ガーナに惨敗の日本代表に提言!韓国代表Jリーガーの発言から見えた日本サッカーの弱点と課題とは!?
5月30日の国際親善試合で日本代表は、ガーナ代表に0-2で完敗した。結果もそうだが内容も悪く、ロシアW杯のメンバー23人が発表されたあとも、チームの迷走は続きそうな気配だ。
そんな中、Jリーグでプレーする韓国代表選手に日本サッカーのことについて聞く機会があった。率直で建設的な意見は、Jリーグが好きな場所だからこそ、もっと良くなってほしいというものばかりだった。
昨年途中からJリーグに復帰した柏レイソルのキム・ボギョン。2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯メンバーにも選出され、プレミアリーグでもプレー経験がある。
2010年に大分トリニータ(C大阪から期限付き移籍)でプロキャリアをスタートさせたキムに、まずはJリーグの良さについて聞くと、こんな答えが返ってきた。
「アジアのリーグの中では、欧州のリーグに近いと思います。サッカーに関するインフラは、Jリーグが誇れるブランドになっていると思います。また、Jリーグでプレーする選手たちは、技術面を最も重要視していますよね。基本的にすべてのチームのレベルが高く、技術を前面に押し出したサッカーをするので、ファンもそうした部分に関心が高いと感じます」
Jリーグの環境は世界の中でも屈指と褒める一方で、キムは実力面で少し物足りなさを感じていた。
「”うまい”と感じる選手が少なくなった」
「日本の選手もどんどん海外でプレーするようになったせいか、現在のJリーグには“うまい”と感じる選手が少なくなった印象がありますね。私が日本に来たばかりの頃は、能力の高い選手がもっと多かった。ただ、日本の選手が海外に出るということは、その分、ほかの選手に出場チャンスが増え、実戦で経験を積むことができるので、Jリーグ全体のレベルは上がると思います。そこは一長一短なのかなと思います」
Jリーグのレベルは全体的に上がっているが、個性のある選手が少なくなったということだろうか。確かに、世間一般的に言えば、今ではヴィッセル神戸のポドルスキやバルセロナから神戸に移籍が決まったイニエスタの話題のほうが強い印象がある。
その上で「Jリーグに足りないものは何か?」と聞くと、こんな答えがかえってきた。
「正直、技術ではプレミアリーグにも劣るとは感じません。Jリーグの選手の技術は十分に通用しますが、身体的な部分で差がある。欧州の選手たちはフィジカルが強い。それにメンタルもタフ。Jリーグに求められているのは、フィジカルやメンタル面の強化ではないでしょうか」
日本代表と韓国代表が試合をするたびに、「フィジカルやメンタル面が日本には足りない」という話は、過去の韓国代表選手もよく口にしていたのを記憶しているが、キムもそうハッキリと違いを口にした。
次は、ヴィッセル神戸の韓国代表MFチョン・ウヨン。現在、神戸と代表でも主力として活躍する彼に「フィジカル面は、日本よりも韓国のほうが強いのでしょうか」とぶつけてみた。
「そこは選手によると思います。韓国にも日本にも、フィジカルの強い選手がいれば、そうでない選手もいます。JリーグでもKリーグでも、そこで生き残るためには、例えばスピードが誰よりも速かったり、身体能力やパスのセンスが抜群に高いなど、何かの能力に突出していないと生き残るのは難しい。どちらがよい、悪いというのではなく、日本と韓国ではサッカーのスタイルが異なりますから」
チョンの性格がにじみ出るバランスの取れたコメント。彼からすれば、日本と韓国のサッカースタイルに優劣をつけるのはおかしいということだろう。
「日本は韓国のフィジカルに押される部分がある」
さらにKリーグとJリーグの違いについて聞くと、「Kリーグでプレーしたことがないので比較するのは難しい」と少し考えて、「ただ、代表戦になると、日本は韓国のフィジカルに押される部分がありますね。一方で、韓国にとって細かいパス回しを得意とする日本のサッカーは脅威で、そこを特に警戒するようになりますよね」と答えた。
韓国代表選手から見ると、やはり日本はフィジカルで押される側面があるという認識が強いようだ。
さらにもう一人、FC東京の韓国代表DFチャン・ヒョンスに話を聞いた。かつて2012年にFC東京でプロデビューを果たし、昨季途中、中国の広州富力から古巣に復帰。ロシアW杯でも欠かせないCBであり、代表では副キャプテンを務める。
まずはJリーグのレベルについて聞くと、「Jリーグのレベルは高いですよ。私が日本でプロデビューしたときも、成功する保証なんてありませんでしたから。それにJリーグは特にMFの選手たちのプレーの創造性とアイデアは、かなり優れています。日本の選手は周囲にいる選手をいかに有効に使うべきかという意識が強く、うまくスペースを作り出した後、そこに選手が走り込んで攻撃を展開します。そのパターンがいくつもあって楽しいです」と笑顔を見せる。
脅威となる日本人Jリーガーはいない?
やはり守備の選手だけに、聞いておきたかったのが、「怖いな」と思った選手だ。するとチャン・ヒョンスはかなりの時間、悩んでいた。それは、そこまで印象が残るFWがJリーグにいないということにも受け取れる。
するとハッと思い出したかのように「サガン鳥栖の(ビクトル・)イバルボ選手です。身体能力の高さもそうですが、チームへの犠牲も惜しまない。積極的にゴールを狙うだけでなく、FWなのにかなり後ろまで下がって積極的に守備してチームにも貢献する」と言った。
すかさず、「日本人選手では?」と聞き返すと、口から出てきたのは「同じチームメイトのDF森重(真人)選手や横浜F・マリノスの中澤(佑二)選手はフィジカルが強くていい選手ですね」という言葉だった。
つまり、脅威となるFWが日本人Jリーガーにはいないと言っているようなものだ。
キム・ボギョンとチョン・ウヨンにも「Jリーグでうまいと思う選手」について聞いたので、その答えを最後に残しておきたい。
「ベルギーでプレーする森岡亮太は才能がある」
「川崎フロンターレのMF中村憲剛選手は本当に技術が高い。あとは同じ川崎のMF大島僚太選手もうまいと思いました。自分もMFなので、同じポジションの選手に目がいきます。やはり、Jリーグはしっかりと攻撃を組み立てられる選手が多いですよ」(キム・ボギョン)
「MFレオ・シルバ(鹿島アントラーズ)がスゴくうまくて、やりにくい相手だなと思いました。日本人選手だと、MF遠藤(保仁)選手(ガンバ大阪)ですね。長らく日本代表でも活躍していましたし、私のデビュー当時から、中盤で巧みなパスでゲームを組み立てるのがうまいなと感じていました。あ、当時、神戸で一緒にプレーしたMF森岡亮太(アンデルレヒト)も技術があって、才能ある選手ですよ。今後も伸びる選手だと思います。今、ベルギーで頑張っていることも当然知っています」(チョン・ウヨン)
さて、今の日本代表に必要だと思う選手はこの中にいるだろうか。川崎の中村は日本代表に入ればどうなっていただろう。エントリーメンバーの川崎の大島はロシアに行くべき選手だと思う。日本代表から外れて残念なのは、不動の韓国代表MFチョン・ウヨンもその才能を認めていたベルギーでプレーする森岡だ。
日本代表のメンバー選考においては、外部から様々な声があるが、韓国代表Jリーガーのこうした声が”西野ジャパン”の課題解決のヒントになるだろうか。
同じアジアを代表する選手として、チャン・ヒョンスは「韓国と日本の両国ともにW杯で勝利して、アジアのサッカーが世界に通用するところを見せたい」と日本の活躍を願っている。