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「何もできないから、せめて一生懸命頑張ろう」。“ギャル漫才”の「エルフ」を押し上げた信念

中西正男芸能記者
「エルフ」の荒川さん(左)とはるさん

“ギャル芸人”として今年注目度が急上昇した漫才コンビ「エルフ」。12月28日に開催される少女歌劇団ミモザーヌ冬公演「Winter Story~きくたまこと卒団公演」(大阪・堺市立東文化会館)の応援サポーターに就任するなど、さらに活動の幅を広げています。2016年に荒川さん(25)とはるさん(25)がコンビを結成して以来、順調にステップアップしてきましたが、歩みを支えた信念とは。

新型コロナ禍が転機に

はる:ありがたいことに、今年はお仕事を本当にたくさんいただきました。お正月に「ぐるナイ『おもしろ荘』お笑い第7世代NEXTスター発掘スペシャル」に出してもらった影響も大きかったと思いますし、相方が発信しているSNSなんかで存在を知ってくださっていた方も「こういう芸をするコンビだったんだ」と「おもしろ荘」が“答え合わせ”になったといいますか。

荒川:本当にありがたいばかりなんですけど、仕事量でいうと去年の10倍にはなったと思います。ほとんど休みがないままに走ってきました。

はる:新型コロナ禍の中、余計に貴重なことだと思っています。

荒川:私はコロナ禍で人生が変わったと思っているんです。もちろん、コロナ“禍”なわけですから大変なことがいっぱいあるんですけど、その中でもがいたことが今の状況につながっているなと。

コロナ禍で劇場もストップするし、私は飲みに行くのが大好きでほとんど毎日行ってたんですけど、それもできなくなった。

ただ、何もしないで家にいるのも良くないし、何かしらにつながればという願いを込めて、SNSを本格的にやり始めたんです。酔っぱらっている友達の様子をマネをした動画を撮ってTikTokにアップする。

これまでも劇場や自分のTwitterではそんなこともやってたんですけど、TikTokにアップしたことで、すごく多くの人たちに見てもらえるようになって、話題になったんです。その流れが仕事にもつながっていって、どんどん動画をアップしたら、それがまた見てもらえる。

そのサイクルに本当に救われましたし、自分の中で飲みに行っている時間はムダだったのかな…という後悔もあったんです。でも、そこで経験したことが動画の材料になっているし、ムダどころか財産に変わっていった。

さらに、皆さんに見ていただけるのでどんどんアップしようとする中で、夜中まで作業をすることも当たり前になっていって、ナチュラルにお笑いにかける時間が増えていったのも自分にとっては自信になったという感覚もあるんです。本当に何重にも救われました。

「次」を得るために

はる:お仕事をさせてもらう中で、私もこれまでずっと悩んでいたことを解消してもらった部分があるんです。

感覚的な話にもなるんですけど、私はツッコミだけど“言い切れない”。ここですごく悩んでたんです。先輩に対しても「何なんですか!」とバチンと言い切った方が面白いのに、緊張とか遠慮でそこをひいちゃうといいますか。

こちらが行き切らないと、先輩も「何やねん!」と返しにくい。その構図は分かっているものの、なかかな行けずに迷っていた部分があったんです。

たくさんお仕事をさせてもらうようになって、そこをより一層感じるようになって先輩コンビの「ツートライブ」のたかのりさんに相談したんです。そこでたかのりさんから「もし間違ってても、周りがそれを笑いにしてくれる。ましてや横に“ギャル”がいるんだから、よりしっかりとつっこんだり、勢いよくやり切った方がいいと思う」と言っていただきまして。

細かい話なんですけど、私は緊張もあって誰かにつっこむ時も、目を合わさないというか背けてつっこんでたんです。でも、そこも自信を持って、相手の目を見て、思いっきりつっこむ。そこの一歩を踏み出すようになって、ありがたいことに良い方向に向かえたと思いますし、これまでずっとあった“言い切れない情けなさ”から脱出できたと感じているんです。

荒川:あと、最近特に思うんですけど、お仕事をいただけるようになったきっかけはSNSであり、お正月の「おもしろ荘」だと思うんですけど、そこから呼んでもらい“続ける”。ここはその時、その時の頑張りしかないんだなと痛感しています。

ロケにしても、ディレクターさんから「OKです」と声がかかるギリギリまで何かないかと振り絞る。もう何もない。このまま終わる。そう思ったところから振り絞る。そうやって出た一言がスタジオの皆さんにウケたりすることがすごく多い気がしていて、それが「また次も」につながるのかなと。

何もできないから、せめて一生懸命頑張ろう。この瞬間に全力を振り絞ろう。マジ毎秒というか(笑)、そんなことだけは常に考えています。そして、ずっと出続けている人がいかにすごいか。それを痛感した一年でもありました。

はる:これを続けていかないと意味がないわけですからね。本当に簡単なことではないと思います。

荒川:でも、その中でうれしいこともいただきました。私がもうこれ以上ないくらいお世話になりまくりなのが「蛙亭」の岩倉さんなんです。

大阪にいらっしゃる時はずっと一緒に遊んでましたし、何かあった時は必ず話を聞いてもらっていました。ずっと味方でいてくださるし、どれだけ忙しくても、ただただ私の話を聞いて、迷いが晴れるようなことだけを言ってくださるんです。

それ自体でもうありがたいんですけど、自分の苦労や自慢なんてことは一切言わずに、私のための時間を割いてくださる。今は芸事で大儲けされてると思いますけど(笑)、東京に行く前は引っ越し費用を作るために3つも4つもアルバイトを掛け持ちしながら舞台にも出てらっしゃったんですけど、しんどいからと言って愚痴も言わない。そして、そんな中でも私が何か言ったら、しっかりと話を聞いてくださる。本当に頭が上がりません。

そんな岩倉さんと番組でご一緒させてもらう機会も今年は増えてきました。私が何かをするなんてことはおこがましいですけど、やっと、少しは恩返しというか、前に進むことができているのかなと。

本当に与えてもらってばっかりで。ただ、せめてもの気持ちを伝えるために、いろいろな方が開いた岩倉さんの送別会に計6回出席しました(笑)。

はる:何回行くねん!

荒川:フルパワーで送り出して全部の表情を見てきました(笑)。ただ、やっぱり私が岩倉さんに何ができるわけでもないので、最近は私が後輩に岩倉さんがいつも言ってくださる言葉を伝えるようにしています。「何かあったら、いつでも言ってね」と。

(撮影・中西正男)

■エルフ

1996年8月30日生まれの荒川と96年6月16日生まれのはるが2016年にコンビ結成。荒川は大阪府出身、はるは山口県出身の大阪府育ち。吉本興業所属。荒川のギャルキャラクターを前面に出したネタを軸に注目を集める。少女歌劇団ミモザーヌ冬公演「Winter Story~きくたまこと卒団公演」(12月28日、大阪・堺市立東文化会館)の応援サポーターも務めている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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