フルトン効果?! 9勝9KO1分けとなったスーパーフェザー級
自らを"Gifted"と呼ぶ21歳のジュリアン・ゴンザレス。"Gifted"とは、神から特別な才能を与えられた、という意味である。
生まれも育ちもペンシルバニア州リーディングであるゴンザレスは、4回戦を5度経験し、全てファーストラウンドKOを飾った。6回戦に上がり2戦目でドローを味わったが、自信が揺らぐことはなかった。
井上尚弥との対戦が噂されるWBC/WBOスーパーバンタム級チャンピオン、スティーブン・フルトン・ジュニアとのスパーリングで更に己を磨いた。
ゴンザレスの9戦目の相手は、9戦全勝のサウスポー、ロサリンド・モラレス。無敗同士の対戦となったが、ゴンザレスは格の違いを見せた。
序盤からスピードの差は明らかだった。第4ラウンドに狙い澄ました右フックをぶち込んで、同27秒に派手なノックアウトを飾った。
9つの勝利がオールノックアウトという戦績のゴンザレスは言った。
「あの終わり方には驚かない。モラレスはパワーがあるが、こちらだってそうだ。ただ落ち着いて、彼のミスを見逃さないだけでよかった。モラレスは右ストレートを多用していたが、僕には右も左もある。ノックアウトすることはそれほど重要ではない。いずれは判定勝ちもあるだろう。自分を信じて、仕事をこなすだけだ」
ジャッジ3人全員が、3回終了までを30-26でゴンザレスと採点していた。
この試合のリングサイドでは、アレン・スミス氏がモラレスに熱い視線を送っていた。スミス氏は20年ほど前、モラレス一家を助けた人物である。
ペンシルバニア州に向かうモラレス家の車には、10歳のロサリンドと彼の母親、そして妹が乗っていた。車はテネシー州ナッシュビルで立ち往生してしまう。スミス氏は車の修理代を払い、一家を6日間自宅に住まわせてくれた。車が修理不能と判断された際には、親戚宅まで辿り着けるようにと、3人分のバスのチケットを購入してくれた。
縁あって、モラレスとスミス氏は先月再び繋がる。モラレスは恩人の前で勝利したかったであろう。しかし、およそ20年ぶりの再会も、神からのギフトだったのではないか。