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昨年100勝を挙げたチームが、開幕直前に「チーム打点王」を放出。その理由は!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
オースティン・メドウズ Oct 2, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月4日、タンパベイ・レイズは、オースティン・メドウズをデトロイト・タイガースへ放出し、交換にイサック・パレイデスとドラフト指名権(2巡目と3巡目の間)を獲得した。

 昨シーズン、レイズは、ア・リーグ最多の100勝を挙げた。チームのなかで、最も打点が多かったのはメドウズだ。2000年のフレッド・マグリフと並ぶ、球団史上5位タイの106打点を挙げた。ちなみに、トップ4は、2007年に121打点のカルロス・ペーニャ、2005年に117打点のホルヘ・カントゥ、2009年に113打点のエバン・ロンゴリア(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)、2003年に107打点のオーブリー・ハフだ。

 メドウズは、5月に27歳の誕生日を迎える。FAになるのは、2024年のシーズン終了後だ。昨シーズンのホームランは27本。出塁率は.315ながら、フリースウィンガーというわけではなく、四球率は10.0%だった。2019年は、どちらもチーム最多の33本塁打と89打点に、出塁率.364(四球率9.1%)を記録した。

 ただ、レイズは、数多くの外野手を擁する。センターはケビン・キアマイアー、レフトとライトの一方はマニュエル・マーゴで決まりだろう。ランディ・アロザレイナがDHに回ったとしても、ブレット・フィリップスハロルド・ラミレスに加え、トップ・プロスペクトのジョシュ・ロウもいる。

 24歳のロウは、2016年のドラフト全体13位だ。メジャーリーグでプレーしたのは昨年9月の2試合のみだが、昨シーズンはAAAで111試合に出場し、打率.291と出塁率.381、22本塁打と26盗塁、OPS.916を記録した。

 一方、レイズがメドウズと交換に入手したパレイデスは、23歳のメキシカンだ。一塁以外の内野3ポジションを守る。メジャーリーグでプレーしたのは、2020~21年の計57試合。昨シーズンはAAAの72試合で、打率.265と出塁率.397、11本塁打、OPS.847を記録した。盗塁は試みていない。

 レイズは、パレイデスには伸びしろがあると考えているのかもしれないが、メドウズを手放した一番の理由は、ロウに出場機会を与えるためではないだろうか。

 フィラデルフィア・エンクワイアラーのスコット・ローバーによると、フィラデルフィア・フィリーズはメドウズのトレードについて、レイズと話し合っていたという。カイル・シュワーバーと契約を交わしたフィリーズが、それに続いてニック・カステヤノスを迎え入れる直前のことだ(「打ちまくればそれでいい!? この球団は守備に難のある外野手2人と契約。DHは1枠しかないが…」)。パレイデスは、AAAで開幕を迎えると思われる。

 タイガースも、不測の事態が起きなければ、メドウズを獲得することはなかったに違いない。こちらは、トップ・プロスペクトのライリー・グリーンをメジャーデビューさせ、センターとして起用するつもりでいた。21歳のグリーンは、2019年のドラフト全体5位だ。昨シーズンはAAとAAAの計124試合で、打率.301と出塁率.387、24本塁打と16盗塁、OPS.921を記録した。

 けれども、4月1日のエキシビジョン・エキシビション・ゲームで、グリーンは右足を骨折した。自打球によるものだ。デビューは2ヵ月以上遅れる。レイズだけでなくタイガースも、トレードの理由はトップ・プロスペクトというわけだ。アキール・バドゥーがレフトからセンターへ移り、メドウズはレフトを守る。

 なお、このトレードにより、タイガースにはメドウズ兄弟が揃った。弟のパーカーは、2018年のドラフト2巡目・全体44位(兄は2013年の全体9位)。左投げと右投げの違いはあるが、どちらも、左打ちの外野手だ。弟は22歳。まだ、AAでもAAAでもプレーしたことはなく、メジャーデビューは来シーズン以降になりそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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