国慶節がスタート、中国からの観光客に期待かける日本の小売業
10月1日は中国の国慶節(建国記念日)。1日~7日までの7日間が大型連休となり、大勢の人々が海外旅行に出発した。これまで中国人に人気の海外旅行先は香港、タイ(プーケット、バンコク)、韓国(ソウル、済州島)などが多かったが、日本への観光客も増加している。2年前の反日デモの影響で一時観光客が激減したこともあったが、ちょうど1年前から回復基調となり、今年1~8月の合計は約154万人と、前年同期比で84%もプラスとなっているのだ。
最近、街で中国人観光客を再びよく見かけるようになった、と実感している人も多いのではないだろうか。
ハローキティに群がる中国人
連休初日の10月1日、東京・新宿の京王百貨店に行ってみた。地下からエスカレーターに上って1Fに行く途中、早くも広東語が耳に飛び込んできた。「中国・広東省や香港の観光客も多いので、広東語での放送も始めたのかな?」と思って聞いていたらそうではなく、観光客(香港か広東省など広東語を話す)本人が迷子になった友だちを探すためにマイクに向かって話しているところだった。1Fに上ると、「ハローキティ40周年」のフェアを開催していた。中国人も「ハローキティ」が大好きだ。売り場に行ってみると案の定、中国人とおぼしき人々がキティちゃんグッズの周囲に大勢群がっていた。
隣接する小田急百貨店でも中国人観光客を見込んだフェアを開催中だった。1Fの玄関前には北海道の「白い恋人」や東京の「東京ばな奈」など菓子類を販売する特設コーナーを設置。その脇にあるカウンターには中国語で書かれたチラシがたくさん置かれており、中国人のためのスタンプラリーも行われていた。指定の場所で2つスタンプを押すと記念品がもらえるという趣向だ。その奥には「中文」と書かれた別のカウンターもあり、中国語を話すスタッフが待機していた。
免税カウンターに行ってみると、4つのブースにはすべて中国人が座っており、免税手続きをしている様子だった。たくさんの紙袋を提げた中国人が2~3人待っているだけで、まだ行列になるほど混雑はしていなかったが、中国の連休後半に当たる7日までの間にはかなり混雑するかもしれない。
すでに報道されているように、10月1日から外国人観光客を対象に、消費税の免税制度が変更になった。これまでは家電や衣料品などが対象だったが、食品、飲料、化粧品などすべての商品が対象となり、1人1日1店舗あたり5000円~50万円以下であれば免税となる。8%の消費税といえばバカにできない金額であり、中国人観光客にとって大きな魅力だ。
免税カウンターにWi-Fiを設置するところも
各地の百貨店や家電量販店では、この制度を活用して、免税8%+優待5%の13%引きを実施しているところもある。新宿のビックカメラに行くと、割引の看板があちこちに掲げられていた。同店の免税カウンターには数人の中国人スタッフも常駐しており、付近は公衆無線LAN(Wi-Fi)エリアとなっていた。来日するほとんどの中国人がスマホを使うが、日本は中国の北京や上海に比べるとWi-Fi環境があまり多くないため、こうしたサービスは非常に喜ばれる。また、同店では購入した当日中にホテルに商品を配送するというサービスも実施していた。
カウンターの周辺には中国人に人気の炊飯器が並べられている。そのほか、お土産に最適な小型のハサミや爪切り、足の疲れを取る「休足時間」や「熱さまシート」、フェイスマスクなども販売されていた。ドラックストアでは「正露丸」などの薬類も人気がある。
ある百貨店で働く女性は「以前は宝飾品フロアなどで腕時計や宝石を買う富裕層の中国人をたくさん見かけましたが、最近では幅広い層の中国人がやってきて、衣料品や靴、ストッキング、地下の食料品などのフロアで買い物をしている姿を頻繁に見かけますね。どこの店のどの商品がいいとか、どんなブランドがあるかなど、中国人同士クチコミで情報がどんどん広がっているようです」と語る。
統計によると、中国人観光客が日本旅行で使用する平均額は約11万円。これは香港・台湾からの観光客の2倍の数字になる。消費税増税後、売り上げが落ち込んでいる日本の小売業界にとって、中国人観光客にかける期待は大きい。