藤澤ノリマサ ポップオペラ、松井五郎、ソングライター、舞台…進化を続けた15年。「まだ発展途上」
ポップオペラという独自のジャンル、スタイルでデビューし15年
ポップスとオペラの歌唱を融合させた“ポップオペラ”という独自のジャンル、スタイルを確立させ、進化を続けてきた藤澤ノリマサがデビュー15周年を迎えた。昨年11月に発表した7枚目のフルアルバム『Changing Point』は、前作『La Luce-ラ・ルーチェ-』に続いて、作詞家・松井五郎をプロデューサーに迎え、新境地を切り拓き、挑戦し続けるその姿を作品に残した。15周年を迎えての心持ち、そして4月30日の東京を皮切りに大阪、北海道で行なう“Evolution”=進化と名付け、アーティスト藤澤ノリマサの“その先”をファンに提示する『藤澤ノリマサ 15th Anniversary Concert2023〜Evolution〜』についてインタビューした。
メジャーデビューできたことで満足していたデビュー当時。「それではダメだと気づき、息の長い歌手になろうと思った」
「濃い15年でした」――15年を振り返って、と聞くとまずそう語ってくれた。
「色々な人との出会いがあって今の僕がいる。オーケストラとのレコーディングやコンサートを開催したり、上海万博や海外で歌う機会に恵まれたり、ファンクラブイベントでラスベガスでも歌えたり、デビューしていなければできない経験をたくさんしてきました。本当にファンの皆さんとスタッフに支えられた15年です。色々なスタッフとの出会いが藤澤ノリマサという歌手を育ててくれました」。
とにかくデビューしたいという強い思いを抱いていた藤澤は「正直、当時はメジャーデビューできたことで満足していたかもしれません」と振り返った。「でもすぐに違うと気づき、そこからは長く歌い続けることができる歌手になろうと、シングルよりアルバムが売れる歌手になりたいとよく言っていました。今そうなれているかといえばわかりませんが、こうやって今も、アルバムを世の中に出せることの幸せを噛みしめています」。
「まだ発展途上。これからもっと貪欲に色々な音楽を吸収して、上のステージ行きたい」
音楽への情熱は日に日に増すばかりだ。藤澤は常々、これまでのステージでは一度も100%の出来だったことはないと自己採点を常に厳しく設定している。そうやって歌い続けてきた15年だった。
「まだ発展途上。何か夢を掴むともっと上に行きたくなるのは人間の真理で、僕のコンサートの最高キャパはBunkamuraオーチャードホールで、そうすると次はNHKホールでやりたくなる。夢を持っていないと、ただ衰退していくだけなので、常に上を目指していかなければいけないと思います。これからももっと貪欲に色々な音楽を吸収して、上のステージへの階段を上っていきたいです。コンサートは自分で結構いいできだったと思っても、客観的に見るとそうでもなかったりするんです。その逆も然りで、だから自分の指標ってあまり当てにならないというのが本音です(笑)」。
作詞家・松井五郎と出会い「音楽の世界観がガラッと変わった」
貪欲に色々な音楽を求めていく中で出会ったのが作詞家の松井五郎だ。全曲作詞を松井五郎が、作曲を藤澤が手がけたオリジナルフルアルバム『La Luce-ラ・ルーチェ-』を2021年5月に発売。ソングライターとしての才能をさらに磨きあげ、ポップオペラではなく、ポップスのボーカルスタイルで聴かせてくれている。そして“二人のポップス”は、昨年のアルバム『Changing Point』へと続いていく。
「松井さんと一緒に音楽作りをさせていただいて、音楽の世界観が変わりました。職業作家としてこれまでに様々なアーティストに、3500曲以上提供されていて、いつもそのアーティストになり切って書いているとおっしゃっていました。僕に対しても『藤澤を見て書いている』っておっしゃってくださって、自分が知らない自分の引き出しを開いてくれました。そういう意味で世界観が変わりました。『でもまだ開いてない扉がある』と言ってくださって、『Changing Point』というアルバムを制作しました。松井さんには『「La Luce-ラ・ルーチェ-」は内省的なことを描いたものが多かったので、「Changing~」ではそれは禁止で』と言われて、8割が詞先で、松井ワールドに引き込まれました。この作品は前作よりもさらにバリエーションに富んだ内容で、色々な音楽性を感じていただけるはずです。松井さんからは『藤澤は歌手というよりもメロディメーカーだよね』という言葉をいただけました。メロディにもノリマサ節はあるけど、そればかりにならないように研究しながら作っていきました」。
「松井さんの歌詞の先にメロディがある。そこに導いてくれる」
詞先で曲を書きながら、言葉がメロディを連れてくることに気づいた。
「詞をきちんと理解した上で曲を書くと、メロディがその歌詞に書いてある気がするんです。導かれるというか。松井さんの歌詞は情景描写も含めて、行間から何かを物語っている感じが伝わってくるので、それを丁寧に掬い上げるようにメロディを作っています。だから曲先の時は逆に書けなくなってしまって」。
ソングライターとしても注目を集める
これまでも様々なアーティストに楽曲提供してきたが、ソングライター藤澤ノリマサとしての活動がますます増えてきたという。
「もちろんコンペですが書いてみない?と言って下さる方もいて。ただソングライターはソングライターなので『歌手として書くのではなく、ソングライターとして歌手の部分を一度捨てて書くことも大事なんだ』って松井さんに言われたことがあります。自分が歌うと思うと、どうしても自分が歌いやすい方向にいってしまいがちで。でも僕は今までSMAPさんやSixTONESの森本慎太郎君が、メインボーカルだったスノープリンス合唱団などに曲を書かせていただいたこともあるのですが、人の曲を書く時は早いのですが、自分の曲って自分が歌うから、すごく難しく考えてしまいます」。
自信になったKANから言葉
ロックもポップスも、ジャズもレゲエももちろんクラシックも歌う。色々なジャンルの歌を歌い、多くの人を楽しませてきた。ソングライターとしても実績を残し、この15年の中で色々な武器を手に入れた。
「少し前にKANさんのラジオ番組に出させていただいた時、ポップスのアルバムを出してソングライティングをやっている今の僕を見て『時間がかかるかもしれないけど、また新しいファン層に広がっていくはず』と言っていただけて。『ノリマサ君にしか歌えない歌がここ(アルバム『Changing Point』)にはあるね』って。『普通に歌ってもクラシカルな要素はどこかに散りばめられているので、やっぱりそれはオリジナリティだと思う』ということも言っていただけて、自信になりました」。
「ライヴハウスのような距離感で、みなさんと一緒に歌ったりコール&レスポンスをやってみたい」
2021年には舞台『RAST RAIN FISH』でストレートプレイで役者にも挑戦。貪欲に“表現”というものを追求している。どんなジャンルの歌も歌え、曲も書け、どんなアプローチのコンサートもできる、それが藤澤が15年積み重ねてきて手にした圧倒的なオリジナリティだ。
「音楽人でいたいという思いと共に、表現力を舞台で培って、音楽に生かすことができたらという気持ちがあって挑戦しました。でもミュージカルは経験していないのに、なんでいきなりストレートプレイ?って言われたりもしました(笑)。マルチプレイヤーに憧れます。ポップオペラでデビューしたので、それがいいと言ってくださるファンが多いのも事実だし、それは並行して歌っていきたい。もちろんポップスを聴きたい、もっとクラシカルなものを、という人もいます。でも僕が歌いたいものを歌っていくことが大切だと思っています。だから15周年記念コンサート“Evolution”の選曲で悩んでいます(笑)。松井さんと作り上げた2枚のアルバムの曲を中心にすると、15周年記念ではなくなるし、初期のナンバーも歌いたいので、そのバランスが難しいなって。ライヴハウスのような距離感でみなさんと一緒に歌ったり、コール&レスポンスもやってみたいんです」。