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親に叱られないと学校にいかない大学生、これは悲劇だ

前屋毅フリージャーナリスト

学校をダメにしていく大きな原因は「親」にある。我が子かわいさだけの狭い視点で学校に文句をつけたがる傾向が強まって、学校は萎縮してしまい、本来の自分たちの役割を忘れてしまうことになる。

それは小学校、中学校、高校ばかりの話ではなくなったようだ。ついに、大学にも「親害」が起きつつあるようだ。

1月6日付けの『朝日新聞』(電子版)に、「『高校化』する大学 出欠を保護者がサイト上で確認」という記事が掲載されている。

授業開始前に学生が読み取り機に学生証をかざすことで出欠を取り、それを保護者がサイト上でリアルタイムで確認できるシステムを導入している大学がある、との記事だ。サイトで我が子の出欠を確認し、欠席していることがわかれば、「何してたの!」ということになる。

ズル休みして遊んでいた高校生が、学校から保護者に連絡され、こっぴどく叱られるのと同じ構図だ。それを現代的に、ネットを使ったシステムにしてしまったというわけだ。

さすが大学のやることは最先端だ、などと関心などしていられない。授業にでなかったからといって親に叱られるなど、そもそも大学生か、と言いたくなる。

出欠を細かく親に知らせるなど、それも大学のやることか、と言わざるをえない。なぜ、そんなことを大学はやるのか。

親向けのサービス、だと考えられる。いつまでも我が子を管理したい親に、大学がゴマをすっているのだ。それで、「こんなことまでやってくれるなんて、良い大学だ」といわれたいのかもしれない。とんでもない、過剰サービス以外のなにものでもない。

親と連携して学生を学校に来させるのが目的だとしても、そうまでして強制的に学校に来させる意味があるのだろうか。学ぶことがあるからこそ大学に来ているのが学生のはずである。強制されなければ授業にでないというのは、はたして大学生と呼べるのだろうか。

強制されなければ来ない学生ばかりの大学など、すでに大学ではない。ほんとうに価値のある大学ではないから、学生も欠席ばかりするのだ。そこを考えなおすことこそが大事な問題である。

それを無視して、親の支配欲を満足させ、ただ教室に学生が満杯になっている状況だけで満足している大学が増えていくとすれば、大学の衰退以外のなにものでもない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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