焼きめしもうまい博多ラーメン筆頭株「塩原いってつ」
今回は福岡市、特に南区エリアの豚骨ラーメンの話をする。例えば1965(昭和40年)創業で60年近くたった今も輝きを放ち続ける「一九ラーメン 老司店」(老司)、路地裏でコアな豚骨ファンに支持される“もう一つの節ちゃん”「元祖赤のれん節ちゃんラーメン 野間店」(野間)など、福岡出身者に「あなたのソウルフードは?」と聞くとかなりの確率で挙がる豚骨ラーメン界の重鎮たちが南区にそろう。また惜しまれつつ閉店した100円ラーメン「勝龍軒」(野間)、「豚珍館」(向野)なども豚骨ラバーたちが懐かしみ、今なお熱く語る郷愁豚骨だ。そんな愛すべき福岡市南区のラーメン店でもう一つ、「焼めしも激うま!」で知られ、今昔存在感を放つ名店がある。
そう「塩原いってつ」だ。
「塩原いってつ」の大将・森下和年さん(1957年福岡市出身)は、幼い頃から長浜屋台に親しんで育ち、18歳からラーメンの道へ。「ガンソ」(=元祖長浜屋)や「一心亭」など名店で修業を積み、2001年に自身の店を福岡市・塩原に開業した。ラーメン職人歴は約半世紀。まさに長浜ラーメンの生き字引的な存在で、筆者も事あるごとに店を訪れ、豚骨史に刻むべく森下さんに話を聞いてきた。
「塩原いってつ」は塩原本店に続く2号店を今年2024年4月、約1km離れた大橋駅近くに開業。森下さんは現在アドバイザー的立場となり、実際に厨房に立つ機会は減ってしまったが、それでもラーメン、焼きめしの旨さに変わりはない。本店、大橋店の写真を交えつつ、「塩原いってつ」の魅力を紹介する。
以前塩原本店を訪れた時、森下さんにスープ室を特別に見せてもらった。寸胴からはみ出ている金網は、豚骨が鍋底で“あたらないよう(焦げ付かないよう)”にするため。また骨を取り出すときにも便利なのだ。職人の知恵が詰まった道具。
古の長浜ラーメンの作り方を踏襲しながら、より上質な豚骨を選び、部位も配分もしっかり数値化。雑味や臭みが出ないようより丁寧にスープを取ることをモットーとしている。
「豚頭5kg、くるぶし15kg、背骨10kg、皮5kg、背脂5kgが研究の末、辿り着いた配分。1〜3番スープまで取り、状態を見極めながらブレンドしています」と惜しみなく話してくれた森下店主。
スープはあっさりとした味の中にも幾重にも広がる深いコクがある。カエシには福岡志免町「フジマサ醤油」を使用。豚骨スープの旨味を見事に引き出しほのかな甘味を添える。
麺は老舗製麺所「真鍋製麺」の細ストレートを取り寄せ、塩原本店では灯油ボイラーの茹で釜を使用。森下さん自身は熟練の技を要するざる網で湯切りする。クルリ、クルリと麺を宙に舞わせるスタイルだ。
そして「塩原いってつ」といえば、焼きめしでも有名。ラーメンと一緒に頼む“焼きめし率”は8割を超える。中華鍋の鍋肌をうまく使いながらパラフワに仕上げ、ラーメンのスープとよく馴染むよう、ラーメンダレで味付けされてあるのもポイント。名作である。
新旧をうまく融合させ、新たなファンを獲得している「塩原いってつ」。「塩原本店」「大橋店」どちらを訪れてもいいが、絶対に忘れてはならないのは「焼めしもマストで」ということだ。
【博多らーめん 塩原いってつ 大橋店】
住所:福岡市南区大橋2-11-14
電話:092-555-7357
時間:11:00〜24:00(LO23:30)
休み:火曜
席数:22席(カウンター8、テーブル14)
駐車場:なし、近隣有料パーキング利用