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ニューヨーク・タイムズ、記者のロシア国外退避を決定。崩壊するロシアの言論の自由

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

『ニューヨーク・タイムズ』は8日火曜日、他の多くの報道機関と同様に、ジャーナリストをロシアから退避させることを決定したと発表した。

モスクワの独立系メディアに対する厳しい姿勢と、新法を踏まえてのものだ。

ロシアの新法は「ウクライナ戦争に関する独立した真実の報道を、犯罪とすることを目的としている」と、同紙はAFPに送ったメッセージで述べたという。ル・モンドが伝えた。

「現地で働く編集スタッフの安全と安心のために、当面の間、国外に退避させる」と付け加えた。

プーチン大統領が4日金曜日に署名した新法では、軍の「信用失墜」を目的とした情報を広めた場合、最高15年の実刑判決が下される。政府を非難し罰をくだすことを求める声も、刑罰の対象になる。

その他、イギリスの公共放送BBC、カナダのCBC/ラジオカナダ、ドイツのARDとZDF、スペインのRTVE、アメリカのブルームバーグニュース、スペインのEFEなど、欧米のメディアはすでに報復を恐れてロシアでの仕事を停止している。米国のニュース専門チャンネルCNNもロシアでの放送を停止している。

ニューヨーク・タイムズは、ジャーナリストを「できるだけ早く」ロシアに送り返せるようにしたいと考えているが、当面は「新法の実施状況を監視」している。

銃弾が飛び交う戦場ですら、現場で報道をし続けたニューヨーク・タイムズ。ジャーナリズムに徹してきた同紙だが、全体主義国家の独裁指導者による政治は、砲弾が飛んでくる最前線よりも危険なのだろう。

ニューヨーク・タイムズですら、撤退してしまう。ロシアの言論の自由は、死に向かおうとしている。ロシアでは、警官や軍人が一般市民を呼び止めて、不穏な会話をしていないかの携帯チェックをする光景も、日常茶飯事になった。

プーチン大統領にとって、戦争の大詰めが近づいてきているのだろうか。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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