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消費税率アップの住宅購入、果報は寝て待て、か

櫻井幸雄住宅評論家
消費税率アップ、寝て待つか急ぐか。ローン控除の拡充次第だ。写真は筆者家族が撮影

 来年10月1日から消費税の税率が8%から10%に上がる。残り1年を切っているので、駆け込み需要(消費税率が8%のうちに買い物をしようという動き)が起きても不思議ではない。実際、金額が大きい住宅では、消費税率が上がる度に駆け込み需要が起きていた。

 消費税が導入された1989年(最初は3%)の際の駆け込み需要はすさまじかった、その後、3%から5%に上がったときも大きな駆け込み需要が起きた。

 ところが、前回消費税が5%から8%に上がった2014年のときは、駆け込み需要が小さかった。それは、消費税が上がる分、住宅ローン控除の額を引き上げ、すまい給付金などの対策が講じられたから。消費税の税率が上がっても、それを上回る還付が見込めるので、「あわてて買わなくてよい」という動きが出たわけだ。

景気対策で、住宅ローン控除を拡充

 住宅ローン控除を拡充するのは、家を買う人を援助する目的もあるが、それ以上に景気悪化を防ぐ目的が大きい。

 というのも、住宅は多くの人に仕事を発生させる商品であり、売れ行き悪化は景気に悪影響を及ぼすからだ。

 たとえば、マンションをつくって売れば、不動産会社、建設会社が儲かるだけでなく、コンクリート、鉄骨の需要が生じ、電気・ガス・水道関係の仕事も派生する。設備機器、家電製品、家具、カーテンが売れるし、引越も増える。損害保険、生命保険も需要が増す、といった具合だ。

 そのため、消費税率アップで住宅の売れ行きが落ちると、幅広い分野で仕事が減り、景気を悪化させる要因になってしまう。だから、住宅の売れ行きが落ちないように、住宅ローン控除の拡充が行われてきたわけだ。

15年住宅ローン控除の可能性も

 今回の消費税率アップでも、住宅ローン控除の拡充が予定されている。その内容は、年末の税制改正大綱で発表されることになりそうで、現時点では予測部分が多い。

 その予測で注目したいのは、「10年間の控除期間を15年に延ばす」可能性があること。現在、住宅ローン控除の規模は、「10年間最大400万円」。つまり、毎年40万円を上限に10年間控除があるわけだ。

 住宅ローン控除は、1972年に始まった住宅取得控除制度が始まりで、当初の控除限度額は毎年2万円までを3年で、最大6万円。それが、20万円×5年で最大100万円、25万円×6年で最大150万円というように拡充されてきた歴史がある。過去最大規模は、15年にわたり最大587万5000円だった。

 だから、15年×40万円で最大600万円も無茶な額ではない。もう少し額を下げ、15年×35万円とか15年×30万円の規模でも、15年間所得税を払わないことになる、という人は多いだろう。15年が子育て期間に当たる世帯であれば、余計にありがたい。

 15年にわたる住宅ローン控除が実現すれば、「だったら、消費税が上がった後に買いたい」という人も出てくるはずだ。

1LDKでも住宅ローン控除が使えたら

 もうひとつ、これが実現するといいのに、と私が考えている策がある。

 それは、「1LDKでも住宅ローン控除が使えるようになる」という拡充だ。

 現在、住宅ローン控除が適用される住宅には、「床面積が登記簿面積で50平米以上」という条件がついている。この条件、3LDKであればマンションでも一戸建てでも余裕でクリアできる。2LDKのマンション住戸でもクリアできるケースが多い。しかし、1LDKより小さな間取りでは、まず面積が足りない。

 単身者や夫婦2人暮らしに向く1LDKは、30平米から40平米程度の広さになるのが普通で、登記簿の床面積50平米に満たない。だから、住宅ローン控除が使えないわけだ。

 この条件は、「ゆとりある広さの住宅を増やして行こう」と考えられていた昭和時代に生み出されたもの。当時、日本の住宅は欧米から「ウサギ小屋(のように狭い)」とやゆされたことがあり、脱ウサギ小屋を目指していた。その時代の名残といえる。

 ところが、現在、海外の住宅を見渡すと、大都市部を中心に1人暮らしのワンベッドルーム(1LDK)が増え、“ウサギ小屋”サイズの住宅が珍しくなくなっている。50平米以上にこだわる必要はすでにない。

 それに、3LDKを購入したファミリー世帯は住宅ローン控除を使えるのに、1LDKを購入したシングルやDINKSが住宅ローン控除を使えないのはおかしい。子どもがいる夫婦だけを優遇する差別ではないか、とさえ思える。

 50平米未満のマイホームを買うシングルやDINKSでも、長期の住宅ローン控除が使えるようになったら……その夢が今回実現するのか、はたまた夢のままなのか。これから発表される住宅ローン控除拡充の内容に期待したいところだ。

これから家を買う人はむしろ幸運

 もし、住宅ローン控除の拡充が期待ハズレなら、来年10月1日までに入居できる物件、もしくは来年3月末までに契約できる物件を買えばよい。それなら、消費税率8%が適用となる。

 一方、住宅ローン控除拡充の恩恵が大きいと判断できれば、来年10月1日以降入居の物件を来年4月以降の契約で買う。これで、消費税は10%になるものの、大型の還付を受けることができる。

 今、住宅探しをしている人は、自分にとって都合のよいほうを選択可能。それは、滅多にない幸運といえるだろう。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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