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接触皮膚炎(かぶれ)の症状と治療 - ニッケルアレルギーや香料アレルギーにも注意

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【接触皮膚炎(かぶれ)とは?】

接触皮膚炎(かぶれ)は、特定の物質に触れることで皮膚に炎症が起こる疾患です。原因となる物質(アレルゲン)は、化粧品、洗剤、金属、植物など多岐にわたります。日本では、ニッケルや香料によるアレルギーが比較的多く見られます。

症状は、かゆみを伴う赤い発疹や水疱が特徴的です。炎症が悪化すると、皮膚が厚くなったり、ひび割れたりすることもあります。接触皮膚炎は、原因物質への接触から数時間から数日後に症状が現れる遅延型アレルギー反応です。一方、即時型アレルギー反応である蕁麻疹は、接触後すぐに症状が出現します。

また、接触皮膚炎は、アトピー性皮膚炎などの他の皮膚疾患と合併することがあります。アトピー性皮膚炎患者は、皮膚のバリア機能が低下しているため、アレルゲンが浸透しやすく、接触皮膚炎を発症するリスクが高いとされています。

アレルギー反応のメカニズムを理解し、原因物質を特定することが、適切な治療と予防につながります。皮膚科医の専門的な知識が、患者さんの生活の質の向上に貢献できると信じています。

【原因となるアレルゲンと診断方法】

接触皮膚炎の原因となるアレルゲンは、ニッケル、香料、ゴム加硫促進剤、染料など様々です。日常生活で接触する機会の多い物質が原因となることが多いです。

例えば、ニッケルはアクセサリーや眼鏡、ボタンなどに使用されており、幅広い年齢層で感作が見られます。香料は、化粧品や柔軟剤、シャンプーなどに含まれ、特に女性に多いアレルゲンです。ゴム加硫促進剤は、医療用手袋やゴム手袋に使用され、医療従事者で感作が多く報告されています。

アレルゲンを特定するためには、パッチテストという皮膚貼付試験が有効です。パッチテストでは、疑わしい物質を含んだパッチを背中に貼り、48時間後と72時間後に皮膚の反応を確認します。赤みや腫れなどのアレルギー反応が出れば、その物質がアレルゲンであると判断できます。

また、詳細な問診により、症状が出た時期や使用した製品などを聞き取ることも重要です。アレルゲンの特定には、皮膚科医の専門的な知識と経験が役立ちます。患者さんの生活環境や職業、趣味なども考慮しながら、原因物質を探っていきます。

近年では、特定のアレルゲンに対するIgE抗体を血液検査で測定することも可能になっています。しかし、接触皮膚炎は主にT細胞が関与する遅延型アレルギー反応であるため、IgE抗体検査の有用性は限定的です。

【治療と予防のポイント】

接触皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬を用いて炎症を抑えます。ステロイド外用薬は、炎症を速やかに鎮静化する効果がありますが、長期連用により皮膚萎縮などの副作用のリスクがあります。重症例や広範囲に及ぶ場合は、内服ステロイドや免疫抑制剤が処方されることもあります。

しかし、最も大切なのは原因アレルゲンを避けることです。アレルゲンが特定できれば、それを含む製品を使用しないようにします。例えば、ニッケルアレルギーであれば、ニッケルを含まないアクセサリーを選ぶといった対策が有効です。代替品を見つけることが難しい場合は、ニッケルとの接触部分にコーティングを施したり、クリームを塗ったりすることで症状を軽減できる可能性があります。

また、皮膚のバリア機能を維持することも重要です。バリア機能が低下していると、アレルゲンが皮膚に浸透しやすくなります。保湿剤の使用や、刺激の少ないスキンケア製品の選択が予防につながります。入浴後は、皮膚の水分が蒸発しやすいので、速やかに保湿剤を塗ることが大切です。

職業的な接触による接触皮膚炎を予防するためには、作業環境の改善や保護具の着用も重要です。ゴム手袋を着用する際は、手袋の内側に綿手袋を着用したり、パウダーフリーの手袋を選んだりすることで、アレルギー反応を軽減できます。

海外では、ニッケルやクロムなどの感作性物質の使用を法規制する動きが進んでいます。日本でも、アレルギー疾患対策基本法が制定され、アレルギー疾患の予防および治療に関する施策が推進されています。社会全体で、アレルギー疾患に対する理解を深めていくことが大切だと考えます。

接触皮膚炎は、生活に大きな影響を及ぼす皮膚疾患ですが、原因を特定し適切に対処することで、症状をコントロールできます。皮膚に異変を感じたら、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。

参考文献:

- Usatine RP, Riojas M. Diagnosis and management of contact dermatitis. Am Fam Physician. 2010 Aug 1;82(3):249-55. PMID: 20672788.

- Alinaghi F, Bennike NH, Egeberg A, Thyssen JP, Johansen JD. Prevalence of contact allergy in the general population: A systematic review and meta-analysis. Contact Dermatitis. 2019 Feb;80(2):77-85. doi: 10.1111/cod.13119. PMID: 30370565.

- Cureus. 2024 May 1;16(5):e59486. doi: 10.7759/cureus.59486. eCollection 2024 May.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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