活断層と火山を作った別府－島原地溝帯

別府から島原にかけた別府－島原地溝帯は、南北に引っ張られる力によって溝状に落ち込んだ場所で、その東に瀬戸内海があります。熊本地震を起こした布田川帯・日奈久断層帯や1596年慶長豊後地震を起こした別府－万年山断層帯、雲仙岳周辺の雲仙断層群などの活断層は、この地溝帯に位置し、これらの断層の東には、中央構造線があります。また、九重山、阿蘇山、雲仙岳などの火山も、地溝帯に位置しています。阿蘇山は、昨年も大規模な噴火をしましたし、雲仙普賢岳は1991年に噴火し、6月3日の大火砕流では43名の死者・行方不明者を出しました。

繰り返す破局的カルデラ噴火で作られた国立公園

阿蘇山は大規模なカルデラ地形は、30万年前から9万年前に発生した4回の巨大噴火によって作られました。とくに9万年前の噴火は大規模で、火砕流は九州中央部を覆い、山口県秋吉台まで達しました。降灰も北海道まで達しました。

我が国の他の多くのカルデラ火山は、湖や海になって水で覆われていますが、阿蘇山の場合は、地形外輪山と中央火口丘からできた美しい風景と自然を呈しており、温泉、農産、畜産などに活用され、阿蘇くじゅう国立公園にも指定された観光スポットになっています。

大津波を引き起こした雲仙の火山噴火

島原半島の雲仙岳では、1792年2月10日に始まった火山噴火の中、5月21日の夜に火山性地震によって、眉山が山体崩壊をしました。これによって、島原城下が埋没し、有明海まで大量の土砂が流れ込みました。このあとが、九十九島と呼ばれる島原市沖に浮かぶ島々で、大津波を引き起こしました。津波は、島原に加え、有明海の対岸の肥後国（熊本県）にまで達し、島原で1万人、肥後国で5千人もの犠牲者をだしました。これを、島原大変、肥後迷惑と呼んでいます。火山と地震と津波という、珍しい複合災害です。肥後国には、写真のように沢山の石碑が残されています。

島原藩の殿様は西三河の深溝松平家

島原大変肥後迷惑のときに島原藩の藩主を勤めていたのは、深溝松平家です。深溝松平家は、徳川家康と祖先を同じくする三河十八松平の一つで、戦国時代に、松平信光から分派しました。四代家忠まで、西三河の深溝を領地としたため、深溝松平家と称されました。深溝は、愛知県幸田町に位置します。その後、深溝松平家は、肥前島原藩主となって幕末を迎えました。

深溝松平家の菩提寺は、幸田町深溝にある瑞雲山本光寺で、一九代忠諒までの当主の遺体を埋葬しています。六代以降は、神殿型墓石という特徴的な墓標となっており、2014年に国指定史跡に指定され、国指定史跡島原藩主深溝松平家墓所として整備されています。

島原大変肥後迷惑の時の島原藩主は十一代忠恕です。忠恕は、宇都宮藩主時代には大雨、大火事、農民暴動で苦労し、島原藩主になった後の19年間にも、天災、地変、飢餓、凶作や、眉山崩落がありました。このため、悲運の殿様とも言われています。残念ながら、眉山崩落の26日後、心労が重なって死去しました。そんな背景もあってか、忠恕の墓だけが、忠恕公廟として別の場所に作られています。

三河地震の傷跡が残る本光寺

地震に興味のある人は、深溝という名前から深溝断層がずれ動いて発生した1945年三河地震のことを思い出すと思います。この地震は、戦時下、終戦間際に発生しました。三河地震は、1944年12月7日に発生した東南海地震の1か月後、1月13日の深夜に起きた地震で、南海トラフ地震の誘発地震とも言える地震です。この2つの地震で、名古屋周辺の軍需工場は大きな痛手を受け、戦争終結を早めたとも言われています。実は、本光寺には、三河地震で壊れた土塀が今でもそのままの形で残されています。

このように、火山、津波、地震が、時と場所を超えて、結びついていることに、日本の風土の特徴を感じます。