首都圏では中古マンション価格が1年で4割上昇した場所も。理由は高速道路の近さ?
この1年、全国で最も中古マンション価格が上がったと推測されるのは神奈川県の相模原市中央区で、上昇率はじつに41パーセント。1.4倍に値上がりしていた。
以下、全国で中古マンション価格が大きく上がった市区町村は、神戸市垂水区、神奈川県茅ヶ崎市、埼玉県川越市、東京都八王子市と続く。共通するのは、中心部から離れた郊外部。そこから、テレワークの広がりで、郊外の住宅地が人気上昇した結果、との見方も生じそうだ。
が、郊外で環境のよい住宅地で中古マンション人気が上がっているなら、湘南エリアの藤沢市や平塚市は茅ヶ崎市とともに中古マンション価格の上昇率が高くなってよいはず。ところが、藤沢市は上昇率14.08パーセントで全国36位、平塚市は同9.39パーセントで77位と差が付いている。
藤沢市と平塚市を抑えて、茅ヶ崎市が全国3位の価格上昇率になっている理由は何か。
そもそも、相模原市中央区が全国1位の価格上昇率になっているのはどうして?
都心への通勤利便性や買物の便利さ、そして将来の値上がり期待度といった従来の尺度とは異なる、新しい評価軸が出現したためか。
そんな考えから、中古マンション価格上昇率10位までの地域から、共通要素を探し出した。
今回利用したデータは、「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド社が9月22日に発表した「2022年8月 全国市区町村 中古マンション価格/騰落率ランキング100」である。
中古マンション価格が上がった10箇所に共通するのは……
「2022年8月 全国市区町村 中古マンション価格/騰落率ランキング100」は、マンション情報サイト「マンションレビュー」の保有データを元に、昨年8月と今年8月の全国中古マンション価格を比較。エリアごとの中古マンション価格(70平米換算)と1年間の騰落率をまとめている。
そのデータで、1年前と比べて中古マンション価格が大きく上がったと推測される市区町村・ベスト10は以下のとおりだ。
1位 神奈川県相模原市中央区
2位 兵庫県神戸市垂水区
3位 神奈川県茅ヶ崎市
4位 埼玉県川越市
5位 東京都八王子市
6位 東京都府中市
7位 千葉県松戸市
8位 岐阜県岐阜市
9位 千葉県八千代市
10位 東京都青梅市
以上の場所に共通するのは、前述したとおり「郊外地域」であること。それ以外で共通する要素はないか。考えを巡らせると、1つの要素が浮かび上がってきた。
それは、「高速道路・バイパスの出入り口が近い」。つまり、高速道路を利用しやすい場所であることだ。
相模原市中央区では、巨大物流施設が続々オープン
上昇率ベスト10の場所それぞれの上昇率と2022年8月の中古マンション価格・2021年8月の中古マンション価格、そして、利用しやすい高速道路・バイパス名をまとめてみたのが、以下の表だ。
10地点は、すべて高速道路・バイパスの出入り口がエリア内にあったり、数キロメートルの場所に位置している。そのため、近年、物流施設が増加しているのも、10箇所に共通する特徴だ。
物流施設づくりに積極的な不動産会社によると、上位10位のうち首都圏に位置する8つの市と区はほとんどが物流施設を開発したい場所だという。
実際、相模原市中央区では昨年9月、延べ床面積約33万平米の先進的物流施設「GLP ALFALINK 相模原 1」が竣工。施設はさらに拡大する計画だ。さらに、今年6月、三菱地所と日本生命保険相互会社は、相模原市中央区で大規模マルチテナント型物流施設「ロジクロス相模原」を着工している。
このように増加する物流施設は倉庫機能だけでなく、レストランや買物施設を備え、託児所やシャワースペースなどを充実させるのが現在の主流。便利な買物スポットとして地域住人を積極的に呼び込むところもあり、そうなると物流施設で働く人が飛躍的に増える。結果として、物流施設周辺の住宅需要が高まる。
昭和時代、郊外に大きな工場ができると、そのまわりに従業員の居住区ができて“城下町”などと呼ばれた。同じ現象が巨大物流施設周辺でも起きているわけだ。
その際、新築マンションがなければ、中古マンションの購入者が増える。だから、中古マンション価格が上昇したと考えられる。
最先端物流センターが目立つ圏央道
首都圏では、最先端の物流施設が特に目立つ場所がある。
それは、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)と東京外環自動車道の出入り口周辺。東京中心部を取り巻く環状の高速道路に出入りしやすい場所だ。
そのことを理解してから、上の表を再度みると、圏央道、東京外環自動車道の出入り口に近い市区町村が多いことに驚く。
1位の相模原市中央区、4位の埼玉県川越市、5位の東京都八王子市、10位の東京都青梅市が圏央道の出入り口を利用しやすい。さらに、3位の神奈川県茅ヶ崎市は新湘南バイパスの出入り口に近いのだが、新湘南バイパスは圏央道とつながっている。
つまり、この1年間、全国で中古マンション価格が大きく上がった場所10箇所のうち、じつに5箇所が圏央道を利用しやすい場所であり、物流施設が多い場所ということになる。
これは、注目すべき現象だ。
地方都市でも、高速道路を利用しやすい神戸市垂水区や岐阜県岐阜市で中古マンション価格が上がっている。
全国的に高速道路出入り口周辺には物流施設が増え、それに伴って住宅地としての人気が高まる現象が発生しているわけだ。
現在、物流施設開発には、大和ハウス工業を皮切りに不動産会社各社が積極的に取り組んでいる。今後、物流施設を核とした街づくりが行われるようになれば、物流施設と組み合わせたマンションが首都圏各地に続々誕生する可能性がある……そのとき、圏央道周辺は新世代マンションが多発する先進エリアになるのかもしれない。