七ヶ浜町の海苔のおいしさを世界へ発信 合同会社fluir 加藤真子さん
宮城県七ヶ浜町。県内屈指のマリンリゾートとして知られるこの町で、全国で3番目にオープンした歴史ある「菖蒲田(しょうぶた)海水浴場」目の前に建つおしゃれなカフェレストランがあります。それが「SEA SAW」。
海が見えるロケーションもさることながら、皇室献上品でもある七ヶ浜町の特産品の海苔や、新鮮な魚介を惜しみなく使ったおいしい料理の数々で、多くのお客さまに愛されています。
この「SEA SAW」で厨房に立って腕を振るうのが、マネージャーである加藤真子さん。
七ヶ浜町のお隣・多賀城市出身の加藤さんは、幼いころからお母さまとキッチンに立って料理をするのが好きだったそう。
「味噌は自家製、ご飯は土鍋で炊くような家で育ちました。実家には炊飯器がなかったんです(笑)。料理に手をかけるのが当たり前の家で育ったので、高校卒業後、福島の短期大学の食物栄養科に進学しました。本当はやっていたダンスの道に進むために東京へ行くことも考えていたですけど、進路を決めるときにおばあちゃんが入院して。その病院食にショックを受けて、『私が病院食を変えたい!』って思い、食の道に進むことにしました」
短大で栄養学を学んだ加藤さんですが、卒業式の前日に東日本大震災が起こります。
「私は給食サービスの会社に内定していて、最初の配属は福島県の浪江町の予定だったんです。でも、震災でそれがなくなり、宮城県の加美町の病院に配属されました。その後は、宮城県角田市の特別養護老人施設でマネージャーとして働き、その会社で8年勤めました。その後、アルバイトという形で『SEA SAW』に入って、お料理をするようになったんです」
そこで出会ったのが、人生の伴侶となるオーナーの久保田靖明さんでした。久保田さんは、千葉県の出身で、「世界の貧困をなくしたい」と俳優活動を行ったり、ミュージシャンとして活動したり、JICAのスタッフとしてモザンビーク共和国文化庁の仕事に就いたりした過去を持つ人。七ヶ浜町へは、震災後のボランティア活動でやってきて、この場所にビジネスを創出したのでした。
「私の人生の中で会ったことないような人だったから魅力的でした。お互いの人生の話をして、自分にはないものを持っているな、って。そのうちに正式に働かないかというお誘いをいただいて、もともと自分もカフェをやりたいっていう夢は小さいころからあったので決心しました」
2020年にふたりは結婚。夫婦として「SEA SAW」を営み、久保田さんは町の活性化にも積極的に貢献します。しかしながら、2022年に菖蒲田浜で開催した「SEVEN BEACH Light Up FES」というイベントで、夫である久保田さんは数千万円の負債を負うことになります。
夫である久保田さんは「彼女のすごいところは、僕が債権者の方々に謝っているときに『謝るんじゃない。あんたは見たかった景色をつくれたんでしょ? あんたが失敗したみたいにいったら、あんたを信じてついてきてくれた人みんなが失敗したことになる』って。すごいタフだし、ありがたいです」と。
加藤さんは「あのとき見た景色は本物だったし、いろいろな方に迷惑をおかけしたのは事実ですが、彼は私利私欲のためじゃなくて、地域のため、社会のために何か力をつくそうとしている。そういう姿はやっぱすごいと思いますし、そこに惚れて結婚したわけですから」と笑顔をのぞかせました。
今後について伺いました。
「長年続けられるように頑張っていきたいです。あとは、地域の人でも知っているけど来たことがないという人も結構聞くので、1人でも多くの人にいただいて、くつろいでほしいです」
夫唱婦随で地域のために動き続ける加藤さんと久保田さん。
ふたりが「七ヶ浜には、皇室献上品になるほど上質でおいしい海苔があることを知ってほしい」と開発した「無添加浜ののりだれ」は、仙台市産業振興事業団か主催する「第10回新東北みやげコンテスト」で最優秀賞に輝き、これをきっかけにテレビ出演や久保田さんが超人気YouTubeチャンネル「令和の虎」に出演するなどメディアでの露出が増え、売り上げも急上昇したそう。
「『のりだれ』があることで、七ヶ浜の海苔はおいしいんだよっていうことを、日本全国、世界中の人たちに伝えたいです」。
加藤さん、久保田さんの快進撃はまだまだ続きます。
「無添加浜ののりだれ」の開発秘話は、「暮らす仙台」の「銘品ものがたり」でご紹介しています。ぜひご覧ください。
カフェレストラン SEA SAW
宮城県宮城郡七ヶ浜町菖蒲田浜長砂20-8
電話番号: 022-355-9119
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取材日:2024年1月11日
撮影:堀田祐介