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宿敵に傾くも移籍破談、ジェコはローマ主将を続投すべき? OBは「1点決めれば問題なし」

中村大晃カルチョ・ライター
9月19日、ヴェローナとのセリエA開幕戦でのジェコ。出場機会はなかった。(写真:ロイター/アフロ)

涙ながらにバルセロナを去ったルイス・スアレスは、アトレティコ・マドリーに移籍した。そのアトレティコからは、アルバロ・モラタがユヴェントスに加入している。

世界が注目したL・スアレスとモラタの移籍で、もうひとりの選手の去就も決まりつつある。ローマのエディン・ジェコだ。ユーヴェのアンドレア・ピルロ新監督が熱望したと言われ、夏を通じてイタリア王者への移籍が取りざたされてきた34歳は、ローマに残ることが濃厚となった。

◆過去の移籍破談との違い

ジェコがローマ退団に近づいたのは、今回が3度目だ。2018年1月にチェルシー、昨年夏にインテルへの移籍に迫った。だが、2度あることは3度ある。ジェコはまたも、家族が愛するイタリアの首都から引っ越ししなくて済むことになりそうだ。

ただ、過去2回と違う点がひとつある。キャプテンマークだ。これまでは、ダニエレ・デ・ロッシとアレッサンドロ・フロレンツィが主将を務めるチームのエースという立場だった。だが、今回はジェコ自身が腕章を巻く存在だ。

そのキャプテンが、ローマのファンが憎むユヴェントスへの移籍に向かっていた。わずか数日前までは、取引確実とも言われていたのだ。

ローマが後釜として狙ったアルカディウシュ・ミリクとナポリの退団を巡る交渉と、ミリクのフィジカルコンディションに対するローマの懸念次第で、ジェコは白と黒のユニフォームに袖を通していた。

当然、ローマの一部サポーターには、快く思わない者もいるだろう。そこで浮上するのが、「ジェコにまだキャプテンマークを託すのか?」という疑問だ。

◆チームとレジェンドは続投希望

9月24日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙によると、サポーターはジェコ批判派と擁護派に二分している。だが、チームはジェコの主将続投を望んでいるそうだ。仮に主将交代となれば候補となるロレンツォ・ペッレグリーニも、真っ先にジェコが腕章を巻くことを希望しているという。

OBたちからも、ジェコ続投で問題なしとの声が相次いだ。

レジェンドのロベルト・プルッツォは「腕章ではなく選手の意識の問題」と、ジェコが「残留で完全に納得し、ローマのために集中しなければいけない」と述べている。

ジャコモ・ロージも「まだ彼の番だと思う」とコメント。「確かにユーヴェに向かうところだったが、行かなかった。それにどれほど近づいたかも見る必要がある」と、問題視する必要はないとした。

ローマ出身のユヴェントスOBアンジェロ・ディ・リーヴィオは、移籍話は終わったことだと指摘。「ローマで最もカリスマティックな選手」であるジェコがキャプテンを務めるのが正しいと話している。

フランチェスコ・グラツィアーニも、「サポーターは彼に愛情がある。すべて忘れるのに、1ゴールで十分さ」と賛同。開幕戦でベンチに座ったジェコを試合に出場させることが何より大切と述べた。

ローマ専門サイト『forzaroma.info』のアンケートでは、約2000名のユーザーのうち、7割弱がジェコのキャプテン続投に賛成と回答している。

◆本人のモチベーションは?

ローマは新オーナーのダン・フリードキン氏に買収されたばかり。そして新オーナーには、大金を投じてチームを改革し、短期間でタイトルを狙えるチームにする構想がないとみられる。成功は目指すが時間が必要、つまりサッカー界でもよく言われる「ローマは一日にして成らず」だ。

一方、年齢を考えれば先のキャリアが長くないジェコは、ドイツとイングランドで手にしたトロフィーをイタリアで獲得できていない。9連覇中の王者への移籍は、スクデットへの最大の近道だった。そのユーヴェ移籍が消滅となれば、モチベーションが心配されるのは避けられない。

加えて、一部では、パウロ・フォンセカ監督との関係を懸念する声もある。そして指揮官の立場も盤石ではない。24日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙は、フリードキンが疑念を強め、マッシミリアーノ・アッレグリを招へいする可能性を報じている。

ローマは0-0で引き分けたエラス・ヴェローナとの開幕戦が、選手の登録ミスという失態から没収試合とされた。クラブは上訴したが、処分が覆らなければ、今季は黒星発進となる。開幕早々、ローマは芳しくないニュースが続いているところだ。

それだけに、残留が確定したら、ジェコへの期待と重圧は大きくなる。ローマっ子たちが受け継いできた腕章を巻いて半年強。ジェコは、キャプテンとして愛するローマをけん引するのか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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