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三浦春馬さんと8月をめぐる話題あれこれ、そして「三浦春馬陰謀論」の波紋

篠田博之月刊『創』編集長
『日本製』広島県のページ(筆者撮影)

 8月6日広島、9日長崎と原爆の話題が報じられ、15日は終戦記念日。8月は、原爆と戦争について考える貴重な機会だ。

 今年はさらに三浦春馬さんをめぐる動きや話題があって、あれこれ考えさせられた。

三浦春馬さんと8月との関わり

 もともと春馬さんと8月は関わりが深い。衝撃の事件のあった2020年7月18日の翌8月にはNHKドラマ『太陽の子』が終戦記念特集企画として放送された。日本でも進められていたという原爆開発に携わった科学者たちを描いた作品だが、この作品が映画になった『映画 太陽の子』が公開されたのは、翌2021年の8月6日だった。

 また春馬さんの著書『日本製』では、広島県のページで春馬さんの強い要望で「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」事務局長を訪問している。広島原爆についての思いが2017年当時の春馬さん自身にあったわけだ。

 春馬さんの代表作のひとつには太平洋戦争を背景にした『永遠のゼロ』もあって、昨年から靖国神社の「みたままつり」に、春友さんたちのカンパによって春馬提灯が飾られるようになったのも、この映画との関わりからだろう。

 ちなみに『日本製』で春馬さんが広島をめぐって原爆の話を取り上げたのは前述したが、難病のALSについての企画を自ら持ち込んで『僕のいた時間』を成立させたり、性の多様性をテーマにしたミュージカル『キンキーブーツ』の日本公演を実現させたりと、春馬さんの感性にあった時代性、社会性は、それ自体、考察の対象となり得るものだ(誰かそういう視点から書いてくれる人がいるとよいのだが)。

原爆ドーム(筆者撮影)
原爆ドーム(筆者撮影)

 広島は、私も昔からよく訪れていた都市で、2年前、原爆ドームを訪れた時の写真がこれだ。原爆ドームの佇まいは、8月のイメージとともに、戦後の私たちの原点を思い起こさせてくれる。

台湾で8月に「三浦春馬祭」

 さて今年の8月、春馬さんとの関連でいえば、幾つかの動きがあった。「春友さん」と称される春馬ファンは台湾にもいて、これまでもいろいろなイベントを行ってきたが、今年は8月に映画館「中山73」で「三浦春馬祭」と銘打って春馬さんの映画が4本、上映されている。8月24日には『ブレイブ‐群青戦記-』が上映されるという。

 台湾の春友さんである小絵さんがX(旧ツイッター)にこう書きこんでいる。

《台湾で8月は三浦春馬祭り。東京公園、バナナ、天外者、アイネ。

春馬くんに逢えるよ…台湾春友さん達、みんな泣いてる~

もちろんファルコンさん号泣。春馬くんに逢いにいくからね。

8月は忙しい》

 小絵さんのXは下記だ。

https://twitter.com/himetosen

「バルーン・リリース2024」(脇屋恵子さん提供)
「バルーン・リリース2024」(脇屋恵子さん提供)

土浦での「バルーン・リリース2024」

 そしてもうひとつ、8月3日には三浦春馬さんの出身地・土浦で、春馬さんを偲ぶ「バルーン・リリース2024」が行われた。昨年までは彼の誕生日の4月5日前後に行われてきたが、今年は運営側の事情によってこの時期になったという。

 この今年のバルーンリリースをめぐってはちょっとしたハプニングがあった。ヤフーニュースで以前報告した「三浦春馬陰謀論」(下記参照)の余波がこのイベントにも影を落としたといえる。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/695939b110f2e7e012484cdbff06e209a44067df

『週刊新潮』の特集記事が問題にした「三浦春馬“陰謀論”」が予想外の反響を呼んでいる

「陰謀論」を追及し、春馬さんの他殺説を唱える人たちのデモの動画を公開したりしてきた「やや日刊カルト新聞」の藤倉善郎氏が、このバルーンリリースにカメラを持って取材に訪れた。その動画がXで《昨日土浦で行われた、「この想い春馬くんに届け 三浦春馬さんバルーンリリース2024」を取材してきました》と公開されている。

https://x.com/SuspendedNyorai/status/1819949019155792309

 動画はそのイベントを映したものだが、冒頭にこんなやりとりの音声が記録されている。参加者が藤倉さんをみつけて「藤倉さん、カルト扱いしないで」と言い、藤倉氏が「いや、してないですよ」という。それだけの会話だが、「やや日刊カルト新聞」がわざわざ取材に訪れたのは、『週刊新潮』が記事にしたような話との関連だろう。先の記事でも書いたように、「陰謀論」が取りざたされることが春友さんたちの活動に今後、影響を及ぼさなければよいがと思うが、今後影響は避けられないかもしれない。

バルーンリリース2024(脇屋恵子さん提供)
バルーンリリース2024(脇屋恵子さん提供)

 さて、そのバルーンリリースに参加した春友さんの脇屋恵子さんが送ってきた写真と報告を紹介しておこう。

《春馬さんの誕生日に合わせて4月に予定していた春馬さんの地元、土浦・匂橋での「バルーンリリース2024」(バルーン素材は環境に優しいものを使用)。今回で3度目だ。前回で終了予定だったのだが、開催して欲しいとのリクエストが多かったのだそう。

 主催者の都合で延期となり、8月の開催となったのだが、猛暑の中、関東以外からも台湾、九州、大阪、名古屋、福島、仙台から春友さんが集まった。10代の女性や男性の姿もちらほら。橋には春馬さんの母校である真鍋小学校の元校長先生からのメッセージも飾られていた。

 主催者の挨拶、そして春馬さんの『Fight for your heart』が流れる中、バルーンはあっという間に青空に飛んでゆく。"春馬さんに届け!" そして恒例、『You&I』を参加者で合唱。

 セレモニーの後は橋より歩いて程近い「大成軒」へ。2階を貸し切りだ。このお店は春馬さんが唐揚げと中華丼をよく注文していたとか。なので主催者は唐揚げと中華丼を予約してくれていた。初めて会う春友さんとも春馬さんの話題で盛り上がる。》

バルーンリリース2024(同)
バルーンリリース2024(同)

 前述した『週刊新潮』の記事は予想外に反響を呼び、「陰謀論」が喧伝されることで春友さんたちの萎縮がなければよいが…とちょっと気になったが、先述した台湾の小絵さんを始め、春友さんたちのXには、この8月もたくさんの投稿がなされている。春馬さんのサーフィンの師匠だった卯都木さんのXもたくさんの発信を行っている。

春馬さんの出身校の元校長からのメッセージ(同)
春馬さんの出身校の元校長からのメッセージ(同)

かんなおさん投稿「もう4年なのか、まだ4年なのか 」

 さて今年の7・18をそれぞれの想いで過ごした春友さんたちからたくさんのメールが届いている。その中からここでは北海道在住のかんなおさんの投稿を紹介しよう。彼女の想いのこもった文章にはいつも感心させられる。

《命日が近づくと、何とかして春馬くんを取り戻したいと思っていた私も4年を経て、そんな事はこっち側の勝手なエゴなんだな…と思うようになった。逢えなくなって4年ですね……。

 朝からスマホの無機質な通知音が「4年前の7月18日の思い出を振り返りましょう」と告げる。私は思わずフッとため息交じりの苦笑いを漏らしながら、スマホに語りかける。「アナタ、おりこうさんね。私が何千回と検索したこの日を、主人の大切な日だと学習して、お知らせをくれたの?」

 あの日のスマホアルバムを開くと、東京滞在中に私が伏線回収のごとく必然的にも切り取った7月18日旅立ち直後の14時23分の曇天画像が表れ、私は出勤支度の手を止めた…何度も目にしたこの画像に目頭が熱くなるのを抑え切れなかった。あれから4年…「もう」なのか、「まだ」なのか…それぞれがそれぞれの想いで、今日を抱えているのだろう。それはきっと天国の彼も同じ様に……。

 北海道での春馬くんの足跡は意外と少ない。ほとんどが映画『こんな夜更けにバナナかよ』に通ずる。

 6月末、ロケ地となった北大キャンパスを訪れた。クラーク会館や構内を探索後、キスシーンが撮影された木に逢いに行った。木に触れ、春馬くんと同じ立ち位置から空を見上げた。初夏の木漏れ日が眩しく美しい。6年前のこの季節に、この枝葉の間から溢れる光を春馬くんも浴びたのだろうか…。隣の木では剪定作業が行われていた。どうやら次はキスの木の番らしい、進入禁止のテープが貼り巡らされ始めた。6年間で枝葉はどのくらい成長するのだろうか…春馬くんを知っていた枝がまたひとつ切り落とされて、春馬くんが浴びた木漏れ日の形も変わってしまうのだろうか…そんな事を切なく思いながら北大を後にし、旭山記念公園へ向かった。

 熊よけの爆竹が鳴る中、ビビりながらピクニックシーンが撮影された場所に辿り着いた。ブロック塀の春馬くんと同じ位置に腰をおろし、頬をなでる風を感じながら、胸いっぱいに空気を吸い込むと、胸が…いっぱいになった…1時間ほど春馬くんと対話して、春馬くんと高畑充希さんが食事をした回転寿司「トリトン」へ向かった。店内にはお目当てだったサインはもう飾られてなくて、力が抜けた。確かに6年前、貴方はここにいたのにね…

 ひとり春活を終えた夕刻、札幌でのJUJUのライブに参戦し癒され、少し元気を取り戻して帰路に着いた。

 都合が悪く『天外者』の七夕上映鑑賞は見送ったが、その日の朝、春馬くんが夢で逢いに来てくれた。春馬くんは全てを理解していたが、その詳細な内容は私の心の中にそっとしまっておきたいと思う。

 春馬くん…貴方がここを留守にして4年が過ぎましたが、春馬くんがどこにいようとも、ずっとかけがえのない大切な存在で、大好きな人に変わりはありません。

 私は今、貴方が観れなかった世界、時間を噛み締めて生きています。

 春馬くんありがとう、素晴らしく立派な30年間でした。どうかどうか自由で幸せでいて下さいね。》 (北海道 かんなお)

 このかんなおさんに、先頃刊行した『三浦春馬 死を超えて生きる人Part5』(創出版)を送ったところ、彼女から届いたメールにこんなことが書かれていた。

《私が死んだら「三浦春馬特集号」と2020年11月号から1冊も欠けることない「創」を冥土の土産に棺に入れてもらう️ それなりに重い棺になるはずです 笑》

 かんなおさんらしい一文だ。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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