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名鑑が役に立たない? Bリーグの移籍事情

大島和人スポーツライター
1月12日にSR渋谷入りが発表されたロバート・サクレ

名鑑が 役に立たない Bリーグ

昨年9月に開幕した男子バスケのB.LEAGUE(Bリーグ)は、ちょうどシーズンの半ばを迎えている。1月は上旬のオールジャパン(天皇杯)、15日のオールスター戦などで2週間ほどの中断があり、17日(火)〜19日(木)の第16節からリーグ戦が再開される。

この中断期間には、新加入選手の発表ラッシュがあった。最大の大物はSR渋谷に加入したロバート・サクレ(27歳)。昨季まではNBAロサンゼルス・レイカーズに所属していた213cm・118kgのセンタープレイヤーだ。B1にはヒルトン・アームストロング(千葉)、ジョシュ・チルドレス(三遠)などNBAの公式戦経験を持つプレイヤーが計9名いる。田臥勇太(栃木)もフェニックス・サンズで4試合に出場したキャリアを持つ立派な元NBA戦士だ。

そんな中でもサクレはNBAのマイナー組織であるデベロップメント・リーグ(NBDL)やヨーロッパ、中国などのリーグを経由せず、NBAから直でBリーグに来日した初の選手。「我々からすると雲の上のような選手。『本当に来てくれるかな?』と半信半疑で交渉を続けた」(岡博章・SR渋谷社長)という、大物のサプライズ加入だった。

9チームで外国籍選手を入れ替え

プロスポーツならば、開幕前に選手の出入りが必ずある。ただB.LEAGUEはシーズンが始まってからの出入りが極端に激しい。開幕前に購入した名鑑に、現在の主力選手が反映されていない例も少なくない。例えばB1に所属する18チームのうちちょうど半数の9チームが、開幕後に外国籍選手の入れ替えを行っている。

★レバンガ北海道

OUT:ブライアン・フィッツパトリック

IN:ジャマール・ソープ

★仙台89ers

OUT:ディオン・ライト

IN:ウェンデル・ホワイト

★秋田ノーザンハピネッツ

OUT:ケビン・パルマー

IN:イバン・ラベネル

★サンロッカーズ渋谷

OUT:カディーム・ジャック

OUT:チャド・ポスチュマス

IN:ロバート・サクレ

★富山グラウジーズ

OUT:アール・バロン

IN:デクスター・ピットマン

★三遠ネオフェニックス

OUT:リチャード・ロビー

IN:ジョシュ・チルドレス

★滋賀レイクスターズ

OUT:ディビッド・ウィーバー

IN:クレイグ・ブラッキンズ

★大阪エヴェッサ

OUT:劉瑾

IN:リチャード・ロビー

★琉球ゴールデンキングス

OUT:モー・チャーロー

IN:レイショーン・テリー

(※1月16日現在)

日本人選手でも並里成(滋賀)はNBDL入りを目指しつつ、指名するチームが無かったため11月に帰国してB.LEAGUE入りを選択した選手だ。

外国籍選手は開幕後の方が獲得しやすい?

今季のB.LEAGUEは9月22日に開幕したが、NBAは10月25日の開幕で、日本より1ヵ月以上も遅かった。どんなプロスポーツでも、選手の行方は「有力選手」「ビッグクラブ」から決まっていく。NBAが決まり、「NBA(NBDL)入りを目指してシーズン前の練習に参加しつつカットされた選手」が決まり、世界各国のリーグに散らばっていく――。そういうサイクルを考えると、シーズンが開幕した後の方がハイレベルな外国籍選手は獲りやすい。それが「開幕後に選手の入れ替わる」理由だろう。

またバスケ界はNBAも含めてロースターの「カット」が一般的で、選手契約をクラブ側から解除する例が少なくない。違約金が発生しない、もしくは少額で済む契約を結んでいるのだろう。

新人選手の動きもプロ野球やJリーグと違ってくる。春に開幕する競技ならば高校や大学で最後のシーズンを終え、試験も済ませてチームのスタートから合流することが通例だ。

Jリーグの登録期間はFIFAのルールに準拠してこう定められている。

★2017登録期間

・第1の登録期間(ウインドー):1月6日(金)〜3月31日(金)

・第2の登録期間(ウインドー):7月21日(金)〜8月18日(金)

つまり移籍、登録が許される期間は合計16週間。傘下のアカデミー、高校、大学からの新卒選手は原則として「第1」の期間に加入する。期限付き移籍などは「第2」の期間に行われる場合が多い。

しかし秋春制のバスケは、新人がシーズンの途中から合流することになる。またB.LEAGUEは「登録期間最終日は、当該シーズンの2/3終了時を基準とし、2月末日と定める」となっており、選手の移籍、新加入を受け付ける期間がサッカーなどに比べて長い。

新卒選手の加入もシーズン途中

そんな背景もあり、B.LEAGUEは1月に入ってから新人選手の加入発表が続いている。現役大学生から16日現在で既に8名のB1入りが発表された。

・田原隆徳(SG):札幌大→北海道/181cm・80kg

・中山拓哉(PG/SG):東海大→秋田/182cm・82kg

・生原秀将(PG):筑波大→栃木/181cm・80kg

・杉浦佑成(F):筑波大→SR渋谷/195cm・95kg

・安藤周人(SG):青山学院大→名古屋/189cm・87kg

・高橋耕陽(SG/SF):日本大→滋賀/191cm・80kg

・澤邉圭太(SG):大阪学院大→大阪/184cm・84kg

・渡辺竜之佑(G):専修大→琉球/187cm・80kg

(※名前、ポジション、所属チーム、身長・体重)

細かく見ると既にプロ契約を結んで試合に出た選手、プロ契約で未出場の選手、特別指定にとどまっている選手とまだ身分は分かれている。また杉浦佑成は18年春に卒業見込みの大学3年生で、プロ入りは19年冬だろう。未発表の選手も当然おり2月末日の締切に向けて「新卒ルーキー」は更に増えるはず。大学4年生は既に最後のシーズンを終えており、それぞれが各チームへ合流していくことになる。

選手の激しい出入りに戸惑っている人がいるかもしれない。ただそういう状況に至った背景、他競技との違いがあり、今後も同じことは起こる。そういったカルチャーを踏まえておけば、皆さんもB.LEAGUEをより深く楽しめるはずだ。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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