日本版竜巻スポッター
竜巻注意情報 9割が空振り
きょう(4日)、兵庫県南部や東京地方で竜巻などの激しい突風が発生したとの情報が寄せられ、神戸地方気象台は8時9分、兵庫県竜巻注意情報を、気象庁は14時14分、東京都竜巻注意情報を発表しました。
竜巻などの激しい突風が発生する可能性が高まると、気象台から竜巻注意情報が発表されます。その数は一年間に全国で約600回に上り、今年もすでに242回(8月12現在)を数えます。
しかし、竜巻注意情報が発表されても、実際に竜巻などの激しい突風が発生するのは5~10パーセント程度で、9割が空振りです。
また、竜巻は一年間に約25件(海上竜巻を除く:2007-2014)発生しますが、そのうち竜巻注意情報が発表されたのは20~30パーセントで、竜巻の見逃しも非常に多いのです。
日本版竜巻スポッター
このところ、突風被害の報道が増え、竜巻注意情報の認知度は高まってきたように思いますが、まだまだ有益な情報とは言い難い状況です。
そもそも、ごく狭い範囲に発生し、寿命が短い竜巻を予測することは気象観測網が張り巡らされた現代でも、とても難しい。多くの人が当たると感じるような予測ができるようになるのは、10年や20年先のことになるでしょう。それまで、手をこまねいているわけにもいきませんが。
そこで、昨年(2014年)9月から、目撃情報を活用した竜巻注意情報の発表がスタートしました。今年は初シーズンになり、今回のほかにも8月13日熊本県や栃木県、8月17日神奈川県に発表された竜巻注意情報は目撃情報が寄せられたことによるものです。
竜巻(トルネード)大国の米国ではストーム・スポッター制度を導入し、竜巻警報の発表に活用しています。スポッター(spotter)とは専門知識を持った監視員・観測者のことで、目撃情報をいち早く気象機関に通報します。人の目を使った究極の気象観測網とも言えるでしょうか。
実際、一度竜巻が発生すると、近隣の別の場所で竜巻が発生することがあります。つまり、一つの目撃情報が状況の把握や予測に役立つのです。
現在、日本版竜巻スポッターは全国の気象庁職員のほか、警察や消防など関係機関に限られています。しかし、人の目は少ないよりも多い方がより効果が期待できます。
しかし、スポッター制度をさらに広げた場合、根拠のない情報や間違いをどう見分けるのか。言うまでもないことですが、常に正しい情報が集まるとは思えません。米国のように、多くの人に気象の知識を深めてもらい、スポッターを増やす取り組みが必要になるでしょう。
より効果的な竜巻注意情報にするためには、危険をことさら強調するような興味本位の報道ではなく、確かな知識を伝えることが大切だと思っています。
【参考資料】
気象庁:竜巻等の突風データベース
気象庁:目撃情報を活用した竜巻注意情報の提供を開始します,平成26年8月26日
神戸地方気象台:兵庫県竜巻注意情報第1号,平成27年9月4日8時9分
神戸地方気象台:平成27年9月4日に発生した竜巻被害の現地調査の実施について
気象庁予報部:東京都竜巻注意情報第1号,平成27年9月4日14時14分
気象庁:諸外国の状況,第1回 突風等短時間予測情報利活用検討会,平成19年7月12日