iPad miniを鉛筆と比較した理由とは? - 教育市場の先を攻めるApple
Appleが10月23日のイベントで発表したiPad miniは7.6mmの薄さを「鉛筆と同じ」、308gの重さを「ノートと同じ」と例えました。ここにはどんな意図があるのでしょうか。
ライバルたちを突き放すiPad mini
米国西海岸時間10月23日午前10時から開催されたAppleのメディアイベントでiPad RetinaディスプレイモデルとiPad miniが発表されました。7.9インチに小型化されたiPadは、iPhoneやiPod touchと同様の薄さ7.6mmと薄型化され、重さ308gはこれまでのiPadの半分になりました。そして価格は16GB Wi-Fiモデルで329ドル(28800円)からと、値下げ幅は小さいながら、30000円を切る価格設定になりました。
他社もこれまで、9.7インチのiPadに対して、より軽く小型の7インチAndroidタブレットをリリースして対抗してきました。価格は依然として他社製に分がありますが、フルサイズのiPadと同様の魅力的なアプリが利用でき、電池や性能面でもぬかりなく、そして何より、Appleらしい特徴と言えるアルミニウムの高い質感と軽さは、高い競争力を備えています。iPad miniに対抗するのはとても難しくなってしまった、と言わざるを得ません。
一方で、家庭でパソコンの代わりにiPadを使っているユーザーや、これまで9.7インチのiPadを使っていたユーザーにとっては、魅力的に映らなかったかも知れません。これについて、いったいどうとらえれば良いでしょうか?
ライバルとの競争よりも大きな「目標」
しかしAppleは他社との争い以上に、大きな目標に取り組んでいるように思えます。それは「教育市場」です。Appleはこれまでも、Mac、iPadなどを教育市場を意識しながら提供してきました。PRビデオなどでは、小学校や大学などでMacやiPadが利用されている学校を紹介しています。また、米国メイン州オーバーンでは、iPadを使った幼稚園での教育が注目されています。
2012年始めには、電子書籍プラットホームと電子書籍リーダーのアプリiBooksをバージョンアップし、デジタル教科書に参入、またiBooks Authorでデジタル教科書を作成できるツールも無料で提供しています。今回、iBooksとiBooks Authorをバージョンアップし、さらに電子教科書作成・流通のプラットホームを強化しています。
こうした中でiPad miniの登場は、iPadによる教育のネックとなっている価格の問題を和らげること、初等教育において小さなこどもでも持ちやすい軽さにしたことという2つの効果が挙げられます。価格は万人にとって安い方が良いですが、画面を小さくすることは、必ずしも万人にとって魅力につながるわけではありません。ここに、Appleの教育市場に対するキラーデバイスとしてのiPad miniの役割が見えてきます。
AppleはiPadを鉛筆のノートに例えました。iPad miniが教室の中に拡がり、よりたくさんの人がiPadで学習する姿を印象づけるプレゼンテーションと言えます。米国市場や欧州・日本などの先進国での教育のデジタル革新と、それ以外の国・地域において、始めからiPad miniを前提としたデジタル教育の導入を考えると、「iPad miniと教育」に広大なビジネスの世界が待っていることが分かります。
それだけに、329ドルという価格が割高に感じてしまうのは筆者だけでしょうか。近い将来、iPad 2のように1世代前のモデルを値下げして提供することにも期待をしておきましょう。