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都心に強風被害をもたらした「ハイブリット低気圧」って何?今週後半には南岸低気圧も:気象予報士解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
広い範囲に荒天をもたらした低気圧(気象衛星画像、気象庁HPより)

昨日27日は関東や東北の太平洋沿岸を中心に風が強く吹き、東京都内を含む各地で建造物や樹木に強風被害が生じたほか、空の便や鉄道など交通にも影響が出ました。

一連の強風をもたらした低気圧は、気象学で「ハイブリット低気圧」と呼ばれる低気圧の特徴を持っています。

通常の低気圧と台風の中間的な性質

2月27日21時の気象衛星画像(気象庁HPより)。日本の東の海上で発達した低気圧の雲が渦を巻いている。
2月27日21時の気象衛星画像(気象庁HPより)。日本の東の海上で発達した低気圧の雲が渦を巻いている。

私たちが日常的に天気図で見る低気圧は正確には「温帯低気圧」と呼ばれるもの。
一方で台風は「熱帯低気圧」が発達したものを指します。

「温帯低気圧」と「熱帯低気圧」は、根本的にエネルギー源が異なります。
少し専門的な話になりますが、「温帯低気圧」は、北側の寒気と南側の暖気が混ざる際に解放されるエネルギーを源にしている一方で、「熱帯低気圧」は水蒸気が凝結する際に放出される熱がエネルギー源です。

そして、「ハイブリット低気圧」と呼ばれる低気圧は、その両方をエネルギー源として発達します。
ちょうど車で言うところの「ハイブリッドカー」が、ガソリンと電気の両方をエネルギー源として使うのと同じです。

急激な発達と荒天

(左)2月26日18時、(右)27日18時の天気図
(左)2月26日18時、(右)27日18時の天気図

「ハイブリット低気圧」の特徴を持つ低気圧は、急発達することが多く、今回の低気圧も中心気圧が1日で24hPaも低下していました。

また、「ハイブリット低気圧」は強い風を伴う荒れた天気を引き起こすことが多いため、災害につながりやすい傾向にあります。

1000km離れていても…

2月27日の24時間降雪量の最大値(気象庁HPをもとに作成)
2月27日の24時間降雪量の最大値(気象庁HPをもとに作成)

今回、岩手県では暴風雪警報が発表され、強い雪と風の中、沿岸部の宮古市では24時間に降った雪の量が59センチと、観測史上最大を記録。
また広い範囲で強い風が吹き、工事現場の部品が落下したり、木や電柱が倒れたり、交通に影響が出るなど、大きな影響が生じました。

ところが今回、低気圧の中心から本州の海岸線までは約1000kmも離れていました。
これだけ離れていても影響が大きくなるほど、「ハイブリッド低気圧」は要注意なタイプの低気圧なのです。

29日(木)~1日(金)は南岸低気圧が東進

明後日29日(木)になると、低気圧が本州の南岸を進む予想となっています。つまり南岸低気圧です。

今週の南岸低気圧は関東では雨になるところが多そうですが、東北では雪となってまた積雪が増えそうです。

さらに、南岸低気圧が去ったあとの土日はまた寒さがぶり返しそうで、平年を下回る寒さのひな祭りになりそうです。

気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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