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ついに緊急事態宣言が発令された 安倍首相の一番長い日

安積明子政治ジャーナリスト
官邸の大ホールで会見する安倍首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

緊急事態宣言発令の背景

 この日は安倍政権にとって、もっとも長い1日になったに違いない。安倍晋三首相は4月7日午後、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、「緊急事態宣言」を発令した。対象は東京都の他、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、そして福岡県の7都府県。効力は4月8日午前0時から5月6日午後12時までの1か月に及ぶ。

 3月13日に成立した改正新型衣フルエンザ特措法(第32条)によれば、新型コロナウイルスが全国的かつ急速に蔓延して国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼすか、そのおそれが生じた場合、政府対策本部長たる総理大臣は緊急事態宣言を行い、その旨を国会に報告することになっている。問題は何をもってその時期と判断するかという点だ。それまで緊急事態宣言に慎重だった安倍首相が決断したとされるのは4月5日。東京都の新規感染者数が4日が117名で5日が143名と、2日続けて3桁となった日だった。都内の感染者数は累計で1000人を超え、若年層の感染例や感染経路不明者の増加が目立つようになったことも、危機感の原因となったはずだ。

自民党内も紛糾した

「遅きに失する」

 野党ばかりでなく、自民党内からも批判の声が相次いだ。それは緊急事態宣言についてとは限らない。4月7日に閣議決定された景気対策について、自民党はその前日に自民党本部で政調全体会議を開いたが、現金給付問題などで議論が紛糾し、1時間の予定が3時間以上に及んでいる。

 3月30日の政調、経済成長戦略本部・新型コロナウイルス関連肺炎対策本部でも議論が紛糾し、午後4時で終わるはずが大幅に伸びている。

「意見を集約できず、ついには参加者のひとりひとりが意見を述べることになった。しかしガス抜きではなく、不満を噴出させるだけになるだろう。最終的には岸田政調会長に一任ということになったが、なんのことはない、ポスト安倍を狙う岸田さんの顔をたてる会合のようなものだった」

 参加した議員のひとりがこう述べている。とどのつまりは権力争いということになる。

国土強靭化ではなく、生活強靭化を

 また安倍首相が「世界的にも最大級の経済対策」と誇る108兆円の景気対策も、「真水」は39兆円に過ぎない上、観光や運輸、エンターテインメントなど感染症が収束した後の施策や公共事業の前倒し分など、喫緊ではない施策が押し込まれている。

「いまは倒産が相次ぎ、消費を増やせない状態だ。にもかかわらず、消費を増やす通常の景気対策を行おうとするのは、まったく順番が違う」

 7日の会見で立憲民主党の枝野幸男代表はこのように批判する。そればかりではない。

妊婦は置き去りなのか

「安倍首相も小池知事も冷たい。これまで『妊婦』について一言も言及しなかった」

 そのように悔しがるのは国民民主党の矢田わか子参議院議員だ。矢田議員は4月7日に厚生労働省に赴き、働く妊婦の要望について自見英子大臣政務官に陳情した。

「新型コロナウイルスの感染の危険が高いのは、高齢者や基礎疾患を持つ人ばかりではない。免疫力が低下している中で、職業を持つ妊婦が危険を冒しながら出勤している。政府はそうした妊婦の安全を早急に確保し、働く環境を整えなければならない。そうでなければ、安心して子供を産むことはできない。それで少子化問題が解決できますか」

  実際に妊婦は危険に晒されているという報道がある。

「武漢ではウイルスに感染して死産した女性が、多臓器障害でECMOを装着した。また胎児が低酸素症で機能不全を起こした例もあり、母体がウイルスに感染すると、母子とも極めて危険であることが明らかだ」(同議員)

 8割以上の妊婦が仕事を持つ日本にとって、これは対岸の火事ではない。

日本がリーダーシップをとって、ウイルスの収束を

 安倍首相は午後7時から官邸で記者会見に応じた後、NHKとテレビ東京に出演し、感染防止のための外出自粛を求めるとともに、ダイナミックな景気対策を打つことで経済的安心を訴えた。

「世界で収束させるために、日本としてリーダーシップをとっていきたいと思っている」

 NHKのニュースウォッチ9に出演した安倍首相は、こう述べた後に唇をぐっとかみしめている。1か月後に果たして、安倍首相の思いは実現するのか。

 

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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