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【診断が難しい皮膚がん】色がつかないホクロのがん 早期発見のポイント

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【危険な無色素性肢端悪性黒色腫】早期発見のポイントと最新の治療法

無色素性肢端悪性黒色腫(Acral amelanotic melanomas、AAM)は、手や足の裏、爪の下などの手足にできる色がない悪性黒色腫の一種です。通常の悪性黒色腫とは異なり、メラニン色素を欠くため、色がないか薄いのが特徴です。AAMは全悪性黒色腫の2〜3%ほどを占める比較的まれながんですが、早期発見と適切な治療が予後を大きく左右する重要な疾患です。

【AAMの見分け方と誤診の危険性】

AAMは色がないため、イボやタコ、皮膚の感染症などと間違えられやすく、診断が遅れてしまう危険性があります。実際、AAMは良性の皮膚疾患と誤診されることが多く、特に足の裏に発生したAAMは見逃されがちです。足の皮膚病変は軽視されやすい傾向にありますが、AAMのように重大な病気を見落とさないためにも、注意深く観察する必要があります。

一方、手に発生したAAMは、足に比べて早期に生検が行われる傾向にあります。これは、手の病変は目につきやすく、機能的にも重要であるため、医師が慎重に対応しているからだと考えられます。しかし、足に発生したAAMも同様に重要であり、疑わしい病変があれば積極的に生検を行うべきです。

AAMを見分けるポイントは、色の変化だけでなく、病変の形状や大きさ、境界の不整、表面の性状などを総合的に観察することです。ダーモスコピー(皮膚科医が使用する虫眼鏡のようなもの)を用いると、AAMに特徴的な不整な血管パターンや白色調の領域が認められる場合があります。また、病変が増大傾向にあったり、治癒しない潰瘍を伴ったりする場合は、AAMを疑う必要があります。

【確定診断と治療法】

AAMの確定診断には、病理組織学的検査が不可欠です。色素がないため、通常のヘマトキシリン・エオジン染色では診断が難しい場合があります。そのため、メラノサイト(色素細胞)のマーカーであるS100やHMB-45、Melan-Aなどの免疫組織化学染色を行うことが重要です。また、PRAMEというマーカーを用いることで、AAMと他の悪性腫瘍(明細胞肉腫など)との鑑別に役立つことがあります。

AAMの治療は、主に外科的切除が行われます。早期の段階で完全に切除することが、予後を改善するために重要です。リンパ節への転移が疑われる場合は、センチネルリンパ節生検やリンパ節郭清が行われることもあります。進行例では、化学療法や免疫療法などが検討されます。いずれにしても、早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、手足の異変に気づいたら速やかに皮膚科専門医を受診することが大切です。

【AAMの予防と早期発見】

AAMを予防するには、日光対策と怪我に注意することが重要です。また、定期的に自分の手足の皮膚をチェックし、色や形の変化、治りにくい傷などに注意を払いましょう。月に1回程度、全身の皮膚をセルフチェックする習慣をつけることをおすすめします。

気になる病変があれば、早めに皮膚科専門医を受診し、診察を受けることが重要です。皮膚科医は、肉眼所見やダーモスコピー所見、病理組織検査などを総合的に判断し、AAMの診断を行います。早期発見・早期治療がAAMの予後を大きく改善するため、手足の異変を見逃さないようにしましょう。

AAMは診断が難しい皮膚がんですが、病変の特徴を知り、注意深く観察することが重要です。手足の皮膚に異変を感じたら、躊躇せずに皮膚科を受診し、専門医の診察を受けるようにしましょう。早期発見と適切な治療が、AAMの予後を改善するカギとなります。

参考文献:

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2. Pizzichetta, M.A.; Kittler, H.; Stanganelli, I.; Ghigliotti, G.; Corradin, M.; Rubegni, P.; Cavicchini, S.; De Giorgi, V.; Bono, R.; Alaibac, M.; et al. Dermoscopic diagnosis of amelanotic/hypomelanotic melanoma. Br. J. Dermatol. 2017, 177, 538–540.

3. Kaczorowski, M.; Chłopek, M.; Kruczak, A.; Ry´s, J.; Lasota, J.; Miettinen, M. PRAME Expression in Cancer. A Systematic Immunohistochemical Study of >5800 Epithelial and Nonepithelial Tumors. Am. J. Surg. Pathol. 2022, 46, 1467–1476.

4. J Pers Med. 2024 May 13;14(5):518. doi: 10.3390/jpm14050518.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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