扉を開くことができる。そんなことをトレーニングから学んでいる気がしています。
ただ、本当は食べる物もいろいろ節制した方がいいんですけど、甘い物も好きですし、炭水化物も好きですし、お酒も飲んじゃいますし…、ストイックには全くなりきれてないですね(笑)。
だけど逆に言うと、その甘さの分だけまだ“伸びしろ”があるということなのかなと…。だいぶ都合のいい解釈だとは思いますけど(笑)、少しずつでも積み上げて、一歩ずつでも進んでいけたらなと思っています。
(撮影・中西正男)
■酒井法子(さかい・のりこ)
1971年2月14日生まれ。福岡県出身。オーディション企画「'86 ミスヘアコロン・イメージガール・コンテスト」(主催・資生堂)をきっかけに芸能界入り。87年に「男のコになりたい」で歌手デビューを果たす。日本のみならず中国語圏でも人気を集め、92年には初の海外公演として台北市でコンサートを開催した。また、女優としてフジテレビ「ひとつ屋根の下」、日本テレビ「星の金貨」などのドラマにも出演する。今年5月にはYouTubeチャンネル「1億のスマイル」を開設。初挑戦となる朗読劇「ラストダンスは私に」(8月27日~9月2日、東京・ニッショーホール)では宝塚歌劇団の元トップスターで昭和を代表する歌手・越路吹雪さんを演じる。