Yahoo!ニュース

サンウルブズ7連敗。突然の交代、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが説明。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ジョセフヘッドコーチの胸中は。(写真:アフロスポーツ)

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦3年目となるサンウルブズは4月14日、東京・秩父宮ラグビー場でここまで1勝のブルーズに10―24で敗戦。開幕7連敗を喫した。

 試合後、日本代表の指揮を兼ねるジェイミー・ジョセフヘッドコーチが、スクラムハーフの流大・共同キャプテンとともに会見した。

 一時は用意された攻撃を機能させて前半を10―5とリードするも、後半10分に大外のスペースを破られ10―12と勝ち越されると、ジョセフヘッドコーチはフルバックの松島幸太朗をスタンドオフのヘイデン・パーカーにスイッチ。チームは本来スタンドオフだった田村優がフルバックに入る、急造の布陣を形成した。

 続く15分、右サイドのスペースを破られ10―19と点差を広げられた。19分、田村はアウトサイドセンターが本職のウィリアム・トゥポウと交替した。

 防御は過去6戦に比べ改善も、時間が経つにつれ数的劣勢を強いられるようになった。追いかける展開となった試合終盤は攻め込んでのミスが重なり、36分にだめを押された。

 試合後の選手はシンビンで相手が1人欠いた前半3分からの10分間でわずか3得点しか奪えなかったこと、防御の連携が取れない時間があったことなどを反省。もっとも会見では、指揮官のベンチワークに関する質問も飛んだ。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――残念な敗戦でした。

ジョセフ

「残念です。チーム全体もそう思っています。前半は大きなプレッシャーをかけていましたし、ここでもう7点取っていればさらにたたみかけることができた。ハーフタイム、選手は自信に満ち溢れていました。ブルーズがしつこいチームで、特殊能力を持っていた選手が多いことなども念頭に置いていました。ところが握っていた主導権を受け渡してしまった」 

――松島選手の交代、田村選手のフルバックへの移動。この経緯は。

ジョセフ

「松島はタックルミスが多く、この決断に至りました。過去の試合を観ていると、タックルミスをすると失点に繋がり、悪循環に追い込まれていました。タックルできない選手は変更せざるを得ないのが現状です。田村をフルバックで起用したのは、リザーブにフルバックの専任がいなかったからです。ただ田村には経験があり、キック力もある。風上で戦っていたこともあり、フルバックに田村を入れました。

 ディフェンス。今日は機能していたと思います。ラインスピードも上げられた。けれど、気負い過ぎてペナルティーをしたり、1対1で仕事ができずトライになったというところがあったと思います」

――田村選手は結局、退けましたが。

ジョセフ

「(途中からスタンドオフに入った)パーカーが優秀なゆえにです」

 なお、最後尾にいた松島がタックルを外されたシーンは、いずれも前方の防御網に十分な人員が揃わないなどの理由から相手を勢いづけた直後のものだった。また、この日先発したセミシ・マシレワは国内所属先の近鉄でフルバックを務めている。

――主導権を渡してしまった理由は。

ジョセフ

「まだじっくり試合を検証していませんが、キックオフでプレッシャーをかけ、相手の蹴り返しを確保していれば…というところで落球があった。個人のミスです。そこからスコアをされてしまった。前半ブルーズが持っていなかった自信を、与えてしまった。ブルーズは我々と似ていて、いいプレーをすると止められない。我々はミスから自信を喪失して…という流れになったと思います」

――以後、ニュージーランド遠征へ出かけます。

ジョセフ

「このリーグはタフ。各週、目先の試合を見据えて毎週やっていますが、置かれている立場は自覚しています。選手とコーチ陣で意識共有し、協力し合っています。向こうでは(次戦まで)2回半の練習しかないですが、ここまで長く一緒にいます。ニュージーランド遠征は最もタフになると思いますが、しっかりとしたマインドセットを持ってチャレンジしていきます」

――シーズン前に5位以内を目標に掲げていたが。

ジョセフ

「目標に5位を設定した理由は2つあります。ひとつは自分がチームを率いるなか、選手に高い目標を示して感化させたいという意味。もうひとつは、マーケット的にも人々を魅了するため、ワールドカップ日本大会を翌年に控え、色々な人に関わってもらいたいということです。

 そして、オールブラックスの多いブルーズも優勝を狙っていましたが、怪我などで苦しい戦いを強いられ、目標から遠ざかっています。最後に言いたいのですが、きょうはもっと収穫の得られる試合でした。前半でプレッシャーをかけたが、取りこぼしてしまった。それが力量で、そこが一番の課題。そう申し上げたいと思います」

――ワールドカップに向け国民の期待度はどう感じるか。

ジョセフ

「サンウルブズ視点で見たら明るくないのが現状ですが、ジャパンのヘッドコーチとしては日本人選手にスーパーラグビーの経験をさせること(が有意義)。ここにいる流のような会社員、いわばアマチュアの選手が多いなか、苦戦しています。しかし、それ(苦しい経験を積むこと)が意図です。

 ワールドカップではまず4回のテストマッチがあり、何が起きてもおかしくない。全国民がサポートしてくれると思う。いま、層の厚さをもたらすため、JAPAN Aがニュージーランドで試合をしている。現在の期待度は高くありませんが、まだまだ15カ月時間があると思っています」

 日本協会がスーパーラグビーへのチーム派遣を決めたのは、ジョセフが日本代表からオファーを得る前の2014年。2015年にサンウルブズと命名されたチームは、発足前から消滅の危機に瀕して2シーズン計3勝と苦しみながら足跡を刻んできた。

 

 3年目のサンウルブズがトンネルを抜け出せぬなか、若手主体のJAPAN Aはニュージーランド遠征1戦目でハイランダーズの控えチームと対戦。13-12で勝利した。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事