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顔のシミ「肝斑」で悩む人は要注意 - 鬱のリスクが高いことが明らかに

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【肝斑とは?顔に現れる茶色いシミ】

肝斑は、主に女性の顔に現れる茶褐色のシミのことです。妊娠中の女性に多く見られることから「妊娠マスク」とも呼ばれています。原因は完全には解明されていませんが、紫外線や女性ホルモンの変化、遺伝的要因などが関係していると考えられています。

肝斑は、主にアジアやラテンアメリカの女性に多く見られる皮膚疾患です。顔の目立つ部分に現れるため、患者さんの外見に大きな影響を与え、精神的な苦痛の原因にもなります。最近の研究で、肝斑患者さんの多くが鬱症状を抱えていることが分かってきました。

【肝斑患者の43.4%に鬱症状あり】

今回、初めて肝斑と鬱の関係性についてのメタ分析(複数の研究結果を統合的に解析する手法)が行われました。その結果、肝斑患者2,963人のうち、実に43.4%に鬱症状が見られたのです。これは、世界の鬱症状の有病率3.4%の約12倍という衝撃的な数字です。

地域別に見ると、アジアが48.5%と最も高く、次いで北米・南米が39.3%、その他の地域が26.4%でした。日本を含むアジアでは、色白の肌が好まれる傾向にあります。そのため、目立つ部位にシミができると、強い劣等感を抱きやすいのかもしれません。

【肝斑の治療と鬱への注意が必要】

肝斑の治療は、原因の特定が難しいこともあり、完治は容易ではありません。シミの部位に合わせた外用薬の使用や、レーザー治療などが行われます。ただ、治療と並行して、患者さんの精神面のケアも重要だと言えるでしょう。

我々皮膚科医が、診察時に鬱症状の有無を確認し、必要に応じて専門家へ紹介するなどの対応が求められます。皮膚疾患は、身体的な症状だけでなく、精神的な影響も大きいことを理解し、患者さん一人ひとりに寄り添った医療が大切です。

日本でも、皮膚の健康と心の健康の関係性について、さらなる研究と啓発が必要だと感じます。皮膚疾患で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。

参考文献:

Chen W et al. Prevalence of depression in melasma: a systematic review and meta-analysis. Front Psychiatry. 2023;14:1276906. doi: 10.3389/fpsyt.2023.1276906

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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